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第71話 首都へ続く道5

「んっ? 遠くから何かが近づいてくる音がするよ!」


 クンが、勇者の(えり)巻きから顔をのぞかせながらそう言った。


「きっと、リアたちじゃな! ニコラちゃん、馬車に乗り移る準備をするぞい!」

駄目(だめ)だよ! ボクがここを離れたら、氷の壁ごと水が流れ込んできちゃうよ!」

「じゃがそれでは、ニコラちゃんが逃げられんではないか!」

「大丈夫! ボクに作戦があるんだ!」


 勇者がシモンに作戦を伝えていると……


「ニコラちゃん師匠ー、シモン様ー! 無事ですかー!」


 洞穴(どうけつ)の奥に、馬車の上から手を振るリアが見えた。よく見ると、イザベルとジャクリーヌがその両足を落ちないように必死に(つか)んでいた。


「ニコラちゃん、また後で海の上で会うぞい!」

「うん!」


 シモンはそう言うと、ルディの背に(またが)った。


「ルディ! シモンを馬車まで送ってきてあげて!」


 勇者がそう言うと、ルディはヒヒーン(うなず)くようにして馬車へと駆けていった。


 ルディが馬車を一旦回り込み、速度を合わせて横に並んで走っている。


「よし、ワタシの手に(つか)まれ!」

「ん……駄目(だめ)じゃ、届かんぞい!」

「急がないと! 時間がないわよ!」


 馬車は、氷の壁にどんどん近づいていく。


「えーい、仕様がない! イザベル、お前を使うぞ!」

「あたしを使うってどういう……きゃっ!」


 ジャクリーヌはイザベルの両足を(つか)み、シモンのいる馬車の外へと向けた。


「ちょ、ちょっと! なにしてるのよ!」

「今はこの方法しか無いんだ! じじい! イザベルに飛びつけ!」

「イザベル、頼むぞい! とりゃ!」


 イザベルはシモンの両手をガッチリと握った。


「ジャクリーヌ! 急いであげて! おじいちゃんの手、汗で滑りそう!」

「では、一気にいくぞ! せーの!」


 ジャクリーヌは2人を馬車の屋根に放り投げた。


「よし! 次はニコラちゃんの作戦を伝えるぞい!」


 放り投げられたシモンは素早く立ち上がり、作戦を全員に伝える。


「わかったわ! その方法でやるしかないようね!」

「タイミングじゃ! とにかくタイミングが重要なんじゃ! リアよ、合図(あいず)を頼んだぞい!」


 リアが(うなず)き、ジャクリーヌが剣を構えて馬車の前の方に陣取る。

 馬車が氷の壁までわずかの距離となった、そのとき……


「ニコラちゃん師匠! 今です!」


 勇者が海水を抑えていた力を解き、氷の壁の端から漏れてできた水たまりから、丸い水の玉を魔石の力で作る。


「いくわよ! 『マジックシールド!』」


 勇者が作った水の玉を、イザベルのシールド魔法で(おお)(かこ)む。そして、その中にある水を勇者が水蒸気へと変換させる。


「いくぞい! 『ファイアーボール!』」


 その玉に向かい、シモンが火の玉を放つ。


「どりゃぁぁあ!!」


 水の玉に火の玉がぶつかる瞬間、ジャクリーヌが水の玉を包み込むシールドを叩き割る。


 ドカーン! 圧縮されていた水蒸気と火の玉が混ぜ合わさり、大きな爆発を起こした。ジャクリーヌの剣の衝撃により、その爆発は全て前方の氷の壁へと向けられた。

 氷の壁は粉々に(くだ)け、向こう側にあった海水も爆発の威力で押し込まれている。


「皆様! しっかり(つか)まってください!」


 馬車はスピードに乗ったまま、海の中へと突っ込んでいく。リアがちらりと後ろを見ると、ルディに(またが)った勇者が馬車を追いかけてきていた。



「プハーッ! みんな大丈夫か!」

「思ったより深かったのう! 息が続かんのではないかと(あせ)ってしまったわい!」

「リアのお(かげ)で、早く上がれたから助かったのよ」


 馬車はリアのつけた装置の推進力(すいしんりょく)を使って、早く浮上することができたのであった。

 海が(にご)っているのもあるが、出てきた穴は水上から見ることはできないほど深くにあったようだ。


「皆様、お待ちください! ニコラちゃん師匠が見当たりません!」


 辺りを見回すが、他の誰かがいる様子はない。


「まさか、穴に入り込む海水に捕まったのか?」

「ジャクリーヌ! なにを言っているの! ニコラちゃんは大丈夫に決まってるじゃない!」

「ワシらは、信じて待つしかないのう」


 しばらく待つが、水面になにかが出てくる様子はない。


「やはり……ニコラちゃんは……」

「これだけ待っても、上がってこないなんてね……」

「ワシは……また後で……海の上で会おうと約束したのじゃぞ……」


 先ほどまであった希望の色が絶望へと変わっていく。


「わーん! ニコラちゃん師匠ー!」


 リアが、大声で泣き出した。


「なあに? 呼んだ?」

「へ?」


 声のした方を振り向くと、泳いでいるルディに乗った勇者と、(えり)巻きから顔を出すクンの姿が見えた。


「ニコラちゃん師匠、なぜそちらから?」

「海の中で水の力を使ったら、強すぎて遠くまで行っちゃったんだ! 戻ってくるのが大変だったよ!」


 勇者はそう言いながら、頭に手を当てペロリと舌を出した。泣いていたリアを、元気づけようとしているのであろう。


「それにしても、ワタシたちは本当にチュウソの穴を抜けきる事ができたのだな!」

「まあ、ギリギリだったけどね!」

「全員の力があってこそじゃな! もちろん、ルディやクンも含めてじゃぞ!」


 シモンはそう言いながら、ルディたちの方向に親指を立てた。


「とりあえず、早く陸に上がって風呂に入りたいぞ! ベタベタして気持ちが悪い」

(よろい)や剣をしっかり洗わなきゃね! このままじゃ()びちゃうわよ!」

「それじゃあ、陸に向かって装置の操縦を頼むぞい! 泣き虫リア!」

「もう! さっきのは(うそ)泣きですよ!」

「そんなに目を真っ赤にして言われてものう!」

『わっはっは!』


 いつもは馬車を引くルディが馬車に引かれて、リュクサンブールのある陸地へと向かっていった。

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