幕間 担当者との打ち合わせ③
「これ、先生にお土産です」
「お土産?ああ、木村さんの様子を見に茨城に帰ってたんだったね」
いつもの喫茶店で向かい合っていると古手川さんがお菓子が入っていると思われる箱を取り出した。
「そうなんです。その帰りに新宿駅に寄ったら面白いお菓子を売っていたので買っちゃいました」
「面白いお菓子?中身が珍しいって事かい?」
「開けてみたら分かりますよ」
包装紙を剥がすと菓子の名前が印刷されたパッケージが見える。
『非時香菓』
「ん?これは初めて見る字だな。何て読むんだ?」
「これはですね〜、"ときじくのかぐのこのみ"と読むそうですよ。何でも常世の国に成る柑橘系の果実だとか」
「常世の国、か。最近よく目にする言葉だな」
北海道の女性から届いたメールの内容を古手川さんに聞かせる。
「京都の事件と繋がった訳だけど君はどう思う?」
「うーん。話が飛躍過ぎている感じはありますよねぇ。まだ連絡はしていないんですか?」
「他にも何か知っていそうな気はするから直接話を聞いてみたいとは思うんだけどね。いかんせん北海道は遠過ぎるよ」
「それならこっちに来れないか私が聞いてみましょうか?私も気になりますし」
「じゃあ頼んで良いかな?明日から岐阜に取材に行くから来週辺りで交渉してくれると助かるよ」
「任せておいてください!」
「ありがとう。それで、木村さんの方はどうだったの?」
「その事なんですけどね。不在通知書が毎日届くから電話してしまったそうなんです」
「しない方が良かったと思うんだけどなぁ。それで何が届いたの?」
「それがですね、何かの果物だったそうです。見た目は赤くて良い匂いのする…」
「和歌山や山形の話と一緒だね。それで?まさか食べたんじゃないよね?」
「それがですね、一口齧ったそうなんですがあまりの不味さに吐いたらしいんです」
「ん?同じ実を食べた2人はそのような事書いてなかったけどなぁ」
「そうなんですよね。何か願い事があった訳でもないのに実が届いたのも不思議ですし」
「そうなんだよなぁ。なんで木村さんのところに現れたんだ?」
「こういうのはどうですか?今までは願いを持った人が探しに来るのを待っているしかなかったけれど、自分から動けるようになった、というのは」
「一応の筋は通っているね。だとすると、その理由は何だと思う?」
「北海道の方からの投稿にあった、封印が解けかけているというのが関係しているんじゃないでしょうか?」
「面白い。それが本当だったら繋がってくるね」
「でも全部ではないんですよね。カラスの話とか…」
「確かにね。別々の何かが絡まり合っている気はするよ。でも、これから入ってくる情報もそれらと関係してくる気がするんだよね」
「偶然ではないと?」
「そう。例えば君が買ってきてくれたこのお土産。常世の国の果実の名前だと言ったね。北海道の人からの投稿でも常世の国の名前が出てきたし、必然なのかもしれないね」
「でも、それは変なところがありますよね」
「うん。君の話ではその果実は柑橘系とのことだけど、投稿を読むと苺に近い感じがするんだよね」
「ですよね。匂いも柑橘系を連想するようなものではないですし」
「この事も覚えておいた方がいいかもしれないね。さて、では今日はこの辺で一度お開きという事で。明日の為に荷造りしなきゃいけないからね」
「分かりました。では私は投稿してくれた北海道の方にアポ取ってみます」
「うん、よろしく頼むよ」




