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第82話 インガの塔4

「いろいろあったけど、意外と早くここまでこれたわね!」

「あと四半刻(しはんとき)以上は残っているな!」


 勇者たちの快進撃(かいしんげき)は続き、最終関門手前の9階までやってきた。ジャクリーヌは残り時間をセットしていた砂時計を確認していた。ちなみに、四半刻(しはんとき)とは約30分の事である。


「次が最後になるけど、どの(なぞ)が難しかったと思う?」

「ワシは、真実の扉の迷路じゃな! あれは考察(こうさつ)力が(ため)される試練(しれん)じゃったわい!」


 シモンの言う真実の扉の迷路とは、迷路の途中に3つの扉がある場所があり、その内1つが真実を語り、残り2つが(うそ)を語る。そして、その中から正しい扉を選んで進むというものを、3回連続で正解しなければゴールにたどり着けないというものであった。


「ワタシは天秤(てんびん)を使ってボールを見つけるというヤツだな!」

「ああ! あれは難しかったけれど、面白かったわね!」


 ジャクリーヌの言う天秤(てんびん)(なぞ)解きとは、重さの等しい8つのボールに(まぎ)れた1つの軽いボールを、天秤(てんびん)を使い、たった2回の軽量で見つけ出すというものだった。


「ボクは蚊取り線香(せんこう)をつかって時間を(はか)るヤツが面白かったよ!」

「あの(うず)巻き状の形をした変な線香(せんこう)の事じゃな!」


 勇者の言う蚊取り線香(せんこう)を使った(なぞ)解きとは、火をつけると100で燃え尽きる(うず)巻き状の線香(せんこう)を複数使って、75を(はか)るというものだった。


「でも不思議(ふしぎ)よね? なんで、カトリセンコウやエレベーターのようなニコラちゃんの世界にあるものが、この(とう)にあるのかしら?」


 ガシャン、イザベルの発言について思案を(めぐ)らせていると、最終関門のある10階へと続く扉が開いた。


「さあて、最終関門だ! 気合い入れていくぞ!」

『おうっ!』


 ジャクリーヌが(げき)を飛ばし、全員が(こぶし)を上げて応える。そして、階段を駆け上がっていった。


「なんじゃ、この部屋は? 真ん中に台があるだけじゃぞ」

「1階の最初の部屋で見た様子と変わりないようだが……」


 最終関門ということもあって、警戒度を最大まで上げて台へと近づいていく。


「ボタンとランプがあるわね。ボタン押してみる?」

「とりあえず、押さねばなにも始まるまい!」


 ジャクリーヌがボタンを押そうとすると……ピカッ、突然ランプが赤く光り始めた。


「なんだ? どういうことだ?」


 ジャクリーヌは(あわ)ててボタンを押すのをやめ、背中の両手剣に手をかけた。


「みんな、あっちを見て! 壁が透けていくわ!」


 イザベルの指差す先の壁が透けていき、奥の部屋が見えるようになっていく。よく見ると、壁が無くなったのではなく金網(かなあみ)のようであった。


「ん? 向こうに見えるのは、攻撃ゴブリン隊のようじゃぞ! おーい、お主ら! 怪我(けが)はしとらんかのう!」

「魔法使い殿。早くそちらのボタンをお押しください。それと同時に、最終関門が始まるものかと」


 執事(しつじ)がそう言うと片手を水平に広げ、攻撃ゴブリン隊に指示を送った。すると、部屋の四隅に別れ、攻撃ゴブリン隊は戦闘に備えた。


「それじゃあ、いくぞい!」


 ポチッ、シモンがボタンを押すと部屋が薄暗くなり、床からいくつもの木で組まれた高い足場のようなものが出てきた。そして、部屋の隅から光の筋が1つ現れた。


「なんじゃ? これをどうせいというんじゃ?」

「これまで通りだとすると、台に書いてあるんじゃないの?」


 イザベルの言葉に従い、ジャクリーヌが台の上を確認する。


「おっ! あったぞ! なになに……入ってきた光の筋を木の台についた鏡で(みちび)き、紋章(もんしょう)を照らせ。ただし、木の台(ごと)(なぞ)を解かねば鏡は開放されない。だとよ」

「なるほど! それなら、片っ端から(なぞ)を解いていけばいいんじゃない?」

「ちょっと待つんじゃ! 木の台の下には、レールがついておるぞい!」


 木の台の下にはレールが付いており、台を動かすことはできるが動かせる方向と範囲(はんい)は決まっているようであった。


「木の台に付いておる石状のものが、おそらく(なぞ)を解くと鏡になるのじゃろう! つまり、先に紋章(もんしょう)までの光の道筋を推察(すいさつ)してつくり、必要な分だけ(なぞ)を解いていくべきじゃ!」

「おじいちゃんの考えが正解のようね!」


 勇者たちは議論を行いながら、木の台を正しい位置に動かし始めた。その隣の部屋では、攻撃ゴブリン隊が現れた敵に激しい攻撃を繰り返し行っていた。


「よし! 木の台に位置はこれで問題ないな!」

「さっそく、1つ目の台から(なぞ)を解いていくぞい!」


 1つ目の木の台に向かうと、板の部分に問題文が現れた。


「なになに……重さの等しい8つのボールに紛れた1つの軽いボールを、天秤(てんびん)を使い、たった2回の軽量で見つけ出しなさい。だとよ……って、前に出たまんまじゃないか!」

「どうやら鏡を開放する(なぞ)解きは、今まで出題されたものがでるみたいね!」

「これなら楽勝だね!」


 鏡の開放が簡単だとわかり、自然と笑顔があふれる。


「この(なぞ)解きは、ワタシにやらせてくれ! なにせ、お気に入りだからな!」


 ジャクリーヌは板の上に現れた天秤(てんびん)に、ボールを3つずつ載せた。しかし、天秤(てんびん)は動かず水平のままだった。


「つまり、天秤(てんびん)に載っていない残りの2つのどちらかが軽いボールということだな!」


 ジャクリーヌは天秤(てんびん)に載った6つのボールを降ろし、残りの2つのボールを1つずつ載せた。すると、天秤(てんびん)の右側が下がった。


「右側のボールが軽いボールというわけだな!」


 ピンポン、正解音とともに木の台に付いていた石状のものが鏡へと変わり、光の筋を反射させ先へと進めた。

 ちなみに、最初にボールを3つずつ載せた時点で天秤(てんびん)のどちらかが下がった場合、下がったボールの3つの内2つを1つずつ天秤(てんびん)に載せると、水平だった場合は残りの1つ、下がった場合はその1つが軽いボールだとわかるのだった。


「よし! 次の台もすぐに解いてやるぞ!」


 ジャクリーヌは気を良くして鼻息を()らげながら、勇者たちと2つ目の台に向かっていった。

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