ヴェルラートへ 第九節
「こんなことなら、最初から三人で戦うべきだったな」
治療と魔力譲渡を受けながらそう言うと、クランスは苦笑いしてみせた。
「……まあ、結果的にはそうでしたね。とはいえ、ここまで手が込んだ策があるのは想定外でしたし」
「……まったくだ。問答無用で叩き伏せておくべきだった」
力が戻ると同時に立ち上がり、剣に魔力を注ぐ。
……先程までよりも、魔法の発現に抵抗がない。
「魔法妨害を始めとした、各種フィールドは停止済みです。ただ、魔力炉からの莫大な供給までは止められませんでした」
「……それにしたって再生が早い。龍種の治癒能力に、かなりのブーストを掛けてるのかもしれないな」
自分の放った氷の槍が、龍の首を大きく穿つのはしっかりと見ていた。あれほどのダメージすら数十秒で再生できるというのは、いくら莫大な魔力供給があるとはいえ、『通常の生物』では考えにくいことだ。
「では……それこそ、龍の身体をほとんど吹き飛ばすような威力が必要だと……?」
「強引にやるなら、そうなるが――」
懐から、『黒龍の魂』を取り出した。
透明な容れ物の内に僅かだが、液化した高濃度魔力が揺れている。
「龍の力は、同種に対して高い効果を発揮する……龍殺しの剣は大抵、龍種の角なんかを加工して造るしな」
……クランスが、こちらの手から吊り下げられたその遺物を見て、なんだか渋い顔をしたような気がした。
「もしかして……今から『それ』を満タンにしろと……?」
「……それでもいいが。あとは……いや、こっちの方が無茶振りになるかもしれないが――」
――要件を聞いて、クランスはますます渋い顔をしたものの。
「……技術的には可能だと思います」
「じゃあ、頼む。なるべく超特急でな」
それだけ言ってクランスに遺物を手渡し、魔剣片手に前へと進み出る。そんな自分の背に、
「ノルドさんも、なるべく時間を稼いで頂けると助かります!」
と、クランスも負けじと叫び返した。
「了解だ」
――これが先程までの状況下であれば、安請け合いなど到底できなかったが。今や魔法妨害の効果は消えた上に、多数の援軍を得て、魔力の回復と傷の治療も済んでいる。時間稼ぎ程度は造作もない。
「さて」
数歩歩く間に無数の氷柱を生成しながら、龍と真正面から対峙する。
「ここからはハンデなしだ」




