表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮管理者の掟  作者: 鶴燈
第二章 - 魔城の主
24/47

魔城の主 第九節

「来客は本来想定してないもんでね。不味くても文句はナシで頼むよ」


 エレナが人数分の、冷たい珈琲を淹れて戻ってきて、手ずから全員に配った。

 ――それを終えたエレナが席に戻っても、フラムは警戒を緩めず……どうやら、ノルドが珈琲を口にするかどうかを見ているらしかった。


 念のため、僕もその珈琲を調べてみるが……成分におかしなところはないし、グラスに毒が塗られているなんてこともない。用意されたミルクも液糖も、至って普通のもの。


 ――そこでノルドが、やっとフラムの視線に気づいたのか、珈琲を一口飲んでみせた。

 それを見るや否や、フラムも待っていたと言わんばかりにグラスを傾ける。……喉が渇いていたらしい。


「ひとまずは、話ができそうな連中で安心した。……強制送還の座標を上書きされた時は、さすがにアタシも焦ったが」


 ……そのエレナの言葉の意味を、ノルドとフラムは、すぐには理解できなかったようだが――ノルドはやがて、話が繋がったらしく。


「……保険を掛けてくれとは言ったが、まさかそんな方法を使ったとはな」


 と、僕に向けて笑いかけた。苦笑いのようにも見えたが……称賛と受け取ってよさそうだ。


「奥に隠し部屋があることは、戦闘中にわかっていたので。地形情報から座標を取得して、強制送還の転送先を書き換えたんです。……ギリギリでしたが」


 ……当然、僕がその気になれば――そんな回りくどいことをしなくても、いつでも誰でも、どこへでも転送は可能だ。

 しかし、そのような無法が罷り通るのは、迷宮管理者だけなので――『一介の探索者が、機転を利かせて実行した上手いやり方』として、『相手が指定した転送先の座標を上書きする』という方法を、選ばざるを得なかった。


「なるほど」

 フラムが腕組みし、いかにも納得したという顔で頷いてみせる。

「やっと私も、状況が飲み込めました」


「すみません。説明するタイミングを逃してしまったので」


 転送が終わったら、早めに説明するつもりだったのだが――エレナが現れたことで、僕はすっかりその機を逸してしまっていた。


「……まったく。こっちは四十階に到達されるだけでも、想定外だったってのに……とんだ傑物どもじゃないか」

 そう言って、エレナがまた溜息をつく。

「おかげで、苦労して作った防衛兵器(ガードメカ)もボロボロだ。外周の砲台とセンサー群は、ちょっと凍っただけだから無事としても――魔力発振器はスクラップだね。アレ高いんだぞ。相場知ってるか? アンタたち」


「……お褒めに(あずか)り光栄だが。あの兵器を相手に、加減して勝てるほどの腕じゃないんでな」


 小言に対し、ノルドがそんなふうに言い返す。

 ――エレナはまだ不満そうではあるが、少し笑って。


「戦闘になったら、どのみち壊されるだろうとは思ってたさ。ただ、丹精込めて作り上げた作品を景気よくぶっ壊されたら、それが当たり前の結果だろうと、親心から文句の一つも出るってもんでね」


 まあ、また作るか――などと言い、エレナも珈琲を呷った。


「……それで」

 話に一区切りがついたところで、フラムが切り出す。

「そろそろ教えていただけますか? 貴方の目的を」


「……そうだな。わざわざ茶まで出して、命乞いってわけでもないだろう」


 フラムとノルドに問われ――エレナが珈琲のグラスを置いた。からん、という氷の音が響く。


「こっちも、そろそろ本題に入ろうと思ってたところさ」


 エレナはそこで、僅かに思案する素振りを見せてから、話を続けた。


「……ある人物から、あんたたちの話を聞かせてもらってね。協力者たり得るか、防衛兵器との戦闘で実力を見させてもらった。結果は……多少危なっかしくはあったが、合格だ」


「……それはどうも」


 ノルドがあからさまに素っ気ない態度を取るので、エレナが言葉を付け加える。


「――誤解がないように言っておくが、別にこっちが上の立場だなんて思っちゃいないよ。確かに、一方的に実力を測りはしたが……少なくとも今からするのは、対等な立場での提案だ」


 さらに少しの間が置かれる。


 ……僕はやや心配しながら、『提案』の内容が話されるのを待っていた。

 というのも、『ある人物』が、エレナと何を、どこまで話したのか――それが気がかりだったのだ。


 ゆえに――僕は微かな胃痛を感じながら、それを聞くことになった。


「ヴェルラートの現国家元首、レウィンス――あのクソ野郎に、落とし前をつけさせるんだろ? ――協力しようじゃないか」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ