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④愛玩の舞姫  作者: 邑 紫貴
戦禍

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消える国

消える国



近づく小さな国……黒煙の上る場所。

消えない事を願った命の灯は、無事だろうか。町の現状を空から見おろしたロストは胸を痛めた。

小さな存在。小さな力と知識……自分の予測した未来は、変わることなく……。


自分の身が城に近づく。

戴冠式のあった場所に、火竜は彼を、そっと下ろした。

『主よ、ここでお別れです。』

ロストの意思も背に、火竜は深い傷に灯を燃やす。尽きるまで。

この消える町の屈辱を残すことなく、黒煙を覆すような炎。赤く染まる国……敵も味方もなく、跡形も残すことなく……消える。


ロストは、その色に何を思ったのか……ワタシは、知らない。

ただ……“彼”の最期に、心を痛めたのを知っている。



ロストは、王の間に入る。

そこに見たのは……

「カイディール!」

“彼”と敵国の戦士クラインが、剣を交わしているところだった。

深い傷を負ったカイディールが、ロストを見て微笑んだ。

「クライン……彼が、君を滅ぼすだろう。直接、手を下すこともなく。」

呟くカイディールの声は、ロストに届かない。

視線を逸らしたまま、戦闘態勢を解除したカイディールに、クラインは剣を下ろす。

「お前たちの最期だ。せいぜい、友情の時間を過ごせばいい。ここも時期に……」

余裕のクライン。

ロストは、その近くに駆けよる。カイディールの身体を支えながら、ロストはクラインを睨んだ。

「……お前は……」

ロストの視線に、余裕だったクラインの表情が一変した。闘志を露わに、下ろされた剣を構える。

その瞬間と同時だった。城がありえないほどの揺れ。壁と床が柔らかく曲がるような光景。

立っていられない3人が床に崩れる。

「クライン様!化け物が……このままでは、この国と共に滅びてしまいます!早く避難を……」

兵士数人に、急かされながら……闘志をそのままに、何度か攻撃をしようと繰り返す。

激しい振動と、炎の熱さ。

クラインは言い放つ。

「ロスト!お前を殺すのは、俺だ!」

天井が崩れ、クラインとロストの視界を遮った。

ロストには理解できなかった。クラインの殺意の理由。ここで尽きることも、いとわないのに。


「ロスト。君の舞姫は、一番……安全な所にいるよ。君は行くべきだ。」

深い傷から、流れる大量の血。

その色に、ロストの眼は、復讐を見ていた。そんな視線に、カイディールは苦笑する。

「許して欲しいとは思わない。謝りもしないぞ……俺は、お前が憎いんだ。それでも願いがある……―――舞姫を……護ってくれ。」


ロストは、自分の手の中で消えた灯に涙を零す。


何を思ったのか……ワタシは知らない。

ロストは、不思議だったでしょうね……一番安全な所にいる舞姫、行くべきだと言われた。

そして……舞姫を護るように…………そうね、きっと理解できないわ。カイディールの想いなんか……

あなたを支えるのは…………



「ロスト!こっちだ、来い!」

涙で視界が霞み、悲しみと何かで思考は混ざるロスト。手を引く存在は、逃げることを願ったセイラッド。

それを叶えるように、逃げてくれた?どうして、ここに?

疑問の中、熱も振動も感じることなく。走るのは、城の隠し通路。

セイラッドの存在の意味を、ロストは知識で探す。


階段を下り、肌寒いような長い通路は、上から水が滴る。地下を通っているのだと理解した。

疲れも息苦しさも、曖昧になるほど。生きることに必死ではないのに。

求めるのは、知識なのか……奥深くに根ざした復讐なのか。

灯は輝きを保ったまま、ロストを導く。舞姫の元へ……それは、ロストの願わなかったものも伴う。


セイラッドは、行き止まりに設置されたハシゴを上る。

天井は出入口。開けると、光が注ぐ。

地上に出ると、そこは朝日を覆すような炎の海。国……ミャーダが消えた。

ロストは呟く。

「ブレシニーは、安全な所にいる。」

生存が分からないブラウンドの願い。『ただ、ブレシニーだけは護って欲しい』ロストの心は複雑だった。


「行くぞ!」

セイラッドは、炎の海を見つめるロストを促す。

「……セイラッド、君は何?」

視線は、消えゆく国を見つめたまま。

「俺も知らない。俺には、どうでもいい。俺にとって、望むものは一つ。ただ、それしか見ていない。お前は、その一つを手に入れる手段だ。」

セイラッドは答ながら、ロストの手を引いた。

鋭い視線を受け、ロストは一度目を閉じた。息を吐いて、目を開ける。

「セイラッド、行こう。中立国ルシャンへ!」

ロストの決意を示す行先に、セイラッドは探るような視線を向ける。

「そこに、舞姫がいるのか?」

ロストはセイラッドを静観するように答える。

「……あぁ、いるよ。愛玩の舞姫……行くべき道の…………」



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