再び出石です
誤字訂正
再び出石です。 どうせみるところはありません。木戸公の遺跡はもう訪ねました。しかし、主人が全然見てないというので再び訪れることにしました。時間があることですし・・
観光名所はいろいろありますが、まずは、出石歴史資料館に入ることになりました。イケイケギャル風というとんでもない格好の主人が子供達を前にして言いました。
「はぁい。これより出石歴史資料館に入ります。」
「はあい!」
「ここに入る当たってとっても大切な決まりがあります。」
そう言って主人は後ろを向きます。
「まず、手を後ろに回して、右手首を左手でつかみます。しっかり、つかんで下さい。手を離すと追い出されます。」
主人は後ろでに手首をつかんでみせました。
「なんやそれは?」と文句をいいつつ子供達はまねをします。私も驚くばかりです。
「いいですか?匂いを嗅ぐのはOKですが、舐めてはいけません。」と言って下をペロペロと動かします。
「なめたりするかいな。犬じゃあるまいし・・」と言う由縁です。
「どんな味するかな・・アイタ!」と実が兄ちゃんにたたかれています。
こうして、5人揃って後ろ手にくんだまま展示物を見ました。主人は後ろ手に手を組んだまま頭を下げてじっと見ています。鎧とか刀とかありますが、子供達も後ろ手に組んだまま見ています。
さすがにちょっと異常です。それを見た見学者のおばさんがいいました。
「あら、あの子達エライのね。」
「本当ね。展示物を触らないように、ああしているのね。」
それを聞いた由縁が言いました。
「サトル、今の話聞いたかあ。」
「そう言えば、だれもしてへんでぇ。」
「また、パパにだまされた。」と怒る由縁です。
「パパ、誰もしてへんでぇ。ウソやろ。」
「ははは、バレたか。少しは触ってもいいそうだよ。」と頭をかきながら笑いました。
それを聞いた子供達は走って先を急ぎます。
「あっ!こら!走るな。」という主人です。
「人間は手を固定していると走りにくいだろう。走らない良い手だと思ったんだけどなあ。」
「そうだったのね。しかし、バレたら仕方ないわねぇ。」
しかし、案の定です。智勇に押された実が展示物の台にドスンとぶつかりました。展示台が大きく揺れて、家屋の模型の屋根が外れました。
「あ!兄ちゃん、大変や屋根が壊れた!」
「え?・・本当だ!」
それを見ていた主人が慌てて駈け寄ります。
「どうした!わぉ、屋根が壊れているぞ。」と驚く主人です。
確かに、庄屋の家屋の模型の屋根がずり落ちていました。
「だから走るなと言ったろう。おまえらついてこい。謝りに行くぞ。」
入り口に戻り、主人は平謝りしています。子供達にも頭を下げさせます。
「こめんなさい。2階の庄屋の家屋の模型をこの子達が壊しました。」
「え!本当ですか。どんなふうに・・」
「それがですね。屋根がずれて落ちてしまいました。もとに戻しましたが・」
「ああ、それですか。ならば大丈夫です。あれは、中がみえるように屋根が外れるようになっているんですよ。」
「え?!そうなんですか・」
主人はほっとした顔をしますが、子供達には厳しい顔です。
「コラ!おまら、二度とこんなことするんじゃないぞ。今回は壊れていなかったから良かったが、ガラス品だったらとんでもないことになっているぞ!」
「はあい。」
「ごめんなさい。」
さすがにうなだれています。
蔵の中です。涼しいです。主人は隠し部屋が開いて、地下へ降りる階段が見えるのに感心しています。
「わぁ、すごいや。こうすると隠し部屋が開くんだよ。」
「2階に展示物があるわ。行こう!」
入るとありました!木戸公の手紙です。他の幕末の偉人に混じってありました!
「わぁ、すごいわ。こんな手紙がある!写真撮って!」
主人と私では感心するところが違います。当然です。しかし、思わぬ収穫でした。こんなのがあるなんて・・。生唾ものではありませんか。あなたどうして興奮しないの!
当時の出石歴史資料館は、触るのも自由、写真を撮るのも自由と緩いものでした。今は知りませんが・・
出石歴史資料館を出て、地図を眺めます。
「次はどこへいく?このチケットでいくつか入れるところがあるぞ。」
「この赤丸のところね。明治館なんてのはどう?」
「そこにしようか。それならばここを曲がって・・」
主人と私の二人は腕をくんで、地図を眺めつつ歩き始めました。
「明治館にいくぞ。おまえらちゃんと付いて来いよ!」と声だけかけていました。
傍目にはオンナ二人ですが、愛し合う夫婦です。腕を組んで寄り添って歩きます。
「ほんまに、仲いいな。」という智勇です。
「いちゃいちゃしてからに・・あかんわ。わいらを完全に無視しとるでぇ。」という由縁です。
しばらくいくと階段があり、大きな屋敷のあるところにでました。立て看板を読んで私が言いました。
「・・・ふーん。ここいくわよ。」
「え?明治館へいくんとちゃうんか。」という由縁です。
「ここは、木戸公が碁を打っていたといういわれのある屋敷らしいわ。寄らない手はないでしょ。」
「また、木戸がらみかあ。」という智勇です。
「あっ、パパはもう駆け上っとるでぇ。ほんとに犬ころや。」と実がいいました。
「しゃないなあ。つきあったろか。」という由縁です。
当然です。子供は選べません。親について行くしかないのです。
「あれ、今度は売店にはいったでぇ。」
「ほんまや。なんかみとるでぇ。」という智勇です。
「ホントにまっすぐいけへんなあ。」と由縁が愚痴ります。
「寄り道ばっかりや。」と苦笑いする智勇です。
そのとき、子供が2人になっているのに気がつきました。
「あれ、実はどうしたんやろ?」
「あっ、あそこや。」と智勇が指さします。
みれば実は玄関先の花をみています。親に似て花が好きです。
「何しとるんや。遅れたら迷子になるで。」という智勇です。
「この花はうちの庭にあるのと一緒やろ。」という実です。
「ほんまやな。」
「あんたら、そんなのみていると・・ん?売店におれへんでぇ。」と由縁が声をかけました。
「中に入ったんとちがうか。」という智勇です。
「いや、先に行ったんといがうか。」という由縁です。
「ありゃ、パパとママはどこや。」
「あんたはここにおりや。智勇は店を探し!私はそこの角をみてくる。」
さすが、姉ちゃんです。的確な指示です。しかし、どこもいませんでした。
「どこにもおれへんでぇ。」と智勇がいいます。
「見失うたみたいやな。」とい由縁がいいます。
「どうする。」
「パパとママは?」と不安げに言う実です。
「アホ!おまえがうろちょろするから見失うてしもうたんや。」といって実をたたく智勇です。
「アイタ!そんなこと言うたかって・・」
その頃、私達は明治館についていました。明治館はもと電信電話局のあったという西洋風のモダンな建物です。
「おっ、着いたぞ。」
「へぇ、すごいなあ。モダンねえ。」
「ありゃ、ガキどもはどうした?」
「あれぇ?いないわね。さっきまで、ちゃんと着いてきていたのに・・」
「まあ、いいか。そのうち来るだろ。目的地は知っているし。」と言って笑う主人です。
「そんな。まだ幼稚園よ。私、探しに行ってくるわ。」
「心配するな。いつも、3人で協力するようにいってあるから何とかして来るよ。」
「いやでも・・」
「じゃあ。僕は中で待っているからな。おまえと行き違いななるといけないし。」
「わかった。」
「携帯は持っているか?今度はおまえが迷子になるなよ。」
「何言っているのよ。」といって私は子供達を探しにいきました。
一方、イケイケギャル風の主人はチケットを受付にみせて中に入っていきます。
「すみません。ツレはあとから来ますんで・・」
古い電話機などもありましたが、喫茶室がありました。
「おお、喫茶室じゃないか。ここで、待っているか!」
主人はテーブルにすわり優雅にコーヒーカップを手にしました。そして。パンフレットをチラチラとみています。子供達を信用しているのかなんの心配もしていません。呑気なものです。
その頃の子供達です。
「参ったなあ。」という智勇です。
「そのうち、探しに来るんとちゃうか。」と実がいいます。
「いや、パパとママのことや。明治館にいくまで気がつけへんでぇ。」という由縁です。その通りです。よく見ています。
「とりあえず、明治館へいこか。」と智勇がいいます。
「うん、そうやな。探していたら、そのうち会うかも知れへん。」と由縁がいいます。
「でも、どうやっていくんや。地図があらへんでぇ。」という実です。
「そうやなあ。迷うたら大人に聞けというとったなあ。」
「あれはどうや!」と智勇が指さしました。
みれば学生風の2人連れがリュックを背負ってあるいています。
「すみません。明治館を知りませんか。」と由縁が聞きます。
「明治館?それならすぐそこだよ。おまえら3人だけか。」
「うん。そこへ行く途中で、パパやママとはぐれたんや。」と智勇が答えます。
「なるほどなあ。俺たちもそこへいくとろなんだ。連れてってやるよ。」
「本当ですか。すみません。」と由縁がお礼をいいました。
実際、明治館はそう離れていませんでした。すぐにつきました。
「ほれ、あそこが明治館だぞ。」
「なんや、すぐやんか。」
「パパとママはもう着いているかな。」
子供達は入.り口のカウンターなんて無視して、勝手に中に入っていきます。
「あっ!いた。」
見れば喫茶室のテーブルで優雅に、コーヒーカップをもつイケイケギャル風の美女が!
「え?あの女かあ。すげえ美人。」と驚く学生さんです。
「お!由縁に、智勇に実じゃないか。」
そう言って、笑顔で床に膝をついて子供達を迎えます。
「パパ!」
「ありがとうございます。この達を連れて頂いて・・」とにっこりして微笑みます。
学生さんもこんな悩殺的な格好をした美女に言われてまんざらでもありません。しゃがんだ姿から、胸の谷間がばっちりと見えます。但し、おかしなことに気がつきました。
「え・・パパ?」
「ははは、僕がお父さん代わりに働いているんで、パパと呼ぶんですよ。」
「そうなんですか。」
そのとき、実が私がいないことに気がつきました。
「パパ、あれ、ママは?」
「おまえ達を探しに行ったぞ。会わなかったのか?」
「いや、会わんかったでぇ。」
「おかしいな。」
そのときです。主人の携帯電話がなりました。
「おう、ママか。子供達は無事ついたぞ。帰っておいで・・」
「・・・・!」
「ん?どうした。」
「・・・・・?」
「え?!そこがどこかわからない?おまえが迷子かあ。地図があるだろう!・・え、持ってない?じゃ、そこから何がみえる?」
「・・・・・・?」
「大きな時計がみえるところ?辰鼓楼だな。えーと、地図でみると・・」
「・・・・・?」
「東がわからない?えーと、お城が見えないか。出石城だ。」
「・・・・・」
「おう、山と石垣がみえるか!たぶん、そっちが北だ!」
「・・・・・・」
「そこにむかって、右手が東だ。東に通りを、2つ進んでなあ。」
電話口を押さえて、主人が言いました。
「ごめんなあ。あまえら、そこのにいちゃんと見学しとけ。」
「なんか大変なことになっているな。」
「どうやら、ママが迷子になったらしでぇ。」
「ママは方向音痴やからなあ。しゃないわ。」
私と主人の電話問答は続きます・・・
ここは、辰鼓楼です。辰鼓楼は明治四年(1871年)旧三の丸大手門脇の櫓台に建設された鼓楼です。当時は一時間ごとに太鼓で時(辰)を告げました。明治十四年に医者、池口忠恕氏が大時計を寄付してからは、時計台として親しまれ、今では三代目の時計が時を刻み続けています。そばには池があります。
ストライプの柄タイツをむき出しにしたイケイケギャル風の主人に子供達が訴えます。
「パパ腹減ったでぇ。」と由縁がいいました。
「そうだな。飯を食うか。出石といえば蕎麦だな。」と笑顔の主人です。
「うーん。」と私は財布を覗いてうなってます。
メニューを見ると値段は様々です。
「僕はこの色つきのやつがいい。」
「僕も!」
「ママ、私もこれがいい。」
「おお、綺麗だな。味もいろいろ試せそうだな。」
「え?高いわよ。それに他も見ましょうよ。」
そう言う私を無視して、子供達はずんずんと中へ入っていきます。主人も笑いながら入っていきます。やれやれ・・・知らないっと!
1階が売店になっています。
「あっ、これいいな。」
「これほしい。パパ買って!」
「小遣いでな。」
「・・・ケチ!」
見れば、実が靴のままで階段を上がろうとします。
「おい!階段上がるときは、靴を脱げよ。」
「わあ、本当だ!」
2階は窓に沿ってテーブルが並び、床は畳ですが掘りごたつのようになっています。
「すごい。これなんや!穴があるでぇ。」
「掘りごたつになっているね。」という主人です。
「これがこたつ?!ふとんがないやんか。」という智勇です。
「こらこら、実、中にはいっちゃあだめだ。」
時間が少し早いのか2階はだれもいませんでした。5人が並んですわります。
「景色ええなあ。」
「時計がみえるでぇ。」
「どれどれ、おっ、いいねぇ。スケッチブックはどこかな。」
そう言って主人は絵を描き始めました。実は主人は写真も撮りますが、絵も趣味です。
写真付きのメニューを眺めています。子供には、やっぱり、色つきのがいいよううです。普通の蕎麦、抹茶、梅、白がありました。ちょいと、値段が高めでですが、5皿といろんな蕎麦が楽しめるのもいいです。
「私この色つきのがいい。」
「僕も!色つき。」
「僕も!これ。」
「僕も!これがいい。」と笑顔でねだる主人です。
主人の笑顔もかわいいけど現実は厳しいです。私はにっこりと笑って財布の中をみせます。主人の笑顔が消えます。
「うう・・僕はおにぎりでいいよ。」とうなだれる主人てす。
「パパはおにぎりなの。僕のやつあげる。」と言う智勇です。
「ありがとうな。」
「パパ、ぼくはおにぎりでいいよ。」と言う実です。
「私も、おにぎりでいい。」と言う由縁でした。
みんな優しいです。しかし、主人がこれではまずいと思い言いました。
「いいよ。みんなはすきなのを食べなさい。ママ、僕は普通のやつにしてくれるか。」
「えー、大丈夫なの。」
「ちょいと時間が掛かるが、下道を走り高速代を少しケチればなんとかなるだろう。」
当時、我が家には、ETCなんてありません。ニコニコ現金払いです。
「実は、パパに味見をさせてくれるよな。」
「うん!」と頭をなでられて喜ぶ実です。
こうして、子供達は色そばを食べれることになりました。出石蕎麦はざるではなく5枚ほどの皿にそせられています。ネギの薬味の他に、卵やとろろもついています。
「ねぇ、出石蕎麦は、どうして皿にのっているの!」
「ねぇ、パパどうして?」
おっ、出た!こども『どうして』です。どうするかと思って、主人の顔を見ると困った顔をしています。我が家では一番の博識の主人にみんなの注目が集まります。
主人が冷や汗をかいていると、仲居さんが助け船を出してくれました。
「出石蕎麦は国替えで信州上田の仙石氏が蕎麦職人を連れてきたのがはじまりと言われいます。異国の地に来た殿様は、慣れ親しんだ信州蕎麦を食べたかったでしょうね。」
「へえー。」
「皿に乗せるようになったのは、江戸時代にこの地の名産の出石焼きの皿に乗せて出すのが流行し、それが出石皿蕎麦として定着したものと言われています。」
「そういうことだ。みんなわかったか?」と自慢げにいう主人です。
「だれが最初に皿の乗せることを始めたの?」と私がききました。
「それに関しては、定説がございません。最初に始めたという老舗が2~3軒ございまして・・」
「元祖が複数というのはよくある話ですね。」と主人が笑います。
「まあ、そうですね・・」
食事が終わりました。本日は飛び石連休の中日で、休日ではありません。客は少ないので、子供達は好き放題です。迷惑かけなければいいかと主人もほったらかしで、絵を描いています。
そのときです。さっきまで元気だった実が急に元気がなくなり・・ぱたりと倒れました。
「え?!どうした。実!」
主人の隣で絵を見ていた由縁も変です。
「パパ・・・眠たい。」
「え?さては、蕎麦に眠り薬を一服もられたか?!」
「こら、パパ!食べ物屋で変なこと言わないで!」
「はは・・実、起きろ!しっかりしろ、寝るんじゃない!」
「パパ、無理よ。」
「だって、どうするんだ?2人で3人は抱けないぞ。」
「あら、そうね。おんぶひもないし・・」
「仕方が無いなあ。ちょっと、見ていてくれるか?車に何かないか取りにいってくる。」 結局、仲居さんが実を抱き、由縁を主人、智勇を私が抱いて、車まで運ぶことになりました。
高速道路です。子供達3人はグースカと寝ています。
「この旅行は良かったなあ。お風呂もみんなで入れたし!」
「そうよねぇ。初体験だったものね。」
「千香も木戸孝允の遺構をいろいろ回れたしな。」
「うん・・・」
「玄武洞もすごかったよな。」
「・・・・」
「なあ、千香・・あれ?なんだ寝たのか。」
夕暮れの空の中、一路車は大阪に向かいます。トラックの影が長くなりました。どこまでも続く白い線の道を車はどこまでも走ります。5人の楽しかった夢を乗せて・・、おっと1人は運転中でした。
色つきぞはの店がどこだったのかインターネットで探したですがわかりませんでした。いまはないのかも知れません。やっと、城之崎ツアーが終わりました。 主人のまんががいよいよなくなりました。いちから考えないといけないので、更新がおそくなります。




