表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

87/122

第87話 ガルツォーニ荒野1

 カンッカンッカンッ! けたたましい音が馬車の中に鳴り響く。


「さあ皆様、朝食の準備ができましたよ! 起きてください!」


 厨房(ちゅうぼう)から顔を出して中華鍋を叩いたのは、なんとロレンツォだった。


「なんじゃ? 朝から騒がしのう!」

「クンの肉球での起こし方を見習ってもらいたいものだわ!」

「……朝飯を……しっかり……とらない……と……力が……」

「ジャクリーヌ様は相変わらず朝に弱いですね。それより、甘い(にお)いがしませんか?」


 リアの言う甘い(にお)いは、厨房(ちゅうぼう)の中から(ただよ)ってきているようだった。


「ボクの作った粒あんを使って、ロレンツォさんが朝食を作ってくれんたんだよ!」


 勇者がロレンツォの後ろから、ヒョコッと顔を出す。


「なに? 粒あんだと!」


 寝ぼけていたジャクリーヌは、粒あんというキーワードを聞き、一気に目覚めたようだ。彼女はゲルベルガのおはぎを恋しがっており、粒あんという言葉に身体が反応してしまったのだろう。


「わたしの大好物である、あんこアップルパイを焼き上げました! ロレンツォ特製オリジナルブレンドコーヒーとともに、冷めないうちにどうぞ!」


 厨房(ちゅうぼう)のテーブルの席に全員がつくと、オーブンから焼きたてのあんこアップルパイが出される。それをサクッと食欲を刺激する音を立てながら、ロレンツォが切り分ける。


「どうぞ、お召し上がりください!」


 ロレンツォがあんこアップルパイの皿と、コーヒーをソーサーに載せて気品よく配膳(はいぜん)する。


「……それでは、手をあわせてください!……いただきます!!」

「いただきます!!」


 シモンの号令(ごうれい)につづき、いただきますの合唱(がっしょう)をしたあと、さっそく、焼きたてのあんこアップルパイに手を伸ばす。


「パイ生地のサクサクとした食感とりんごのジューシーさとのコントラスト、それに甘さ控えめの粒あんが加わって、一口食べるたびに異なる味わい楽しめる極上の1品となっておるのう!」

「パイ生地は、たっぷりのバターを練り込んでサックサクに仕上げております」

「粒あんは、りんごの自然な味を1番生かせるような甘さに調整したんだよ!」


 粒あんの甘さは、勇者とロレンツォで何度も味見を繰り返しながら、やっとで辿(たど)り着いたものらしい。


「りんごの自然な甘みと酸味、シナモンのスパイシーな風味、そして粒あんのまろやかな甘さが絶妙に組み合わさった味わいが、口の中を幸せへと連れて行ってくれるな!」

「アップルパイに合う酸味の強いりんごを食感を楽しめるよう大きめに切り、最高級のシナモンと合わた自信作で御座います」


 ロレンツォは、あんこアップルパイの最高級の材料を、魔法のカバンに持ってきていたのだった。

 あんこアップルパイとコーヒーの相性は抜群であり、全員満足するまでおかわりを繰り返した。


「それでは皆様のお腹も心も満足されたところで、(わたくし)リアが夢のお告げで聞きました、次に進むべきを場所を発表いたしましょう」

「リア、ちょっと待て! その話、ロレンツォに話していいものなのか?」

「ワシは構わんと思うぞい! こやつは、何度もワシらを助けてくれたんじゃからのう!」

「そうね! 今回もロレンツォさんがいなかったら、ビル(じい)さんを(のろ)いから開放するなんて事できなかったでしょうからね!」


 ロレンツォに対する多少の疑念はあったが、それ以上に信頼を感じているようだ。


「皆様にそう思っていただけて、非常に光栄です。しかし、わたしに抱かれている疑いのようなものも皆様お持ちのようです」

「例えば、ぼくが話すことを知っていた事とかね!」


 クンの首輪が黄色く光っている。これはクンの言葉のようだ。


「確かに不思議(ふしぎ)じゃのう! クンはこれまでワシら以外と話すときは、必ずニコラちゃんの(えり)巻きに(ひそ)んでおったはずじゃ! わかるはずなどあり得ん!」


 全員で顔を見合わせ(うなず)く。クンの秘密は、しっかり守ってきたという自信があるようだ。


「皆様、クンさんは2度ほど正体を明かして話をしていますよ。まあ、人とではありませんが」


 人ではないと聞き、さらに頭を悩ませる勇者たち。


「それでは、見ていただくとしましょうか。それが1番早いでしょうから」


 パチンッ、ロレンツォはそう言うと指を1回鳴らした。すると、ロレンツォの前にモクモクと白い(けむり)のようなものが現れ、その中に薄っすらとした影が見えてきた。


「あれ? ここは一体何処(どこ)でしょうか?」


 勇者たちの目の前に、(ちょう)のような羽を背に持ち、黄緑色のドレスを(まと)い、黄緑色の前髪で両目が隠れた、手のひらサイズの女の子が現れた。


「お主、パウではないか! 何故(なぜ)こんなところにおるんじゃ?」

「シモンじいさまに皆様、お久しぶりです。ロレンツォ様もいらっしゃるという事は、そういうことですね」


 (けむり)の中から現れたのは、王都リットベルガーの国王を守護する、風の妖精(ようせい)パウであった。パウはロレンツォを見たことで、この場の状況を把握(はあく)したようだった。


「パウさん、あなたがここにいる理由を皆様にお話いただいていいですか?」

「わかりました、ロレンツォ様。ぼくは国王様の10歳の誕生日のときに、ロレンツォ様から守護妖精(ようせい)としてプレゼントされたものなのです。それ以前のぼくは、ロレンツォ様にお仕えする妖精(ようせい)だったのですよ」


 パウは身振り手振りを交えながらそう話した。その姿はとても可愛(かわい)らしい。


「こうして呼び出しているのは実体ではなく、眠っているパウの精神体なのですよ」


 パウの姿をよく見てみると少し透けて向こう側が見えており、ロレンツォが言っている精神体であるということが事実であると理解することができた。

お読みいただきありがとうございます!

続きが気になる、面白い!と思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!

このページの下にある、

【☆☆☆☆☆】をタップすれば、ポイント評価出来ます!

ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=818740172&size=135  ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ