テーブル
思いつきで一気に書き上げた初小説なんで見苦しい文章かと思いますが、よかったら読んでやって下さい。
あのころの食卓に並ぶ料理は輝いて見えた。
同じ料理のはずなのになぜなのか・・・
違いがあるとすればその食卓を囲む人間だけ・・・
ご飯と味噌汁とアジが並ぶ朝7時の食卓。
朝食を作るのは僕の仕事である。
僕が朝食を食べていると彩奈が眠たそうにあくびをしながら起きてきた。
「おはよう、今日休みなのに早いね。」
「まあね。」
そういってテーブルにつくと、
「いただきまーす。」
といって朝食を食べ始めた。
「じゃあ、もう出るから。今日は20時に会社の前で」
僕は楽しそうに朝食を食べる彼女にそう言って家を出た。
世間は、クリスマス。
当然のように僕も彼女と行きつけのレストランでディナーを楽しむ予定だった。
皆がどこかそわそわし、浮き足立っている中、
僕は勤めて5年目になるとある出版社の窓際の机からどこか人ごとのようにその光景を眺めていた。
小走りで会社の方へと向かってくるひとりの女性、そしてそこに突っ込んでいく一台の車・・・
女性がはねられ、車はけたたましい音を立てて壁に激突した。
「うわー、大丈夫かな。」
隣にいた同僚の堺が呟いた。
「あれはヤバイでしょ。ちょっと見に行ってみる?」
少しの野次馬根性から僕はそういってみた。
「そうだな。」
さすが記者。
不謹慎だが、もしかしたら何か記事にできるかもという期待が見え隠れしていた。
事故にあったのが誰なのか。
そんなことなど僕らの頭の中には一切なかった。
ただ、いつもの取材のように事故の現場を見に行くつもりだった。
しかし、その光景を見て僕は息を飲んだ。
僕は記者として5年目だ。事故の現場など何度も取材してきた。
その中でも今回の事故はひどかった。
車は実際あったであろう大きさの半分ほどにまで潰れ、
そのフロントガラスは血にまみれて中の様子は伺い知れない。
そして、少し離れたビルの壁にはよく見知った女性が頭から血を流して倒れていた。
腕はあらぬ方向に曲がり、着ているワンピースはまるで真紅のドレスのようであった。
騒ぎ立てている周囲とは裏腹に、僕の頭の中から全ての音が消えてしまった。
何も聞こえない・・・
そこで僕の意識は途切れた。
薬品の独特な匂いが鼻をくすぐった。
急に開ける視界には、見慣れない景色が飛び込んできた。
真っ白な天井に、真っ白なカーテン。
「あっ、大丈夫か?」
そこにいたのは堺だった。
「お前突然倒れたんだぜ。覚えてるか?」
まだはっきりとしない意識の中、
倒れる直前の光景が急にフラッシュバックした。
思考が停止し、吐き気が襲って来た。
「おいっ、大丈夫かよ。」
堺が驚いてナースコールを押した。
駆け寄って来る医師の姿を見ながら僕は再び意識を手放した。
その後、意識を取り戻したのは翌日だったそうだ。
正直、この数日間の記憶はほとんどない。
毎日看病に来てくれていた親の話によると、ぼーっと外を眺めながら
何も喋らず、ただただベットで横になっていたそうだ。
僕の記憶にあるのは、ふとナースの会話が耳に入ったところからである。
「この前事故で運ばれてきた近藤彩奈さん今朝息を引き取られたそうよ。」
近藤彩奈・・・よく聴き慣れた名前が聞こえた。
その名前を聞いた途端に何かどす黒い感情と吐き気が襲ってきた・・・
しかし、その感情が何なのか思い出せない。
近藤彩奈・・・近藤彩奈・・・こんどう・・・
頭の中でその名前を反芻するたびに頭が割れるように痛くなる。
近藤彩奈とはいったい誰なのか、この苦しくなる感情がなんなのか僕にはこの時全くわからなかった。
翌日、僕がお見舞いに来ていた母に、
「近藤彩奈って知ってる?」
と聞くと、母は、
「あなた、何をいってるの・・・彼女はあなたの・・・」
そこまで言って、母は言葉をとぎらせた。
「えっ誰だよ」
そう母に問い詰めた、それがいったい誰なのか、この感情の正体はなんなのか、ただそれが知りたかったから。
「・・・あなたの奥さんじゃない・・・」
母は言葉を詰まらせながらいった。
奥さん・・・?
母が何を言っているのか理解できなかった。
ただ、何かでせき止められていたどす黒い感情が再び僕を襲った。
(オクサン?オクサン??)
頭の中をどす黒い感情が渦巻く、ただその言葉を聞いても僕は彼女が誰なのか理解できなかった。
医者にはPTSD(心的外傷後ストレス障害)だと診断された。
何かの拍子に記憶が戻ることもあると言われたが、
思い出そうとするたびに割れるように頭が痛くなるためしばらくして考えるのをやめた。
数日後、どこか懐かしい雰囲気の女性が面会に来た。
「お久しぶりです。」
僕にはそれが誰なのかわからなかった。
僕が言葉を返さずにいると、
「わかりませんか?近藤彩奈の母です。」
そう名乗った。
また、黒い感情が漏れ始める。
「ああ、ということは僕のお義母さんということですね・・・すいません」
「いえ・・・」
しばらくの沈黙が流れる。
僕は、黒い感情と戦いながら一つの質問をした。
「近藤彩名さんとはどういった方なのでしょうか?僕の奥さんなんですよね?なぜお見舞いに来てくれないのでしょうか?」
「彩名は・・・」
そこで言葉を詰まらせた。
しばらく考えている様子の後に、一枚の写真を僕に差し出した。
そこには、ひとりの女性が写っていた。
懐かしい、そして幸せな感情が溢れてきたかと思うと、
凄惨な事故の現場がフラッシュバックした。
「ああそうか・・・」
吐き気と頭痛を抑えながら僕は一言そう呟いた。
全て思い出した。
彼女がどんな人なのかも、幸せな結婚生活も、そして彼女がどうなったのかも・・・
全て理解した。
もう彼女はこの世にいないのだと・・・
それから数日後、僕は無事退院した。
もう世の中は新年を迎え、正月様相に変わっていた。
僕はどこか世の中に取り残されたように感じた・・・
そして、買い物を済ませて、いつもふたりで暮らしていた家に帰った。
家に帰るとどこか物寂しい。
いるはずの人がいないのはこんなにも寂しいものだろうか・・・
そんなことを考えているといつの間にか寝てしまっていたようだ。
朝日で目が覚めた。
横にはいるはずの人がいない・・・
僕はキッチンに行くと、いつものように朝食の準備をした。
ご飯と味噌汁とアジ・・・・
事故の朝の眠たそうな彩名の顔が蘇る。
その時僕には、目の前の朝食がくすんで見えた・・・
小説書くのってエネルギーいりますね・・・
難しい・・・
連載で書くなんて僕には無理だな。
読んでくださった皆さんありがとうございました!!!