机の下
深夜二時。何もかもが沈黙しきった部屋に、キーボードを叩く音だけが響く。
ふと、足元に違和感を感じる。
(またか……)
俺は机の下を覗いた。
そこには、ただ暗がりがあった。パジャマを着て、長い靴下を履き、スリッパを履いた足が見える。その下には苔のようにも見える古い緑のカーペット――これは私が小学生から使っているもの――が敷いてあり、その奥にたくさんの文庫本が積んであるのも見える。
部屋の電気は消えていて、机の上の電気スタンドが煌々《こうこう》と光り、その周りだけ明るい。あと光を発するものはといえばノートパソコンのディスプレイの明かりと、携帯の充電中を示す緑色のLEDだけだが、そのどちらも電気スタンドの光に負けていて、眩しさは感じさせない。
机の下は、その光と対照的により濃く、黒く見えた。――もう慣れたとはいえ、不快だ。
作業に戻る。姿勢を正すと、机の下の暗がりはまた濃くなった。足元を、冷たい沼の中に浸したような錯覚を覚える。
――十二月二十日。季節は冬。正確な時間は、二時二十五分。
右足首に、何かが触れた。それは恐る恐るといった風に、一瞬。
次いで今度は、左腿に――。
今度は無視した。
俺の机の下には、何かがいる。