出逢いのチカラ
茶「(今日は新しい友達ができちゃった。ふふ、帰ってお兄ちゃんに知らせなきゃ!)」
茶「ただいまー」
いつも以上に明るい声を出す茶那。
拓「おかえり、茶那。お!ご機嫌だな。何かいいことでもあったか?」
それに気付いた拓希は訳を聞く。
すると更にご機嫌な声で今日あったことを話し出した。
茶「そうなの。新しい友達ができたんだよ。その子がすごいかっこ良くてさ、夢に出てきた男の子にそっくりだったんだ!竜馬 桜希くんって言ってあだ名が『おーじ』なんだって。面白いよね。それに立ち居振舞いも紳士で本当に王子様みたいだったな……」
茶那は周りにお花が飛んで見える程幸せそうだった。
拓「そ…そうか。よかったな……」
茶「あれ、お兄ちゃんじゃないみたい。いつもなら『妹は絶対にやらん!』とか言うのに。」
意外とでも言いたげな表情を浮かべる茶那に拓希は必死で平静を装おって返事をする。
拓「あ?あぁ、やらんぞ!」
茶「本当どうしたの?らしくないね。風邪でも引いた?」
拓「いや……心配ない。考え事をしていただけだ。最近仕事が溜まっていてな。そうだ、今日は夕飯を作ってみたんだが……」
拓希は心配そうに顔を覗き込む妹に少し申し訳なさを感じた。
そうだ、と夕飯を作ったことを知らせると茶那は本当に嬉しそうに笑い、拓希は少し安心する。
茶「本当に?やった!ありがとう、お兄ちゃん。」
拓「いや、いつも作って貰っているからな。」
拓希は茶那の頭を撫でてリビングに戻った。
茶「でねでね……」
食事を摂りながら学校での出来事を楽しそうに話す茶那の話を聞いている拓希はまるで娘を見る慈愛に満ちた表情だった。
茶「ごちそうさまでした。あっ片付けやっとくからお兄ちゃんは部屋で休みなよ。疲れてるんでしょ?」
拓「あぁ。ありがとうな。」
茶「いいんだよ。」
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拓希side
一体あの人達は何を考えて居るんだ。
あの子の通う学校に通わせるなんて!
友達が増えたと喜んでいるあの子を見ると転校しろだなど言えぬ。だがあのまま2人を一緒にしていればいずれあの子は動くだろう。
そうなれば茶那は思い出してしまうやもしれぬ。
それは阻止せねばっ!
ピッ
『はい。』
拓「どういうつもりですか、あの子達を同じ学校に通わせるなんて俺は反対ですよ!?」
『まぁまぁ。落ち着きなさいな。私にも考えがあるの。』
拓「貴女のお考えが良いことを生んだ例しがおありですか!?答えは否だ!」
『そう興奮するな。大丈夫だよ。あの子達ももう高校生だ。きっと自分でなんとかするさ。』
拓「まだ高校生ですよ。貴方は事の重大さをおわかりなんですか?」
『その高校生があの子を育てると私達に言ったんだ。十分な年だと私は思うよ。』
拓「ですが…」
『もう決めたことだ。』
拓「わかりました。」
ピッ
あの人に任せて大丈夫だろうか、いや、あの人が付いていればきっと大丈夫なんだろう。
そうか…俺が茶那の年の頃にあの子を育て始めたんだったな。
俺も年を食ったものだな。
あの頃はもう高校生だとあの人達に啖呵を切ってあの子を引き取ったのだ。
その俺がまだ高校生だなどと言うとは……
あの子達の絆に賭けてみるのもいいかもしれんな。




