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第80話 インガの塔2

 可愛(かわい)らしい少女は、長い空色の髪をツインテールに結び、空色のフリルのついた白いドレスに赤い肩掛けを身にまとっていた。


「そなたらが(とう)の装置を復旧させてくれたんじゃね? ご苦労じゃったね!」


 そう言いながらその少女は頭を下げた。


「なあこの子、見た目と雰囲気(ふんいき)に違和感を感じないか?」

「ああ、ワシも感じておった。なんというか、見た目以上に深みのようなものが(ただよ)っておるのう」


 ジャクリーヌとシモンがヒソヒソと話す。


小生(しょうせい)はビル(じい)さん、この(とう)の住人じゃよ!」

「なんと! お主がワシの師匠ペテルセンと文通をやり取りしておる、あのビル(じい)さんなんかのう! 想像とは全く逆の格好(かっこう)をしておるわい!」


 シモンは驚きのあまり、しばらく、口をあんぐりと開けたままであった。


「あたしはハーフエルフの僧侶イザベル。そっちが女戦士ジャクリーヌに、魔法使いのシモンよ。(とう)の外でいろいろやっていたら、雷が落ちてここまでの道がひらけたって感じでやってきたの」


 イザベルが、全員の紹介とざっとした説明を行った。


「シモン? そなたがペテルセンのとこのシモンなんじゃね?」

「そうじゃが、なぜお主がワシの名を知っておる?」


 ビル(じい)さんによると、シモンの師匠であるペテルセンとの文通の中で、よくシモンの名前が出ていたらしい。


「師匠がこのワシの事を! それは嬉しいことじゃのう!」


 シモンは展望台の窓から東側を向き、目を閉じて手を合わせている。師匠ペテルセンに感謝の意を表しているのだろうか? ちなみに、ペテルセンはまだ元気にピンピンしている。


「それで、そなたらのここに来た目的はなんなのじゃね?」

「あたしたちは、5つの魔石を追ってここにやってきたのよ!」

「この探求(たんきゅう)羅針盤(らしんばん)(たよ)りにな!」


 ジャクリーヌが探求(たんきゅう)羅針盤(らしんばん)を取り出すと、ビル(じい)さんはなにかに取り()かれたようにそれに近づいてきた。


「それは興味深い装置じゃね! 触らせてもらっても良いじゃね?」

「ああ、構わな……」


 ビル(じい)さんはジャクリーヌが返事をする前に、探求(たんきゅう)羅針盤(らしんばん)をひったくった。


「どうもこの(じい)さんは、リアと似ている気がするな!」

「あたしはリアよりも強烈な気がするわ! 興味のあるものへの食いつき方とかね!」

「似た者同士、話は合うじゃろうな!」


 3人が話していると、ビル(じい)さんは満足したのか探求(たんきゅう)羅針盤(らしんばん)をジャクリーヌに返し、元いた場所に戻っていった。


「そなたらが探しておる魔石とやらは、小生(しょうせい)が持っておるのじゃよ!」


 ビル(じい)さんは(ふところ)から魔石を取り出して(かか)げた。


「ああ、まさにそれだ! 探求(たんきゅう)羅針盤(らしんばん)の針がしっかりと指しているぞ!」

「これを(ゆず)っても良いが、交換条件に小生(しょうせい)の願い事を叶えてもらいたいのじゃよ」

「あたしたちにはそれを断る選択肢はないわ! その願い、叶えてみせましょう!」


 イザベルが意気込んで答えると、ビル(じい)さんはゆっくりと(うなず)いた。


小生(しょうせい)はここにどうやって来たのか、本当の名前がなんなのか覚えておらんのじゃよ……」


 ビル(じい)さんによると、以前は何処(どこ)かの大きな研究所にいたような気がするが、いつの間にかこの(とう)の最上階におり、ここから出られない(のろ)いを受けているらしいとの事だった。


「その少女のような格好(かっこう)は元々なの?」

「インガの(とう)の11階から20階には、年に1度魔物が出現し、増えすぎると小生(しょうせい)の魔力が失われ、このような少女の姿に変わってしまうのじゃよ」


 以前は定期的に冒険者が訪れ、魔物を駆除(くじょ)してくれていたが、50年前に大きな雷が落ちて以来、昇降機(しょうこうき)(こわ)れてしまい誰もこなくなって困っていたらしい。


「それならばワタシたちが、11階から20階にいる魔物共を倒せば良いのだな?」

「そうすれば、そなたらに魔石を(ゆず)るのじゃよ! ただしその方法は、一時しのぎでしかないのじゃよ……」


 ビル(じい)さんは(さび)しそうに話した後、押し(だま)ってしまった。


「ええい、ビル(じい)さんよ! そこまで言ったんなら続きを話さんか!」

「それなら話すじゃよ……」


 インガの(とう)の攻略法にはもう一つ方法があり、難易度は非常に高いが最上階から下るパーティーがその階の敵を全滅(ぜんめつ)させ出現したボタンを押す。すると、一番下の階の扉が開き、その部屋に(ほどこ)された(なぞ)を解くと上の階の扉が開く。これを繰り返して、中間の10階に両方のパーティーが辿(たど)り着き、協力して最終関門を突破することができれば、ビル(じい)さんにかけられた(のろ)いがとけるというものであった。


「しかも、開始から1(こく)以内、それぞれ4人しか入ることができんのじゃよ。さらに、途中で1人でも前の扉から戻ってしまうと失格となり、20年の間挑戦ができなくなるんじゃよ」


 ビル(じい)さんの話を聞き、3人は難しい顔をして下を向いてしまった。ちなみに、1(こく)とは約2時間の事である。


「ワシらで戦闘ができるのは、リアを(のぞ)いての4人……」

「2人ずつに別れるとすると、上からの戦闘班が難しくなるだろうな」

「リアを下からの(なぞ)解き班に入れたとしても、やはり難しそうね……攻撃の得意な4人の部隊でもいればいいんだけど……って、いるじゃない!」

『攻撃ゴブリン隊!』


 3人は人差し指を立てながら、同時にそう言った。


「それじゃあ、さっそく攻撃ゴブリン隊を呼び出すぞ!」


 ジャクリーヌは、赤の召喚(しょうかん)の玉を床に放り投げようと構えた。


「待って、ジャクリーヌ! その前にパーティー編成を決めておかなくちゃ!」

「だからお主は脳筋と言われるんじゃ!」

「誰が脳筋だ! クソジジイ!」


 話し合いの結果、上からの戦闘班は攻撃ゴブリン隊に任せ、下からの(なぞ)解き班は必ずしも安全ではないと考え、リアを(のぞ)いた勇者、シモン、イザベル、ジャクリーヌの4人のメンバーでパーティーを組む事にした。


「だが、リアがこれで納得(なっとく)すると思うか?」

「それは大丈夫よ! リアはここに連れてきて、ビル(じい)さんと会わせれば喜ぶはずだからね!」

「それじゃあお主らは下に降りて、リアにここへ上がるように伝えた後、ニコラちゃんと扉の前で待っておれ! ワシはリアがここに着き次第、攻撃ゴブリン隊を呼び出し、作戦の説明をした後お主らと合流する!」


 イザベルとジャクリーヌは昇降機(しょうこうき)の乗り込み、インガの(とう)攻略作戦は動き始めた。

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