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4 手さぐり

転校して、卒業して、高校に進んだ。


高校二年生の時に、転校はしなかったけれど、また引越しする羽目になった。

母親が再婚したからだ。


母親が強く希望し、僕が自己主張を諦めたので、また苗字が変わる。

苗字を変えなくて良い年齢になっているのに、「また変わるのが嫌」という理由では、僕は、母親の並べ立てる理由に対抗できない。


とはいえ、苗字が変わる事について、周りへの説明が面倒で、それが嫌だった。


大人って都合良く勝手だ。いや、母親が他の人より気が強く自分の意見を曲げないんだろう。

高校生になっているとはいえ、自分は子どもだ。対抗できない。


そんな話を、同じ高校に進学した、将棋したい小鬼の何かがいる吉村くんに話す。

ふーん、と単調な口調で返事をしてくる。

面倒だよな、と、一拍置いてから付け加える。

勉強はできるのに本当に頭がいいのか分からないところがある、けど頼りになる。


そんなことは話せる友達はこちらに来てからもできたけど、結局誰にも話せていないことはある。

何かの話だ。


死ぬまでこうかもしれない。いいのか悪いのかも分からない。

だけどこれが僕にとっての普通の視界だ。


困ったことがあったら、勇気を出して、実は、と相談しよう、と思いつつも、誰にも言わないままの今がある。


実は中学三年で占い師に見てもらいに行ったけど、そんな話は言われず、僕も、

「あれ、この人普通のっていうか、単なるおばさんかもしれない」

と思ってしまい、あわよくば向こうからそんな話をしてもらってそれをきっかけに相談を・・・と思っていたけど何も起こらず話さずで、とりあえず稼げて自分に向いている仕事ってなんですか、という占い結果だけ聞いて帰っただけだった。

ちなみに、地道な裏方が向いていると言われたけど、もっとこう違うものを期待していた気がする、神のお告げ的な。

占い師の何かは部屋が暗かったせいかよく見えなかった。見えても占い師にそのことを聞けないのなら意味はない。


変に緊張して勇気を出しての行動だったのに、まぁ、僕ってこんなもんだよなと思う。


とにかく、こんな風に、僕は頭がおかしくて幻影を見ている説も捨てきれないまま、様子見を続けて生き続けている。

もうそれは良い。良いんだけど。

生命の危機みたいな困ったことも起こっていないから。


なのだけど。


「・・・」

僕は無言で、目の前、高校は持ち込みOKだった将棋盤をじっと見つめる。

僕がわずかに優勢なのだと思う。

吉村くんが、じっと将棋盤を見つめている。

その側、将棋好きの小鬼が、指で指す。次にここに置いて、するとここにこれが動くだろ、だから次はここだ、みたいな。そういう、何手か先の流れだ。


吉村くん本人の考えが、小鬼みたいな何かとして現れているわけではない。とは思う。んだけど、この小鬼の将棋の流れと、吉村くんの将棋の打つ手が、同じなんだよなぁ。


つまり僕は目の前でカンニングしているようなものなのだ。

なので、僕は、学力面では吉村くんに勝てないくせに、将棋には半分半分で勝てる、という、まるで将棋には強い人、みたいに思われている。吉村くんや周りから。


ちなみになぜ半々か、というと、それで王手までのルートを示された場合、僕には有効な逃げ方が分からないことが多いからだ。勝てる時は、相手が負けるルートを示された時だ。


ちょっと僕に対して迂闊だと思うんだよね。小鬼的な何かは・・・。


でもとにかく吉村くんに申し訳ない気持ちになる。

いや、吉村くんと小鬼的な何かは別物のはずだ。だから気にしないで良いのかもしれない。

だけど僕の実力ではないし。


見なければ良い。僕だって見たくないよ。何かごと見えなくなって良いんだよ。

だけど実際は、同じ盤上で小鬼が指差すんだからどうしても見るよ。目を閉じていることも考えた。けど、タイミングが合わないと意味がなかった。あと、寝てるって怒られた。言い訳が難しかった。


僕だってなんとかしようとは思った。

伊達メガネをかけてみた。メガネをかけると見えなくなるっていう別の話を知ったからだ。

似合わないオシャレだときっと思われる。その恥を忍んで僕はかけた。

だけど僕のには効果がなかった。鏡はダメだけどメガネはスルーだ。伊達メガネ代が無駄に。


正直、僕から何かに直接話しかけようとは思わない。何かがわからないのだから。

何かに巻き込まれたりなんてしたくない。

世の中の漫画では霊感で事件解決とかしてるけどそんな世界に入りたくない。


どうしたら快適に過ごせるだろう。

誰か、師匠になって教えて欲しい。

事件や冒険はいらないけど師匠は切実に欲しい。


まぁ、いないだろう。

いても僕が名乗りを上げない限り見つかることはないだろう。

なんて諦めに似ている。


悩みつつ、解決策が棚ぼた的に転がってくることだけを期待して、現状維持を続けている。


ずっとこのまま生きていくのかもしれない。

でもこれが普通になれば、普通で過ごしていけるはずだ。


何事も無い。と書いて無事。

無事、平穏、普通、平凡。

そのように生きていきたい。僕だけの世界の中で。


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