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まるくんの夢物語  作者: まるくん
第64章 壇ノ浦の戦い
65/70

壇ノ浦の戦いで、まるくんたちは邪鬼の軍勢やC国の侵攻に立ち向かうも、圧倒的な力に撤退を余儀なくされる。桃の子としての萌々香の宿命が揺れる中、未来に向けて新たな決断が迫られる。

 

 屋根裏部屋で寝ていると、まるくんはコツコツと窓を叩く音で目が覚めました。うす暗くて、電灯を点けて時計を見ると、まだ5時でした。またコツコツと叩く音がしまして、窓を開けました。

「旦那、お久しぶりです」

「なんだ、勘太か」

 窓辺にはカラスの勘太が止まっていました。

「何だじゃあ、ありやせんぜ。なぜ沖縄戦に参加させてくれなかったんだ。つれないぜ」

「沖縄は遠いだろ。それに勘太にはペレシュ城の警護もしてもらってるだろ」

「ほんとは忘れてたんじゃないすか?」

「そんな事はないよ」

 まるくんは、勘太の事は忘れていました。仮に覚えていたとしても、カラスの勘太が戦いに役立つとは思えませんでした。そう思っても、まるくんは勘太には言いませんでした。

「あっしはまるくんを信じているでやんすからね」

 まるくんは、部屋の電気ケトルのスイッチを入れてお湯を沸かしました。

「でも無事にお帰りになってよかった」

「私は戦いらしい事はやってない」

「萌々香や、雉原君、猿投君が活躍したらしいね」

「紅龍と紫鬼も活躍した。大牛と乙牛もね。萌々香はみんなを指揮した。私は見ていただけだ」

 まるくんは、お湯が沸くと、コーヒーを淹れ、タバコを持ってベランダに出ました。椅子に座り、タバコに火を着けて一服しました。煙が一面に広がりました。

「煙草は止められねぇんですね」

「ギャンブルも女遊びもしないんだ。酒も飲まない。タバコくらいはいいだろ」

「麻薬よりは、ましでさぁ」

「今日は愚痴を言いに来たのか?」

「おっと、忘れていやした。邪鬼どもが穴を作っていやすぜ」

「穴? 地面に穴でも掘っているのか?」

「そんな穴じゃありやせん。空間に穴を作って、邪鬼の世界と繋いでやんす。そこから邪鬼が出入りしてやんす」

「穴って邪鬼の世界への通路か?」

「そうでやんす。そこから邪鬼がどんどんやって来やんす」

「どこにあるんだ」

「あちこちでさぁ。あっちにも、こっちにも穴がある。そこら辺、穴だらけでさ」

「そんなに簡単に穴が出来るのか?」

「あいつらはどこにでも穴を作って入り込む」

「沖縄戦でとつぜん邪鬼が消えたのは、その穴に逃げ込んだのか」

「間違えありやせん。旦那、油断出来やせんぜ」

「どれくらいの邪鬼が入り込んでいるんだ?」

「いっぱいでさぁ。数えきれやせんぜ。そいつらが人間の汚い心に入り込む」

「ペレシュ城にも穴はあるのか?」

「へい、近くにありますぜ。でも前鬼様が結界を作っているので、この街には入れません」

「その穴は潰せるのか?」

「前鬼様なら潰せます」

「この街の近くの穴はぜんぶ潰してくれ」

「分かりやした。さっそく前鬼様にお伝えしやんす。旦那、次の戦いにはあっしを連れて行っておくんなさい。約束ですぜ」


 C国は、台湾海峡の対岸に陸戦隊を集め、海上では空母のほかにイージス艦がまわりを取り囲んでいました。

 公式発表では、演習という事でしたが、100パーセントそれを信じる人はいませんでした。みんなが疑いの目を持っていました。

 その矢先、週明けの夜明け前に、台湾はとつぜんのドローン攻撃を受けました。数10隻の揚陸艦や海警局の船舶から自爆ドローンが放たれ、台湾の防空システムを破壊しました。

 沖縄でも、航空自衛隊の知念分屯基地に大量の自爆ドローンが現われ、自衛隊員は応戦しましたが、圧倒的な数でぜんぶを撃ち落とせず、次々と自爆していきました。

「数が多すぎて撃ち落とせません」

 そう嘆いた自衛隊員のそばにも、ドローンが突っ込んできて爆発しました。

 与座岳分屯基地でも大量の自爆ドローンの攻撃を受け、防空システムが破壊されました。

 米軍の防空システムも自爆ドローンの攻撃を受け、あまりの多さにバルカン砲でも対応できませんでした。攻撃をすり抜けたドローンが各施設、戦闘機を無差別に攻撃しました。

 琉球独立軍が、首里城の、地下施設の入り口のコンクリートを吹き飛ばし、また司令部を構築しました。

 那覇警察署では、署長が「危険を感じた場合のみ銃の使用を許可する」と訓示をしているとき、ジャベリン砲が玄関や2階になどに撃ち込まれました。署内はハチの巣を突いたように大騒ぎとなり、机などを倒して入り口にバリケードを作りました。それもつかの間、RPGの攻撃を受け、バリケードは粉砕されました。

 独立軍は、機関銃を撃って侵入してきて、警察官はM360J”SAKURA”のレボルバー式の拳銃で応戦しましたが、火力の違いで、警察官は裏口から逃げだしました。

「撤退! 裏口から撤退!」

 上官の命令で、警察官は裏口に殺到しました。

 その裏口にジャベリン砲が炸裂し、機関砲が容赦なく浴びせ掛けました。

 独立軍は、うめき声をあげている警察官を踏みつけて侵入し、機関銃攻撃をしました。武器をもっていない警察官たちは両手をあげて降伏しました。

 瞬く間に独立軍は、那覇警察署を占拠しました。隣の豊見城警察署も同じように占拠されました。

 C国のステルス戦闘機、殲-20が米軍基地をミサイル攻撃しました。米軍基地ではドローン攻撃により、破壊され、飛び立てる戦闘機がありませんでした。

 台湾では、C国の上陸作戦が始まっていました。

 すでに台湾の西の澎湖諸島ほうこしょとうは、占拠されており、そこから台湾の主要施設にドローン攻撃が行われていました。空港からも殲-10戦闘機が、台湾本土へ攻撃を行っていました。

 C国の上陸は、台中付近で実施され、大量の兵員と戦車などが運び込まれていました。

 台湾軍は山奥へと撤退し、ゲリラ戦で対抗する姿勢を見せました。

 日本の江田島の陸上に停泊していたアクエリアスは、急遽、沖縄に飛びました。ハーディ大佐は、航空司令官として、バタフライ2の指揮にあたっていました。

 東ヨーロッパでは、R国がC国の力を得て、ウクライナ戦線を押し戻していました。さらに西のモルドバにある沿ドニエストル共和国にも戦線を進めました。沿ドニエストル共和国は、親R国で、1500人のR兵士が駐屯していました。

 かつて紛争のあったジョージアにも、再度侵攻し、首都のトリビシを占拠しました。


「まるくん、ハーディ大佐の乗ったアクエリアスが沖縄にむけて出港したよ」

「ついにアメリカが動いたか。凜、すぐに前鬼、後鬼、大牛、乙牛を呼んで、食料をステラに運んでくれ」

「わかった」

 彼らが、米などの食料品を玄関に並べていると、ステラがペレシュ城に現れました。白鬼の指示で、彼らはステラに荷物を運び入れました。

「まるくん、R国がウクライナのほかに、モルドバとジョージアを制圧したよ。ベラルーシがウクライナの首都キーウに侵攻したよ」

「世界大戦の様相になったな」

「まるくん、たいへんだ! いま入った情報では、C国が北九州に無血上陸した。北九州市長が上陸軍を歓迎してる」

「とうとう、九州本土に来たか」

「島根県の益田市にも無血上陸した」

「日本海連合を仲間にして拠点を作ったな」

 萌々香が迷彩服を着て、キッチンにやって来ました。そのあとを着いて来た紫鬼も迷彩服を着ていました。

「出陣の準備をお願いします」

 萌々香は、若干、青ざめているように見えました。

「準備は出来ている。凜、みんなを呼んでくれ」

「わかった。ひろしさんと和歌子さんが来たよ」

「通してくれ」

 芦森ひろしさんと和歌子さんが、キッチンに入って来て、

「特製の黍団子です。これで力をつけて」

 テーブルに黍団子を並べました。佐々木唯さんがお茶を沸かしてくれました。

「凜、勘太を呼べる?」

「呼べるよ。呼んでみようか?」

「呼んでくれ」

 雉原翔太、猿投紘一、前鬼と後鬼、大牛蟹と乙牛蟹もやって来ました。すこし遅れて紅龍がやって来ました。桜花とバスケ部員も屋根裏部屋から降りてきました。

「勘太が玄関に来てるよ」

「私が戸を開けてあげる」

 紫鬼が玄関に向かいました。しばらくして紫鬼の肩に止まった勘太がキッチンに入って来ました。

「旦那、御用ですか?」

 勘太は、まるくんの前のテーブルに飛んで来ました。

「まず、みんなで黍団子を食べよう。この黍団子には特別な力が注がれている。みんなを守ってくれるはずだ」

 白鬼が黍団子を小皿に分けてみんなに出し、唯さんがお茶を碗にいれてました。まるくんは、黍団子をひとつ取って、勘太にやりました。

「こりゃ美味だ。旦那、もうひとつおくんなさい」

 まるくんは、もうひとつ黍団子をつまんで勘太にあげました。

 勘太が黍団子を食べるのを見ながら、

「勘太、カラスの仲間は集まったか」

 と、まるくんは聞きました。

「へい、373匹あつまってやんす」

「黍団子を食べたら、すぐに仲間を壇ノ浦にむかわせてくれ」

「合点でさ」

 勘太は食べ終わると、飛び立ちました。

「玄関の戸を開けないと出れないのに。相変わらず気が早い」

 紫鬼がそう言いながら、勘太のあとを追いました。

 みんなは黍団子を食べ始めました。

「これから戦いが始まる。この戦いで第3次世界大戦が始まるかどうかが決まる。みんな協力してくれ」

 まるくんを見ながら、みんなはうなずきました。

 桜花が萌々香の後ろにまわり、ピンクの鉢巻きを締めてあげました。

「これはお姉ちゃんが作ったんだよ。お姉ちゃんだと思って。いつもそばにいるからね。お父さんも一緒だよ」

「ありがとう、お姉ちゃん」

 その鉢巻きには桃の刺繍がしてありました。

「桜花と唯さん、バスケ部員はペレシュ城を頼む。前鬼と後鬼も残ってくれ」

 ジャクリーンが、

「まかせて」

 と金属バットを振り上げました。

「そんな金属バットどこから持ってきたの?」

 アマンディーヌが聞きました。

「鬼が襲って来るというから、野球部で借りて来た」

 ジャクリーンは、力こぶを作ってバットを振り上げました。

「心強いわ。ジャクリーンに金属バットね」

「では、出発しましょう」

 全員がステラに乗り込みました。

 玄関で、唯さんや桜花、バスケ部員、前鬼と後鬼が見送っていました。


 司令席に座っている萌々香に、

「北九州で上陸したC国の軍隊は本州に向かうはずだ。関門海峡を防衛ラインにしょう」

 と、まるくんは提案しました。

「分かりました」

「それから翔太君と紘一君にC国と北部K国の核施設を攻撃させる」

「各施設を?」

「いちばん怖いのは核攻撃だ。ふたりに各施設の破壊を頼むんだ」

「危険すぎない?」

「シークレットモードがあるから発見はされない。攻撃はカブトムシを使うんだ」

 カブトムシとは3㎝くらいの小型ドローンでした。このドローンは航続距離が短いので、各施設の近くまでバタフライで運ぶ必要がありました。

「カブトムシで施設に入り込んで自爆させる。小型爆弾で核施設のコンピューターなどを使えなくさせるんだ」

「でも、どれが発射装置なのか分からないのでは?」

「凜が相手のコンピューターをハッキングする」

「それは可能なのですか?」

「凜ならやってくれる」

 萌々香は、凜が生きていたころ、犬だったころに遊んだ事を思い出しました。あの犬が生まれ変わって、自分を助けてくれている事に感謝しました。

 ものの数10分で関門海峡に到着しました。

「翔太君、紘一君。配置について」

「了解。準備完了」

「出発!」

 萌々香は、軍扇を振りました。

 雉原翔太君のバタフライが発射され、続いて2機めも発射されました。

「翔太君はそのままC国へ向かってください」

 次に猿投紘一君のバタフライが発射され、2機めもステラを離れました。

「紘一君は北部K国に向かってください」

 2機ずつ4機のバタフライが、C国と北部K国にむかって飛びました。AIの凜が進路を計算し、設定して、バタフライを飛ばしました。

 翔太君のバタフライは、C国の甘粛省玉門の核施設に2時間で飛び、人が出入りする隙にカブトムシを忍ばせました。10体のカブトムシは、凜の指示でコンピューター関連の重要部分に潜り込み、爆発させました。その施設の核発射システムがすべて破壊されました。

 それが終ると、翔太君はC国の移動式戦術核兵器システムを探し出し、ドローンを使って破壊しました。

 紘一君は北部K国の寧辺核施設に到着しました。

 警備は厳重で、巨大な地下施設に移動式の核発射設備が隠されていました。カブトムシといえども簡単に侵入することは出来ませんでした。紘一君はチャンスを伺っていました。

 長時間待つうちに、軍用車がやって来ました。

 高官らしき軍人が車から降り、入り口に向かいました。その高官のあとを着いていき、入り口が開くと、カブトムシが高速ですり抜け、侵入に成功しました。カブトムシは、パソコンに接近してUSBから内部に接続し、凜にシステムを送り込みました。凜は情報を盗み取り、発射重要システムにカブトムシを送り込みました。カブトムシは重要箇所に張り付くと、自爆しました。

 北部K国の核発射システムは破壊されました。

 移動式発射台には、換気システムからカブトムシを侵入させ、核兵器に取り着いて爆発させました。

 紘一君は、目的を達成すると関門海峡にむかって退散しました。


 まるくんは、式神たちを使って関門国道トンネルの排水施設の電源を停めさせました。しばらくするとトンネルは水浸しとなり、通行不可能になりました。新幹線と鉄道トンネルの電源を停めました。これによって関門海峡の3つのトンネルは使用ができなくなりました。

 関門橋では、大牛蟹が門司側で道路を大石で塞ぎました。下関側では乙牛蟹が同じように大石で塞ぎました。こうして九州と本州の連絡路は封鎖されました。付近では車が60㎞の大渋滞となりました。

 C国の兵士が船で、下関側に渡って来ようとしました。軍用船から民間船まで、総動員で船が関門海峡の速い潮流を乗り越えようとしていました。

「私に任せて」

 紅龍が飛んで行きました。

 海の上に浮かぶと、紅龍は、

「我はタクシャカ龍王の第3女、七面天女なり。海よ逆巻け! 波よ天高く波がしらを立てよ!」

 と叫ぶと、海峡は大荒れになりました。

 ビルのような海のうねりが次々とC国の船を飲み込んで行きました。

 C国の兵隊が、橋を渡ろうとして大石を乗り越えてきました。大牛蟹がその兵隊たちを捕まえては投げ飛ばしました。式神たちが兵隊の銃を奪って、C国にむかって発砲しました。

 空中にとつぜん大穴が開きました。

 おびただしい数の邪鬼、悪鬼がその大穴から湧き出てきました。

 萌々香は、数の不利を感じて、軍扇を振り、大牛蟹と乙牛蟹、式神たちを退きあげさせました。萌々香は彼らを下関の火の山で集めて陣を敷きました。

「大穴にむけてプラズマ砲を発射せよ」

「了解。プラズマ砲を発射!」

 発射設備にいたロボットが復唱して、発射しました。

 プラズマ砲が大穴に命中しました。邪鬼たちが撃ち落とされました。それでも次々と邪鬼たちが大穴から湧き出てきました。

「続けてプラズマ砲を発射!」

「了解! プラズマ砲を発射!」

 また邪鬼たちが撃ち落とされて行きました。邪鬼の勢いは止まらず、ステラに襲い掛かろうとしました。大牛蟹と乙牛蟹がその邪鬼どもに殴りかかりました。式神たちも応戦して、邪鬼と殴り合いになりました。

「ロボット軍団を出して!」

「わかった」

 凜がロボット軍団を出しました。ロボットは奮戦しましたが、10体ばかりのロボットでは焼け石に水でした。

「萌々香! ここは撤退したほうがいい」

 凜は冷静に分析しました。

「ダメ! いまここで撤退したら、全滅する。みんな踏ん張って!」

 紅龍が紅い龍に変身して、

「我はタクシャカ龍王の第3女、七面天女なり。邪鬼ども我が相手だ!」

 と叫んで邪鬼の中に飛び込みました。

 紫鬼も鬼の姿に変身して、紅龍に続きました。大牛蟹と乙牛蟹も巨大な鬼となって、邪鬼に対抗していました。

「萌々香! C国の軍隊が北からやって来る。綾羅木の浜で上陸した。数は2万人くらい。萩市のほうもC国の軍隊が上陸した」

 萌々香は、その凜の報告に目を閉じました。

 紅龍が火を吹いて邪鬼をやっつけました。紫鬼は金棒で邪鬼を打ちのめしていました。まるくんは、機関銃を手にしていました。しかし、それを撃ったことはありませんでした。

 萌々香は軍扇を振って、「退ってはならぬ!」と叫びました。

 式神たちは、あきらかに疲労が現われていました。何体かやられたのが分かりました。

 邪鬼の軍勢が間近に迫って来たとき、バタフライがプラズマ砲を浴びせました。翔太君のバタフライ2機がステラに迫っていた邪鬼を追い払いました。遅れて紘一君のバタフライ2機が邪鬼に襲い掛かりました。

 その攻撃に邪鬼は後退しましたが、態勢を立て直すと、また襲ってきました。

 大穴から黒龍が現われてきました。紅龍が相手をしましたが、歯が立ちませんでした。

 邪鬼が鉄道トンネルと新幹線のトンネルの電源スイッチを動かしました。電車に乗ってC国の軍隊が下関駅に流れ込んで来ました。

 東の空から、雲に乗ってタクシャカ龍王様が現われました。

「我はタクシャカ龍王なり。我と思わん邪鬼どもは掛かって参れ」

「我は魔王様の第一の龍、黒龍である。わしが相手をしてやる」

 タクシャカ龍王と黒龍の一騎打ちが始まりました。

「萌々香、国道トンネルでも排水設備が復活した。C国の軍用トラックと戦車がトンネルから出て来る」

 凜が報告しました。

 萌々香の軍隊では、これ以上、邪鬼とC国の軍隊を防ぐことは出来ませんでした。

 空中で別の大穴が開き、おびただしい邪鬼が現われ、ステラ目掛けて襲い掛かって来ました。

 その光景を見て、萌々香はへたり込みました。

「もうダメ!」

 まるくんは、萌々香に近づいて肩に手をやり、

「萌々香、諦めるな!」

 と励ましました。

「まるくん、撤退して。この戦力では全滅する」

 凜がへんに落ち着いた声で言いました。

 北のほうから大量の自爆ドローンが現われました。翔太君と紘一君がバタフライで応戦しまし、レーザー砲でひとつずつ墜としていきました。

 彦島からカラスの大群が現われ、邪鬼に襲い掛かりました。その1匹がステラに飛んできて、「旦那、あっしでさ。助太刀するぜ」と言いました。

「萌々香、しっかりして」

 まるくんが励ましても萌々香は首を横に振りました。

「なぜ? なぜ私が桃の子なの? なぜ私がやらないといけないの?」

「萌々香が『鬼道』の継承者だからだ。お父さんから受け継いだ『鬼道』だからだ」

「お父さん?」

 萌々香はそう言うと立ち上がりました。

 しかし東の空で、また大穴が開きました。そこから得体のしれない者が次々と現れてきました。

「我は藤代王子である。熊野古道を守護する我ら九十九王子が、義によって萌々香殿に助太刀いたす」

 彼らは、邪鬼の軍勢を押し戻しました。

 萌々香は、今が好機と捉え、

「全軍、撤退!」

 と軍扇を振りました。

 式神たちが素早く撤退しました。それを見て、大牛蟹と乙牛蟹が人間の姿に戻ってステラに乗りました。紅龍と紫鬼も人間の姿に戻ってステラに乗り込みました。ロボット軍団が最後にステラに乗り込みました。

 ステラは、未来高原都市に向かって退却しました。

 それを見た藤代王子は、九十九王子に撤退するように指示を出しました。

 白鬼は、紅龍と紫鬼が裸になっているのを見てバスタオルを巻きつけ、大牛蟹と乙牛蟹が深手を負っていたので、傷の手当てをしました。ふたりも迷彩服が破れて裸になっていたので、バスタオルを腰に巻きつかせました。

 まるくんは、大牛蟹と乙牛蟹が傷ついているのを見ると、戦いに敗れたのだと思いました。同時にこの戦力では邪鬼に勝てないのを思い知らされました。

 戦いに敗れて岡山に帰る姿は、平家が壇ノ浦の戦いに敗れて逃げていく、落ち武者の姿とダブってしまいました。


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