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和歌山県 20代女性からの投稿

当時、わたしには好きな人がいました。

それは同じ学校に通う一学年上のT先輩です。

元々運動が好きだった事から進学してからも陸上部に入った事がきっかけで知るようになり、走るフォームが綺麗で見惚れる女子は多かったと思います。

後輩の面倒見も良くて的確なアドバイスをくれるのでタイムが縮んだり、自己最高記録が伸びる子も沢山いて陸上部の次期部長として期待もされていました。

年月が経ち、先輩が引退する事になった時、わたしは先輩に告白する事に決めたのですが、ライバルが多くて、部内だけでも牽制し合っていて抜け駆けは許さないという雰囲気が漂っていました。

そこで部員の中で一つの決まりが出来ました。

部員同士でタイムを競い、一番速かった人が告白する権利を得られるというものです。

公平を期すために夏の大会でのタイムで決める事となり、練習にも身が入るというものです。

もちろん、わたしは負ける気はしませんでした。

2年の中ではトップ層にいたので、注意が必要だったのは2番手、3番手の子だけです。

フォームの確認と身体のコンディションを整えて万全の状態で翌日の大会を待つだけになったわたしは、散歩がてら普段は行く事のない裏山に入っていきました。

自宅周りの茹だるような暑さが嘘のように消え去り、辺りには濃密な緑の匂いが漂っていました。

四方から聞こえる蝉の声、風に揺れる葉の音。

初めて足を踏み入れた場所はどこまでも道が続いていて、どこで引き返せばよいのか分からず、一本道をずっと進んでいました。

もはや家々は見えなくなり、人工物と言えば送電塔があるだけです。その送電塔の足元に立ち、見上げると「高いな」という感想だけが湧いてきました。

空にはいつの間にか茜が差していたので進学祝いに買ってもらった腕時計を見ると16時30分丁度だったので暗くなる前に帰ろうと思い、来た道を戻ろうとすると古びたお堂が目につきました。

ここに来た時は木々に隠れて見えなかったのだと思います。

お堂に近付くと黒ずんだ木材で作られている事が分かりました。格子戸越しに内部が見えて何かの像が祀ってあるのが見えました。

その像は人のように見えるのですが、頭や手が無数に生えていて少し気味の悪さを覚えました。

でも千手観音や両面宿儺などもあるのだし、せっかくだから明日の大会での優勝をお祈りしようと思い、二礼、二拍手、一礼をしていると頭の中に声が響いてきました。

(夔蔌勹饠个 嘛叙㫖 骷梦踈砺滕)

野太い男性のような、凛とした女性のような、あるいは嗄れた老人のような複数の声が混ざり合い、その言葉を理解したと同時にわたしは気を失いました。

身体を何かが這い回るような感覚に意識が戻り、どれだけそうなっていたのかを腕時計で確認すると16時40分でした。

明日の大会に響いたら嫌だなと思ったのですが、妙に身体が軽いのです。

そして右手の中には見た事もない赤々とした木の実があり、嗅いだこともない強く甘い匂いがしました。

親からは「自生している実は食べるな」と言われていましたが、食べなければいけないという衝動に抗えずわたしはそれを頬張りました。

そして翌日の大会でわたしは優勝を果たし、先輩に告白する権利を勝ち取り、付き合う事が出来ました。

それもこれも、あのお堂に祀られていたモノのおかげだと思い、後日、山に分け入りお礼をして掃除などもしてきました。

それ以来、何か願い事が出来る度にそのお堂にお参りをしています。

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