第88話 ガルツォーニ荒野2
「ぼくは王都で手に入れた情報を、ロレンツォ様にこうして伝えていたのですよ」
「もちろん、パウの現在の主人は国王様ですから、許可のある情報に限られていますがね」
「なるほどのう! それでクンが話すことを知っておったのじゃな!」
「それにしてもパウちゃんは、いつ見ても可愛らしいわね! 精神体じゃなかったら、なでなでとかしたかったのに!」
パウにそう話すイザベルの目つきは、若干、変質者っぽい。
「皆様はパウに聞きたいことなどありませんか? もしないようでしたら、夢の世界に戻しますが」
「そうだ、パウ! ゲルベルガの店の様子はどうだ? 新商品が出たりしていないか?」
「そうですね、ゲルベルガさんは王都の特産品であるサツマイモを使った新商品の開発に今取り組まれていましたが、なかなか納得のいくものができないと悩まれているようでしたよ」
「あっ! それならボク、いいものを知ってるよ!」
勇者は元気よく手を上げてそう言った。
「ボクのお婆ちゃん家でよく作ってくれるおやつにね、いきなり団子っていうのがあるんだ! 輪切りにしたサツマイモに粒あんを乗せて、小麦粉の皮で包んで蒸し上げたものなんだ! 甘いサツマイモで作ると、とっても美味しいんだよ!」
勇者は目をキラキラと輝かせながら話した。お婆ちゃん家でいきなり団子を食べるのが楽しみだったのだろう。
「なるほど。今教わった作り方を、ゲルベルガさんにどうにかして伝えておきましょう」
チリンチリン、いきなり団子の話をしていると、ベルが鳴るような音が聞こえてきた。
「そろそろ、ぼくは起きる時間のようです。それでは皆様、よい旅を!」
パウはそう言うと、手を振りながら消えていった。
その後いきなり団子のレシピは、勇者からの手紙という形で伝えられ、ゲルベルガの手により改良されることになる。それは1ヶ月後に完成し、王都の新たな名物として世界中に広まることになるのだった。
「これで、夢のお告げについてお話しても問題がなくなりましたね。それでは発表します。私たちが次に進むべき場所は、火の精霊の祠で御座います」
「ということは、ここから北東にある原住民の島に船で渡らなくてはいけないな!」
「じゃがワシら、船など持っておらんぞ! ロレンツォよ、お主ほどの大商人ならば船の1隻や2隻持っておるのではないか?」
シモンがそう言ってロレンツォの顔を見ると、何故か難しい顔をしていた。
「ロレンツォさん、どうしたの? そんなに難しい顔をして?」
「皆さんの次の目的地、火の精霊の祠は、わたしの住むジンドルフの村の北にあります」
火の精霊の祠は、ジンドルフの村から北の北スピラ海を渡った先にあった。
「しかし北スピラ海には、魔王が出現して以来魔物が現れ、船で渡ることができません」
「となると南スピラ海から、原住民の島の西側に渡るしかないわけじゃのう!」
火の精霊の祠のある原住民の島は、東西に長く伸びており、魔物のいない南スピラ海を渡れば行き着くことが可能であった。
「ただしその場合、かなりの距離を航海する必要があり、わたしの船では辿り着くことができません」
「それではワタシたちには、先に進む方法が無いということなのか?」
勇者たちはお互いを見つめ合い、解決策を模索しているようだ。
「1つだけ方法を知っています。ただしその方法は、面倒に巻き込まれる可能性が非常に高いのです。それでよければお伝えしますが……」
「面倒でもなんでも構わん! その方法を教えてくれんかのう!」
「その通りだ! ワタシたちには、進むという選択肢以外ないのだからな!」
「承知しました。それではジンドルフの村に向かいましょう。その話は、村に着いてからに致します」
勇者たちを乗せた馬車は、インガの塔から西の果てにあるジンドルフの村に向かって進んだ。そこはガルツォーニ荒野と呼ばれる道の整備もされていない荒れ果てた場所であった。
「それにしても、お主が馬車を操るとは思いもせんかったぞい!」
「しかも、とても運転がお上手ですね。こんな荒野をそのスピードで操るなんて私にはできません」
なんと馬車の手綱を握っているのは、ロレンツォであった。その横にはリアが座り、リアの肩に乗ったクンとともに、荒野での馬車の操縦技術を教わっている。
「1番驚きなのはロレンツォさんの指示に、ルディが素直にが従ってるところね」
「それには秘密があるのですよ。実はこの馬は、以前わたしが乗っていたものなのです」
「ちょっと待て! ルディは王女様から頂いたものなのだぞ!」
ロレンツォによると、馬のルディは王都の王女が10歳を誕生日を迎えたときに、ロレンツォからプレゼントしたものらしい。
「だからルディはこんな走りができたのね! 驚きだわ!」
「実はわたしも驚いておりまして、ルディという名前は以前わたしがつけていたものと同じなのですよ!」
「それにしても不思議ね! 偶然がこんなにも重なることがあるなんて!」
馬車の中の3人が勇者の顔を見つめている。偶然を引き寄せる力も、勇者が起こす奇跡によるものだと感じているようだ。
「それでは、わたしの馬車操縦講座はここまでに致しましょうか」
しばらく進むと、ロレンツォは馬車を停め一旦休憩をすることとなった。
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