第83話 インガの塔5
「あっ! これはボクがお気に入りの、蚊取り線香のやつだ!」
「それじゃあ、ここはニコラちゃんに任せるわね!」
2つ目の台の謎解きは、火をつけると60で燃え尽きる渦巻き状の線香を複数使って、45を計るという勇者のお気に入りのものを、少しひねった謎解きだった。
「まずは、2つの蚊取り線香を用意してっと……」
勇者は2つの蚊取り線香を手に取り、1つは内側と外側の両方に蝋燭で火を点け、もう1つには外側だけに火を点けて台の上に置いた。
すると、両方に火を点けた蚊取り線香はなくなり、残りの片側だけ火を点けた方は半分燃え尽きた状態へと変わった。
「これで、60の半分の30経過したことになるから、残りの蚊取り線香に内側からも火を点けてっと……」
残り30だったものに両端から火を点け、台の上に置く。すると、燃え尽きて15が加算され、合わせて45を計る事ができた。
ピンポン、正解音とともに木の台に付いていた石状のものが鏡へと変わり、光の筋を反射させ先へと進めた。
勇者たちはこの謎解きを合計7回行った。すると、7つ目の台の鏡から光の筋が紋章に向かって伸びていく。
「ワシらの役割は終わったぞい! 後はお主ら攻撃ゴブリン隊が、とどめを刺すだけじゃ!」
シモンがそう叫んだ後、紋章に光の筋が届き輝き始めた。そして、攻撃ゴブリン隊が戦っている敵に向かって光の筋が伸び、敵の中心部分に丸い何かが一瞬だけ現れ、消えていった。
「なるほど、そういう事ですか」
執事はそう言うと手を横にサッと広げ、攻撃ゴブリン隊を部屋の隅へと下がらせた。どうやら今の出来事により、最終関門の攻略法を完全に理解したようだ。
「どうやら、我々は手順を誤ってしまったようです」
「なんじゃ? なにがいかんというんじゃ?」
執事は、苦虫を噛み潰したような表情をしている。どうやら、大きな問題が生じてしまったようだ。
「我らの敵は小さなスライムでした。しかし、弱点であるはずの核は無く、攻撃を繰り返すことによって核が現れるのだと思い、攻撃を続けておりました」
しかし、スライムは肥大化するばかりで核が現れる様子は一向になく、一旦攻撃の手を止めていたらしい。
「おそらく、先程の光で現れたものが弱点の核なのでしょう。あの一瞬にだけ攻撃が通り、攻撃の手を核まで伸ばすことができるはずです」
「では、ワシらがもう一度謎を解き直し、再び光を送り込めば、そのスライムを倒せるのじゃな!」
勇者たちはシモンの言葉で気合を入れ直し、再配置された木の台に向かおうとした。
「おそらく、それは無理でしょう」
執事はそう言いながら、下を向いてしまった。どの様な策を巡らせても、解決策が浮かばないようだった。
「せめて、どう無理なのか話してくれんかのう? このまま諦めるのでは、ワシらも納得がいかん!」
「……それでは、お話しましょう」
執事によると、スライムが肥大化しすぎているため、このままでは制限時間内に核に至る攻撃をする事が難しいらしい。スライムの中に無数の空気を一気に送り込むようなことができれば、一撃で核に至る攻撃ができる可能があるが、その手段が見当たらないとのことだった。
「あれ? 空気を送り込むって、リアの炭酸装置でできそうじゃない?」
「おおっ! ニコラちゃん、それはナイスアイデアね! 執事さん、どう?」
「残念ながら、あの装置では空気の量が不足しているでしょう」
希望の光が現れ、すぐに消えていった。反動でガッカリ度が増す。
「お主ら知らんじゃろうがな、今、最上階で炭酸装置の強化バージョンを作っておるのじゃよ! リアとビル爺さんとでな! あの2人ならば、すでに完成させとるじゃろて!」
パシーン、勇者たちはハイタッチを行い、歓喜の輪を作る。
「それは喜ばしいことです。しかし、もう1つ問題が残っているのですよ。その装置を使用するためには、我らの元へ届けなければなりません。しかし、パーティー4人以外ここには入れませんし、扉の外に出ては失格となってしまいます」
執事の言葉で、歓喜の輪は崩れ去った。
「そうじゃったのう! 忘れておったわい!」
「4人までしか入れない? あたし、なにかを忘れているような気がするわ!」
「ぼくのことじゃない?」
クンが勇者の襟巻きから顔を出しながらそう言った。
「そうだ! ワタシたちにはクンがいるじゃないか!」
「しかし、クンはどういう理屈で入れたんじゃろな?」
「それはどうでもいいじゃない! クンに装置を届けに行ってもらいましょう!」
「それじゃあ! いってくるよ!」
クンはそう言うと、襟巻きから飛び出し、下の階へと駆け出していった。
扉は開いたままにしてあり、スイスイとクンは進んでいく。そして、1階の扉を抜け通路を走り、昇降機へとたどり着いた。
「よし! あとは最上階に行って、と……あれ?」
クンは昇降機に載ったが、動き出す様子がない。昇降機にはボタンはなく、人が乗り込めば動く仕組みになっていた。
「もしかして、重さが足りないのかな? ヨイショ! ヨイショ!」
高くジャンプして、瞬間的に重さをだそうとするが、昇降機が反応する様子はない。
「このままじゃ、時間切れになって失敗しちゃう! どうしよう……誰か都合よくお客さんでも来ないかな?」
「わたしではどうでしょうか?」
クンが独り言を言いながら悩んでいると、1人の男が昇降機に乗り込んできた。
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