【第80話】 一点を刺す
お早うございます。
投稿です。
視線を下に向けると、サキュバ・シーシナさんが左手を、溶けた私の胸に置いていた。
小さく震える左手は、まるで不安の象徴のようである。
大丈夫かな?シーシナさん。
頑張れ!
と言ってみるが、まあ、治すのは俺の身体だけど。
失敗とかしないでね?
あっ!?とか言わないでね?
シーシナさんの左手は淡く光りだし、その場にいる皆の目を集める。
「第一使徒、第四使徒がテニさまに触れるのは嫌かい?」
「イエ、私ガテニサマノ傍ヲ離レタカラ……ソレニコノ怪我、私デハ治セナイ」
すると空中に浮いている私の胸に、ぶわっ、と手形が現れた!
!
ひいっ!なんだこれ!
胸に現れた手形は熱く、赤く発光していたが、みるみる小さくなり、赤い点になった。
それはまるで銃器の赤い点、レーザーポインターみたいで、恐怖心が湧きおこった。
泣き虫弱虫スキル発動だよ!
これから、何が起こるんだ?
(あのう、一ついいですか?)
(なんだ?魔王テニ?)
(魔族は、これで何を得るの?)
弄ぶだけではないはず。
(これとは?)
(人々を虜にしたり、破滅に導いたりして、何を得るの?)
(感情を得る)
(感情?)
(強い感情は我らに心地よく、おいしいのだ)
(感情を食べるの!?)
(魔力を動かす力は感情だぞ、それを盗み食する、奪って我らの力とする)
(感情を食べる!?どうなるの!?ダメじゃん!とんでもない悪事だよ!)
(ふふっ)
(何がおかしいの?バン?)
感情を食べる?食べられたらどうなるの!?
病気になる?感情が壊されたら、死んでしまうかも!
(あはははっ!お前はその悪事を働く魔族の、我らの頂点!魔王様なんだがな?自覚あるか?)
(うげっ!?そ、そうだよね、俺、魔王さまだった!)
(お前は見ていて面白い、次は何をやらかすか楽しみでもある。ただ、もう少し、強くなってもらわねばな?いろいろと)
(……はい、反省します、いろいろと)
(お前の魔力は強く膨大で、少しくらい叩いてもびくともせん!だが、今まさに動いてもらわないと、生命の危機だ)
(どうやって動かすの?具体的には?)
(一点を刺す)
(?)
(ここまで酷く、魔力が動かないとなると、一点を使う)
(一点?)
(魔力の一点が、星雲のごとき巨大な魔力を動かすのだ)
え?
一点?てこの原理だろうか?
(テニさま?)
誰?ファーファ?声が聞こえる?いや感じるが正解か?気づいたの?
(ファーファ?)
(はい、私です、そこにいらしたのですか!)
あれ?ファーファ、言葉が流暢だ!
ファーファは空を見上げて、見えないはずの俺を確実に捉えた。
(私が傍にいながら……邪神の策に……謀られました……ごめんなさい、痛いでしょう?苦しかったでしょう?)
(今は痛くないよ、なんか分離しているみたいだし)
(ああ、大丈夫のようですね、ファーファは安心しました)
(え?体の方はボロボロなんだけど?)
(はい、陰の肉体は損傷していますが、陽の精神体の方は無事みたいです、これならあとは魔力が動くだけで復活できます、陽が陰を修復するはずです!)
……この星雲みたいな魔力、簡単に動くの?今、止まっているように感じるけど?
次回サブタイトルは 【第81話】 一点の力 です。




