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第95話 クチノッタ島2

「ニコラちゃん、よく水たまりの存在に気づいたのう!」

「あのね、目には見えなかったんだけど、水があるってことはだけは感覚でわかったんだ!」

「ふーむ、どういう事かのう?」

「もしかしたら、水の力によるものじゃないか?」

「そうかもしれないわね。水を(あやつ)るってことは、水の存在を理解するって事と、きっと同じなのよ!」


 それから勇者たちは、ロレンツォに指示された洞窟(どうくつ)を4つまわり、計5つの洞窟(どうくつ)の敵を倒した。ロレンツォの敵探索(たんさく)能力と4人の連携(れんけい)は数をこなす(ごと)上達(じょうたつ)し、ピンチのようなものは全く無かった。


「それにしても5つの洞窟(どうくつ)、規則性も全く無くバラバラの場所だったのう!」

「実はその全てが、交代で巡回(じゅんかい)を行っていたのですよ」

「ということは、あたしたちが進んできた洞窟(どうくつ)が敵に見つかる心配は無いってことなのね!」


 勇者たちは音を出さないように、静かにハイタッチをした。


「あとは地図で把握(はあく)できていない部分、島の奥へと進むだけです」


 ロレンツォを先頭に、島の奥へとしばらく進む。


「おおっ! これはかなり大きな洞窟(どうくつ)のようじゃのう!」

「他に比べてかなり厳重(げんじゅう)のようだな!」


 島の奥で見つけた洞窟(どうくつ)は、他とは違い5体の魔物によって入り口が守られていた。


「どうする? あの5体に見つからずに中に入り込むのは難しいと思うけど」

「5体同時に倒すというのも難しいな!」


 洞窟(どうくつ)の入口は、ゴブリン2体、ヘルハウンド2体、ハーピー1体で守られており、それぞれが背後を守るように配置されていたため、同時に倒し切るのは難しいようであった。


「おや? この洞窟(どうくつ)の中に首謀者(しゅぼうしゃ)を見つけました。どうやら、あなた方も知っている人物のようですね」

「ワシらが知っておる商会の人物じゃと? 一体誰の事じゃろのう?」

「それより、首謀者(しゅぼうしゃ)を見つけたって事は、魔物に見つかっても構わないってことよね?」

「よし! それならワタシたちの最大火力で突っ込めば、一気にけちらせるはずだ!」


 ジャクリーヌは気合を入れて、背中の両手剣に手を伸ばした。


「いえ、お待ち下さい。逃げられぬよう手は打ってありますが、もしもという事もあり得ます。そのため、わたしと首謀者(しゅぼうしゃ)がお互いに顔を合わせておく必要があります」

「言い逃れできないように、ということじゃのう!」


 逃げられないような手とは、首謀者(しゅぼうしゃ)と思われる者の家を、屋敷ごと転送の魔術具で封じることだった。ロレンツォは(あや)しいと思われる人物を3人まで(しぼ)っており、洞窟(どうくつ)で発見した首謀者(しゅぼうしゃ)の家にはリアを中心としたメンバーが配置されていたのだ。


「じゃが、リアたちはどうやって転送を封じるタイミングがわかるのじゃ?」

「たしかにそうね! 前もってわからなければ準備のしようもないわ!」

「それは問題ありません。リアさんは現場に落ちていたペンダントをお持ちのはずです。転送の魔術具が起動する前、それが赤く光りますので」


 ロレンツォがそう話す様子は、自信に満ち(あふ)れているように見えた。どうやらここまでは、ロレンツォが予想していた通りの展開のようだ。


「しかしどうする? ロレンツォさんと首謀者(しゅぼうしゃ)が顔を合わせるためには、敵をまとめて洞窟(どうくつ)の中に(おび)き寄せて、一気に倒すくらいしか方法がないわよ?」

「せめて、洞窟(どうくつ)の中の様子が分かれば作戦も立てられるのじゃがな」

「それでしたらわかりますよ。少しお待ち下さい……」


 ロレンツォはそう言うと、(ひたい)に2本の指をあて静かに目を閉じた。


「中はかなり広くなっていて、30体ほどの魔物がいますね」

「30体……それは厄介(やっかい)だな」

「……!? そうじゃ!」


 ジャクリーヌが悩んでいる(となり)で、シモンがなにか良い作戦を(ひらめ)いたようだ。


「広い場所に大量の敵、こんな時こそアレを使うときじゃ! ニコラちゃんとジャクリーヌ、こっちへ来い! 作戦を伝えるぞい!」


 シモンの元へ勇者とジャクリーヌが近づき、なにやら作戦を伝えられている。


「うん! それならイケるね!」

「だが、ワタシはどうすればいい?」

「お主はこのタイミングで……」

「なるほど! それならイケそうだな!」


 シモンから作戦を聞いている2人は、なにやら盛り上がっているようだ。


「よし! 準備ができ次第、ワタシは行くからな! ニコラちゃん、あとは任せたぞ!」

「うん! ボクに任せて!」


 勇者とジャクリーヌはそう言うと、入念(にゅうねん)にストレッチを始めた。


「これから何が始まるというの?」

「なあに、ワシらは2人のあとを、ゆっくりついていけばいいだけじゃよ!」

「それじゃあ、行ってくるぞ!」


 ジャクリーヌは両手剣を構え、全力ダッシュで洞窟(どうくつ)へと向かっていった。


「ジャクリーヌ、何を考えているの? あんな正面から突っ込んだんじゃ、敵に見つけてくれと言っているようなものじゃないの!」


 イザベルの言う通り、魔物たちはすぐにジャクリーヌの姿を見つけ(おそ)いかかってきた。しかしジャクリーヌは、そのまま突っ込んでいく。


「こっちだ! 魔物共!」


 ジャクリーヌは魔物たちを挑発(ちょうはつ)するようにそう言った。攻撃を繰り出すゴブリンやヘルハウンドは、余程頭にきていたのか大振りになっており、ジャクリーヌはヒラリと交わした。そして、魔物たちを引き連れたまま洞窟(どうくつ)の中へと入っていった。


「ワシらもそろそろ行くぞい。ニコラちゃんも出発するようじゃからのう!」

「いってきまーす!」


 シモンたちが洞窟(どうくつ)に向かい歩き出した横を、もの凄いスピードで勇者が追い越していく。どうやら、風の力で加速しているようだ。


 その頃、ジャクリーヌは洞窟(どうくつ)の広い空間に到達していた。


「この広さなら問題ないな。敵も散らばっていて良さそうだ……では始めるとするか」


 ジャクリーヌは広い空間の真ん中で止まり、大きく息を吸い込んだ。


「お前らー、ワタシはここだー! かかってこいー!」


 そして、洞窟(どうくつ)全体に聞こえるくらいの大きな声で(さけ)んだ。すると、全ての魔物がジャクリーヌの存在に気づき、一斉(いっせい)(おそ)いかかってきた。


「ちょっと待って! それはジャクリーヌが(おとり)になってすべての敵を引き付けるってこと?」

「そうじゃ! それが今回の作戦じゃよ!」


 シモンたちは、丁度広い空間の前辺りまで来ていた。そして、目の前にジャクリーヌが大量の魔物に(かこ)まれている様子が見えてきた。

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