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社員のモデルですか

日下部拓也42、日下部千香38、智勇と由縁2、実1、田口裕太54、泊茂一50

館春男44、晴海淑子 32、鳴戸美奈 24、小田朋子31、田井純子27

 ここは東亜製薬本社の食品部です。今日も栗色のロングヘアを軽やかになびかせて、主人が出勤してきました。化粧もバッチリしており、黒のスーツにハイヒールといつものメガネ美人です。やや、重役出勤ですが、その分は在宅勤務ということになっています。


「おはようございます。泊さん。」

「おはよう。おう、田口部長がさがしていたぞ。」

 主人は部長の席に向かいます。

「田口部長なんでしょう。」

 部長は机の上に数冊のパンフレットを広げていいました。

「これは毎年作成している会社案内なんだか知ってるか。」

「ええ、なかなか、凝ったの作ってますよね。」

「あの中にたまには社員のモデルも入れようということになってな。」

「社員のモデルですか。だれが、そんな馬鹿な提案をしたんですか・・・会長ですか。」

「その通りだ。」

「あのエロじじいか。また、余計なことを・・そして僕を推薦したんでしょ。」

 エロじじいと言う表現に周囲の人間はどきりとしますが、主人は平気です。

「よくわかるな。」

「やっぱりだ。ことわれないでしょうね。それで何をすればいいんですか。」

「それで、明日、ここへいってくれ。テスト撮影をする。」

「なになんです?それって・・」

「面談みたいなものだ。話をして、スタジオで何枚か写真をとってイメージを固めるとかいっていたな。モデルは何度でも撮っている必要ないんだが、素人は必要らしい。」

「時間は?」

「ここに名刺があるから、電話して決めてくれとさ。」

「スタジオ晴海ですか。わかりました。」

 席に戻ると泊さんがにこにこしていいました。

「ほお、日下部もモデルデビューかすごいな。そのうち、事務所所属してくれというじゃないか。」

「やめてください。たかだかパンフレットのモデルでしょ。僕は男です。綺麗といわれもうれしく無いですから。」

 確かに、このときは、たかだかパンフレットのモデルでした。


 翌日のことです。旧いビルの入り口にミノルを抱いて、主人が立っています。ここはスタジオ晴海です。今日は、ミノルの調子が悪く、くずってばかりしていました。やむえず、日取りを変えようと連絡したのですが、連れてきてもいいといわれたのです連れてくることになったのです。


「すみません。日下部美希ですというものですが。」

 ドアを開けると、ポニーテールの大きな目をしたTシャツ姿の若い女の人が迎えてくれました。さすがに女性です。赤ん坊に反応します。

「はあい。あらかわいい。あなたのお子さん?」

「ええ、ミノルといいます。すみせんね。連れてきちゃって・・」

「いいですよ。今日はリハですから・・失礼、自己紹介まだだったわね。私はカメラ助手の晴海淑子です。」

 そう言うと、振り返って奥に向かって声をかけました。

たちさん。東亜製薬の日下部さんがきましたよ。」

 中は小さなカウンターがあり、ガラスの入ったスチール製の間仕切りで区切られた机がありました。スチール製本棚や種類棚が壁を埋め尽くしており書類の山です。さらに奥の扉が開いて、口ひげダンディなおじさんが出てきました。


「急なことを言って悪かったね。スタジオ晴海のカメラマンのたち春男です。」

 そう言って名刺を出します。主人も当然ごとく自分の名刺を出します。

「よろしくお願いします。日下部美希です。」

「日下部美希さんか。話の通り、なかなか美人だな。じゃ、スタジオへ来てくれるかな。」

ミノルはどうしましょう。」

「そのままでいいですよ。衣装替えもありますが、そのときは淑子が預かります。ベビーベッドもありますんでそこに寝かせても結構です。」

「わかりました。」


 スタジオはすぐ上の階でした。確かにベビーベッドもありましたが、撮影用のオブジェのようでした。スクリーンの前に立ったとたんに、フラッシュが点滅して写真が撮られます。同時にインタビューが始まりました。

「いいね。やさしそうな感じがいいよ。」

「そうですか。」

「だんなさんは、どうしているの。」

「亡くなりました。いまは、義理の妹夫婦の家に居候しています。」

「そうなの。大変だね。その子をベッドに寝かしてくれるかな。」

(このひと、調子あわせているだけで、ロクに聞いてないなあ。)

「はい。これでいいですか。」

「ああ、そうそう。あやしてくれる。いい、お母さんだね。」

(あんまり、うれしくないけど。男だといえないしなあ・・)

「あっと、そのままで、こっち見て!」

「はい・」

「笑って、いいよ。もっと!楽しく、子供の顔をみて!」

 このようにして、撮影が続きます。


 しばらくフラッシュがまたたくと、さっきのカメラ助手の晴海淑子がやってきました。

たちさん、美奈さんが来ましたよ。」

「おお、来たか。日下部さん。そんなものでいいよ。こっちへ来てくれるかな。君の相手を務めるモデルを紹介するよ。」

「はあい。息子は・・」と主人が聞きました。

「連れてきていいよ。」

 そこには主人よりずっとに美人の女の人がいました。主人も身長がありますが、この人も背が高いです。美人さはレベルが違います。さすがにプロモデルです。うーん、おっぱいは主人が勝ったぞ。・・・・うーん、私は、負けているかな。そんな馬鹿な!


「日下部美希です。」

(うぁあ、綺麗だな。それに若いぞ。)

「鳴戸美奈です。よろしくお願いします。」

「それじゃ。二人の組み合わせで写真とってみようか。淑子さん、衣装とメイクをお願い。」

「どういうのでいきますか?」と晴海さんがききました、

「初夏のピクニックという感じで行こうか。」とたちさんが答えます。

 こんな指示で通じるのだからスゴイです。

「了解しました。お二人さん、こっちへきて」

 そう言って晴海さんは、更衣室へ案内しました。


 カメラ助手の晴海淑子は大したものです。あっと今に打ち解けさせちゃいました。衣装を替えて何枚も写真を撮ります。ここは更衣室です。下着姿で衣装を取り替えています。

「へえ、日下部さん肌が白いわ。」と鳴戸さんが驚いています。

 主人は色だけは私より白いのです。まったく、男のくせに・・・あっ、体は女か。

「君は足が細いよ。うぁあ、腰なんてすごい。体重いくら?」と主人がききました。

「○○キロ」

「うう・・信じられない。」と主人も絶句です。

「よく生きているわね。」という晴海さんです。

 モデルとはいえ、主人と比べ不健康なほどやせています。一方、主人は巨乳のデカ尻です。体重もそこそこあります。


 話題はいつの間にか年の話になっています。

「えー、42なんですか。信じられない。」という鳴戸さんです

「やだなあ。あんまり、強調しないでよ。」と主人がいいます。

 主人の髪の毛をときながら、晴海さんが嘆きます。

「結婚できてるからいいですよ。私なんか。もう、32ですよ。売れ残っちゃて、大変!」

「僕が結婚したのは、36だよ。大丈夫だよ。」と励ます主人です。

「日下部さんほど、綺麗ならば、どうにかなりますが、私はこの顔ですからね。」

「大丈夫、まだ、若いから。」

「日下部さんは、年の割に若々しいですね。とても、40越えだとは思えない。」と感心する鳴戸さんです。

「そうかな。いろいろ、老化があらわれているぞ。」

「そんなことないですよ。だって、去年亡くなった母が45でしたから。」

「亡くなった?・・そうなんだ。」

「ええ、でも、日下部さんほど若々しくなかったですよ。」

「きっと、苦労したんだね。」

(おいおい、鳴戸さんのお母さんと僕は変わらない年だなんて・・ショックだ!)

「良いじゃないですか。それだけ若々しかったら・・」

「うう、そうなんだけど・・」と嘆く主人でした。

 こうしてリハ撮影の1日が終わりました。


 ここはスタジオ晴海の会議室です。カメラマンのたち春男は渋い顔を考え込んでいます。

「うーん。なんか、おかしい。」

 そこには、主人と鳴戸さんのベアの写真、主人の写真、主人とミノル、鳴戸さんの写真がずらりと並んでいます。笑っている顔、すまし顔、みんな悪くありません。そのとき、晴海淑子が入ってきました。

「あら、たちさん。なかなか、良い写真とれてますね。」

「なんか違うんだよな。こんなじゃなかった。」

 また、写真を眺めては首をひねります。

「そうですか。よく撮れていると思いますけど・・ほんとに日下部さんは綺麗ですよね。男とは思えない。」

「え?!なんだって!お・・男なのか。」

「そうですよ。なんでも、体がそう変身したんですって。」

「そんなこと聞いてないぞ。いつ、知ったんだ!」

「着替えのときですね。男物のパンツ履いているし、股間がもろに膨らんでいますから。すぐに変だとおもって聞いたんです。」

「男なのか。すると、父親・・父性・・違うなあ。」

「何を悩んでいるですか。」

「確かに、初めて日下部さんを見たとき、こいつはいいと思ったんだ。でも、撮れてないなあ。何が撮れないんだろう。」

 そして、たちさんは腕組みして考え込みます。

 晴海俊子さんが笑っていいました。。

「家まで行ってくれば?家庭をみると、生活をみるとわかるんじゃないですか。」

「よし、もう一度、会ってくるか。社長に言っておいてくれ。」

「え?今からですか・・わかりました。」

 そう言って、たちさんは出て行ってしまいました。


一度ここで切ります。

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