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群馬県 特殊清掃業者から提供

投稿を待っているだけでは47都道府県の怪談を書くのは到底不可能であるので、自分の脚で稼ぐしかない。

今回は人の死に近い職業に就いている人であれば何かしら奇妙な体験をしているだろうと古手川さんと話し合い、特殊清掃業に目をつけた訳である。

群馬県にしたのはくじ引きで決まっただけなので他意は無いが今にしてみれば当たりを引けたと思っている。

モキュメンタリーホラーの執筆の為、奇妙な体験をした事がないかと県内の業者に片っ端から電話をするとそう言う体験をした人がいると言われ、その日のうちに群馬入りをし、夜に落ち合う事になった。

仕事終わりなので居酒屋代を奢る事を条件に出されたので中年男が来ると思っていたが、待ち合わせ場所に来たのは20代女性で、容姿は芸能人と比べても遜色無いほどだった。

「初めまして。連絡した、」

「こんばんは。東京から来るの大変じゃなかったですか?」

名乗ろうとした矢先にタイミングが重なってしまった。

「あっ!ごめんなさい!私、昔からせっかちで会話を自分から始めようとしちゃうんです」

「ああ、大丈夫です。自分は職業柄、話を聞く方が向いているので。とりあえず、ご馳走する約束でしたのでお店行きましょうか」

「あっ、そうですね!仕事も終わってお腹ペコペコなんです!」

初対面なのに人好きする性格のようだ。この容姿なら異性だって引く手数多だろうに何故特殊清掃をしているのか引っ掛かるものがあった。

「かんぱーい!」

運ばれてきたビールを彼女は飲み干していく。その飲みっぷりに俺も一気に胃に納めていく。

「あーっ、仕事終わりの一杯は最高ですねぇ」

「お疲れ様です。今日は大変だったんじゃないですか?」

9月も下旬となり残暑も過ぎたと思っていたのだが、この日は真夏の暑さが戻ってきたような一日だった。

「それはもう!保護具を沢山着けながらの作業だったから汗だくでしたよ」

「お待たせしました。焼き鳥5種盛り2人前です」

「ああ、ありがとう」

店員が持ってきた焼き鳥を摘みながら何杯目かのビールを流し込む。

「そろそろ、本題をお聞きしても良いでしょうか?」

「ああ、そうでしたね〜。録音はしてもらって構いませんよ」

「助かります」

「あれはそう、2年前の夏の日でしたね。今日みたいに凄く暑い日でした。依頼をしてきたのは駅前にある高級マンションのコンシェルジュからでした。普通、こういう依頼って高齢の単身者が亡くなられた場合が多いんですよ。でもこの件はですね、まだ若い母親と赤ちゃんなんですよ。ご多分に漏れず、異臭がするからと隣人が警察を呼んでコンシェルジュが鍵を開けると腐敗した臭いが一気に広がってきたらしいです。部屋を調べると赤ちゃんは冷凍庫の中に押し込められていて、母親は逆さ吊りにされていたそうです。捜査が終わったところで私達に依頼が来たので、仕事をしに行きました。お母さんが亡くなっていた場所はリビングでしたが、わざわざ滑車を用意して天井に穴を開けて取り付けたようです。フローリングには脂漏が垂れて染みを作り、その上を蛆虫が大量に蠢いていました。それ自体は他の現場でもよくある事なんですけどね。遺族から不用品の廃棄も依頼されたので、清掃を終えてから2日掛かりで家具やら家電を撤去するんですけど、貴重品や保険証書が出てきた場合に備えて依頼主に立ち会いをお願いして来てもらっていたんです。キッチンやリビングの片付けを終えてベビーベッドの置かれた寝室に入ると床から壁、天井にいたるまでビッシリと写真が貼られていたんです。それも、眼球をアップで撮ったものが。現場はそれなりに経験積んできたつもりでしたが、こんな異様なのは初めてでした。

糊付けされた写真に見られているような気がして、全部剥がし終えた時には気が滅入ってしまいました。

それでも何とかやり終えて、後は家具を片付けるだけになったので幾分かは気が楽になりました。

机の引き出しに入っていた物をご遺族に確認してもらうと大学ノートが1冊出てきました。

ご遺族がそれに目を通していると、それを机の上に放り投げてトイレに駆け込んで行きました。

どうやら嘔吐してしまったようで「見ない方が良い。処分してくれ」と言われ、本来なら遺品に手をつける事はないのですが、この時私は無性にそれを見たいという欲求に駆られて譲ってもらう事になりました。

体験は以上となりますが、そのノートがこれです」

彼女がテーブルの上にノートを差し出してくる。

「拝見しても宜しいですか?」

「いえ、それは差し上げます。私はもう用は済みましたので」

そう言って彼女はジョッキを空にする。

「あの、それはどういう?」

「読めば分かりますよ。さあ、お話はこのぐらいにして2軒目行きましょー!」

約束通りに支払いを済ませ、2軒目に入ったがそれ以降の記憶は曖昧で、朝方に隣に寝ている彼女を見て顛末について理解した。

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