表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

69/122

第69話 首都へ続く道3

「それでは皆様、リュクサンブール方面に向かいましょう」

「それがじゃな、リアよ。進むのは難しいようなんじゃよ」


 シモンはリアに、リッツォから聞いた話を伝えた。


「戦闘が収まってから向うという方法もありますが……」

「あたしもそれを考えてんだけど、戦闘の規模(きぼ)からすると1ヶ月近くは続くと思うのよね……」


 向うべき場所はわかっているのに、進むことができない。もどかしさばかりが(つの)る。


「ねえ! リッツォさんが言ってた、チュウソの穴ってなあに?」


 勇者が暗くなっていた雰囲気(ふんいき)を突き破るように話しだした。


「それはのう、古代カダルトスで掘られたという、ここの北、デラクア山脈の手前から、リュクサンブールの海側まで繋がっておる洞穴(どうけつ)なんじゃ」

「あれ? そうだったら、チュウソの穴を通ってリュクサンブールに行けばいいんじゃないの?」


 勇者の言うことは、真っ当な意見であった。


「繋がっとる先が陸地ならばそうするんじゃが……実際は海底でのう、洞穴(どうけつ)の半分は海水が入り込んでおって通ることができんのじゃよ」

「それじゃあ、騎士団の人たちはなにをしにそっちに行ったんだろう?」

「!? ニコラちゃん師匠! 今の話、どういう事ですか?」


 勇者が、騎士団の部隊の一部が、北に向かった話をリアに伝えた。


「それは確実にチュウソの穴が関わっていますね! しかし、どうやって……」


 いつの間にか御者(ぎょしゃ)の席から降りていたリアは、ブツブツと(つぶや)きながら辺りを歩き回り出した。


「そんな考え事など無理だ! ワタシは空でも(なが)めているとするか」


 ジャクリーヌは地面に寝っ転がり、空を見ている。


「おお! よく見てみると、ニコラちゃんが言ってた通り、月がいつもよりでかい気がするなあ!」

「ジャクリーヌよ、お主、こんな時になにを言っておるんじゃ!」

「!? ジャクリーヌ様! 今なんと言われましたか?」


 歩き回っていたリアが、ジャクリーヌの言葉に突然反応した。


「月がいつもよりでかい気がするなあ、と言ったんだが、それがどうかしたのか?」

「そうです! 月が答えです!」


 リアはそう言うと、ゴーグルに細長いレンズを取り付け、月を観察(かんさつ)し始めた。


「リアよ、月が答えとはどういうことなんじゃ?」

「古代カダルトスについて書かれた書物に、ピニツォット文字でこういう1文があったので御座います……『チュウソの穴は、20年に1度だけ全てが(つう)じる』と」


 リアはゴーグルをはずして、人差し指を立てながらそう言った。月の解析(かいせき)が完了したのだろう。


「20年に1度だけ……大きな月……騎士団の行方……!? スペルトゥーナ!」

「さすがシモン様。そう、今日がまさに、20年に1度のスペルトゥーナなので御座います」


 御者(ぎょしゃ)の席に戻りながら、リアは話した。


「スペルトゥーナってなに?」

「ニコラちゃん師匠、今は時間がありません。チュウソの穴に向かいながら話をするといたしましょう」


 勇者たちは馬車に乗り込み、北のデラクア山脈の手前にあるチュウソの穴に向かい出した。手綱(たづな)を握るリアは、少し(あせ)っているように見えた。

 馬車の進む方角をチュウソの穴に合わせると、リアは手綱(たづな)をクンに任せ話を始めた。


「スペルトゥーナとは20年に1度だけ、この星に月が最も近づく現象の事なので御座います。その際は、干満(かんまん)差が非常に大きくなり、その時こそ『チュウソの穴は、20年に1度だけ全てが(つう)じる』の一文の通りとなり、通り抜けることが可能になるのだろうと思われます」


 リアは推測として話しているが、その様子には自信のようなものが(うかが)われた。


「チュウソの穴が開通する時間は、おそらく本日の正午からの1(こく)前後。急がねばなりません」


 空を見上げると、太陽は真上に来る寸前、つまり、正午を迎える直前であった。リアが(あせ)っていた理由は、この事であったようだ。ちなみに、1(こく)とは約2時間の事である。


「じゃが、ルディの足が速いとはいえ、そんな時間でチュウソの穴を抜けることができるのかのう?」

「それはおそらく大丈夫です。ここまでの道のりが下りでありましたし、穴の抜ける先は普段は海底の場所。ずっと下り道が続くはずで御座います」


 リアはそう言いながら、馬車の屋根の上へと登った。


「リア、どうしたの? 馬車の上になんか登って?」

「はい。時間的に、かなり(きわ)どいものとなると思われますので、そのための準備をしておきます。皆様も、いつでも動けるような体制をとっておいてくださいませ」


 カンカンカン、馬車の上から作業をする音が聞こえてくる。リアはなにかの装置でも作っているのだろうか?


「リア、穴が見えてきたよ!」


 手綱(たづな)を握るクンが叫ぶ。その声を聞き前方を見ると、馬車2台が並んで入れるくらいの洞穴(どうけつ)があった。チュウソの穴が近づき、緊張(きんちょう)感も高まっていく。


「それじゃあ、入るよ!」


 チュウソの穴に入ると、空気がひんやり冷たいものに変わった。


「馬車の中でもヒヤッとするわね。リアもクンも寒くない?」

(わたくし)は作業中ですから、丁度いいくらいです。クンさんはどうですか?」

「ぼくは人間と違って温かい毛があるんだよ! こんなのへっちゃらさ!」


 しばらく、(ゆる)やかな下り道を進んでいると、地面が湿り気を帯びてきた。


「地面にかなりの数の足跡(あしあと)があるわね」

「という事は、騎士団がここを通っていったのじゃな!」

「よし! ここからリュクサンブールに抜けられるというのは、間違いないようだな!」


 馬車の中の、シモン、イザベル、ジャクリーヌ、勇者の4人は互いに拳を突き合わせた。


「しかし、こんな所まで水が上がってくるのですね」

「そうじゃのう。海の引き幅が大きいということは、それだけ満ち幅も大きいわけじゃからのう」

「しかも下り坂で……あたしたちは先に進むことはできるけど、後ろには戻ることができないというわけね……」


 イザベルの一言で、緊張(きんちょう)感が一気に高まった。

お読みいただきありがとうございます!

続きが気になる、面白い!と思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!

このページの下にある、

【☆☆☆☆☆】をタップすれば、ポイント評価出来ます!

ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=818740172&size=135  ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ