【第110話】 バレたら困ります
お早うございます。
ちらっ、と聖女クルルンを見る。
……お口の周りが、ソースだらけ……。
「ファーファ!タオルある?」
「ハイ、テニサマ!」
「クルルン!お口!」
「え?まだ食べています!」
いや、それでも!
ふきふき。
「トラ子さん、残りのお肉、全部使っていいですよ。私、ちょっと聖女さまを送ってきます」
まあこれだけ森の住人が集まって、お肉没収はダメだと思う。
オーク、ドワーフ、エルフ、獣人、30名はいる?お肉の匂いに誘われたか?
「いいのかい?これは値段が付けられない、クラスなんだが」
「いいですよ!では聖女クルルン、ユキの所まで送りますね……そんな睨まないで下さい!」
「まだ、あと少し残っていますっ!これ全部食べてからですっ!」
食べ物の執着が凄い?
「ええっ!?森の住人達、集まってきていますけど?いいんですか?」
「え?そ、それはダメです!いけません!私、食べないことになっていますから!あ、でもあと一口!」
ぱくぱく。
「もういいですか?」
「まだソースがっ!もうちょっと!」
ぺろぺろ。
「ク、クルルン!?お皿ペロペロはダメでしょう!」
「えええっ!?美味しいのです!」
「それでも!その、お行儀が悪いです!」
「魔王キュウガさま、あなたもリッチナみたいなこと言うのですね!?」
おお、さすがは騎士団筆頭リッチナさん!
まあ、お皿は綺麗になるけど!
「おーい、トラ子さん!焼きそばいいかな?大盛りで!」
うげっ!やって来ました30名っ!
「あ、こっちはモダン焼き!大盛りで!ミケはまだ稽古か?」
「今日は凄く良い匂いだが?なにかいい肉仕入れたのか?」
どうする?チラチラこっち見ているけど?
バレてもいいのかな?聖女クルルン!?
今、お皿ペロペロしているから、お顔隠れているけど!
(バレたら困ります。いつかはバレると思いますけど、今はダメです!)
うひっ!いきなり念話!?
(どうしろと?だいたい、クルルンがもたもたしているから!)
(だ、だって焼きそば、唯一の楽しみなんです!そんな過ぎたこと、言わないでくださいっ!)
(くっ、これからどうする?プランは?)
(どうにかして下さい!私、お皿でお顔かくして、厨房まで移動します!)
(どうにかして、気を引けと?)
(はい)
どうする?まあ元々バイトの予定だったけど……うーん困った。
「ト、トラ子さん!手伝いますね!」
とウインクして声を掛けてみる。
きっと気がつくはずだ、トラ子さんなら。
「!?……ん?ああ、いいよ、注文や配膳を取敢えずいいかい!」
よし、あとは俺の方に皆の視線を向けさせればいいんだ!
でも、どうやって?取敢えず注文?配膳?
(ファーファ!私が皆の気を引く!聖女クルルンを逃がせ!)
(ハイ、テニサマ!)
ボソボソ……やっぱ、聖女クルルンさまではないのか?……
……まさか、あの食いっぷり、おかしいだろう?……
……聖女さまは睡眠も、食べ物も、排泄もしない魔力だけで生きている神聖なお方なんだぜ?お前ら不敬罪で捕まるぞ!……ボソボソ。
不敬罪かぁ……マズいなぁ、どうしよう?……こうなったら!
泣き虫弱虫スキル、発動するなよっ!
おれは覚悟を決め、息を大きく吸い込んだ。
「お、お帰りなさいませぇええええっ!ご主人さまぁああ!」
「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」
「今日は特別なお肉が入荷しましたぁ、漲る焼きそば、迸るモダン焼きがおすすめですぅ!」
「「「「「「「「「「!!」」」」」」」」」」
「ご一緒に、葡萄酒も如何ですかぁ?」
「「「「「「「「「「……!……」」」」」」」」」」
……外したか!?
次回サブタイトルは 【第111話】 その呪文は、萌え!燃え!キュン! です。




