第73話 リュクサンブール2
「ニコラちゃん師匠。出力弱めでお願いします」
「うん! わかった!」
小舟の後ろでリアが手動の舵を切りながら、勇者の水の力で魔石のある方向へ進んでいく。
「おっ! 針の向きが少し変わったぞ!」
「震えも大きくなったみたいね!」
水の力で小舟を動かしている勇者に代わり、ジャクリーヌが探求の羅針盤を確認にしている。それを、イザベルが後ろから覗き込んでいた。
「となると、魔石のありかはこの周辺じゃな。しかしこの辺は、屋根が出ておる建物があまりないのう」
「聖堂がない地域なんじゃないか?」
「いえ、おそらくこの辺りが街の中心部のはずです。他の区域より低くなっているのでしょう」
辺りを探っていると、1つだけ水面から突き出た屋根を発見した。
「魔石の位置は、その屋根の聖堂で間違いないようだぞ!」
「針もビンビンに震えているわね!」
その屋根は、四方に開いた展望台のようになっており、かなり大きな聖堂の一部であるようであった。
「じゃが、どうやってあの場所まで行くのじゃ? かなりの高さがあるぞい!」
「ボクが水の力で飛ばそうか?」
勇者が力こぶを作りながらそう言った。
「今回はこれを使いましょう」
リアは魔法のカバンから、鉤が先についた縄を取り出した。
「あっ、鉤縄だ! 忍者が使うヤツだ!」
「ニコラちゃん師匠、よくご存知でしたね。」
「それではワタシが先に行って、上から引っ張り上げてやろう!」
ジャクリーヌが豊満な尻を見せつけるようにして縄をよじ登っていく。
「物凄い迫力じゃのう!」
「あれはちょっとした凶器だわ!」
「ダイナマイトボディとはこの事なのですね!」
その様子を、エロじじいとエロエルフとエロ娘こと、シモンとイザベルとリアが見つめている。
「スク水で鉤縄を登るというのも、結構やりにくいものだな!」
ジャクリーヌは展望台まであとわずかという所で、左手の人差し指を使いお尻の食い込んだ部分をパチンと直した。
「おおっ!」
「ブラボー!」
「ナイスセクシー!」」
パチパチパチ、拍手と声援がエロい3人からジャクリーヌに贈られる。
「それじゃあお前たち、順番に上げてやるから縄に掴まれ!」
ジャクリーヌは、拍手と声援が登りっぷりが讃えられたものだと思っているようで、上機嫌にそう言った。
シモン、イザベル、リアと引き上げ、潮に小舟が流されないように水の力を使っていた勇者が最後に登り始めようとすると……
「あれ? 潮の流れが止まちゃったよ! どうしたのかな?」
「なんですって! それはいけません! ニコラちゃん師匠、急いでお登りください!」
勇者の声を聞き、先に登ってくつろいでいたリアが、急に焦りだした。
「うんしょっと! 到着!」
小舟が動かにように帆先を鉤縄の端で縛り、勇者はあっという間に展望台まで登ってきた。
「リア、何故急に焦りだしたんだ?」
「はい。おそらく、あと半刻ほどで引潮になるので御座います」
「そんなもの、ニコラちゃんの水の力があれば問題ないのではないか?」
「それが、大問題なのです」
リアの説明によると、スペルトゥーナという20年に1度の大潮は、1度に動く水の量が凄まじく、引潮の流れに乗ってしまうと勇者の水の力でも逆らうことができず、かなり沖まで流されてしまうだろうとの事だった。ちなみに、半刻とは約1時間のことである。
「しかも問題はそれだけではありません。凄まじい水の流れによって木や建物が押し流され、小舟が転覆してしまう可能性が高いのです」
「下手すると、この聖堂自体が倒壊してしまう事もあり得るわけじゃな!」
突然、勇者たちに緊張感が漂い始めた。
「つまりワタシたちは、半刻以内に魔石を見つけ出せば良いのだな!」
ジャクリーヌは、胸を張りながら得意げにそう言った。
「ジャクリーヌよ、なにを聞いておったんじゃ? だから脳筋と言われるんじゃよ! ゲオルゲのヤツも大変じゃのう!」
「誰が脳筋だ! クソじじい! だいたいゲオルゲは関係ないだろう?」
ゲオルゲは王都でのジャクリーヌの部下であるが、何故かいつも怒られてばかりなのであったのだった。
「ここから、馬車のある丘に戻る時間を考えますと、あと四半刻以内に魔石を見つけてここを出発しなければなりません」
リアはそう言うと、魔法のカバンから砂時計を取り出しセットした。ちなみに、四半刻とは約30分のことである。
「それでは、魔石を探しに向うとしましょう!」
リアを先頭にして、展望台から繋がる螺旋階段を下っていく。
「皆様、ここで作戦を伝えておきます。おそらく、この先の扉、もしくは1つ先の扉あたりから水中に入ることになるでしょう。そのポイントでジャクリーヌ様は待機して頂きます」
「たしかにワタシは泳ぎが苦手ではあるが、待っているだけなのか? なにか力になりたいのだが……」
ジャクリーヌは悔しそうに口唇を噛んでいる。
「いいえ、ジャクリーヌ様には重要な役割が御座います」
「ワタシに重要な役割だと!」
沈んでいたジャクリーヌの瞳に活力がみなぎった。
「私が蓋の開いた樽4つと、魔法の樹脂で作りましたホースを3つ、それと空気を送り込む手動ポンプを準備してきました」
「なるほどのう、ワシら潜水部隊が樽を水中に設置しホースをジャクリーヌの位置から伸ばす。それに空気を送り込み、息継ぎポイントを作るというわけじゃな!」
「そして、息継ぎポイントをかわるがわる徐々に伸ばしながら、魔石の場所に向うという事ね!」
作戦が伝わった所で、螺旋階段の終点に到着した。そこには、見るからに頑丈な鉄の扉があった。
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