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第68話 首都へ続く道2

「かなり速いペースで進めておりますので、もうそろそろ東西の境界(きょうかい)線の位置に到着するかと思われます」


 リニシイージャを出発して以来、なだらかな下り坂が続いており、かなりの速度を(たも)ったまま馬車は進んでいた。


「リアよ。お主、手綱(たづな)を握りっぱなしで、ろくに休憩(きゅうけい)もしておらんのじゃろう。大丈夫かのう?」

「違うよ! ぼくだよ!」


 なんと、手綱(たづな)を握っていたのはクンであった。馬車を走らせながら、リアから操縦技術を学んでおり、クンの腕もかなりのものになっていたのだった。


「いけません! クンさん、一旦馬車を停めましょう!」


 リアが(あわ)てた様子で指示をだし、クンが馬車を急いで停める。


「一体どうしたというんだ?」

「何事じゃ?」


 勇者たちも(あわ)てるようにして、馬車を降りる。するとリアは、ゴーグルに双眼鏡(そうがんきょう)装着(そうちゃく)して進行方向の先を(のぞ)き込むように見ていた。


境界(きょうかい)線と思われる地点に、かなりの数の人影と複数の馬車が集まっています」

「もしや、リュクサンブールの兵士か?」

境界(きょうかい)線の地点までは、非戦闘地域のはずじゃ。もしや、リニシイージャから出た騎士団ではないのかのう?」


 シモンの言葉を受け、リアが様子を探っている。


武装(ぶそう)した兵士の方はいらっしゃいますが、魔石の部屋で見たほどの重装備ではありませんし、少数の護衛(ごえい)の兵士が混ざっているだけのようにお見受けしますが……」

「あれが敵であれ味方であれ、リアは馬車でこの付近に隠れているんだ。ワタシたちであの地点に向うぞ! ただし、攻撃されようがなにかされようが、武器は絶対に取るなよ! いいな!」


 ジャクリーヌは1人1人の目を見ながら、確認するようにしてそう言った。


「ジャクリーヌ、その理由あたしたちはわかっているけど、ニコラちゃんにはちゃんと説明してあげないと駄目(だめ)よ」


 ジャクリーヌの説明によると、魔物や野盗が相手ならば問題ないが他国の兵となると、一国の近衛(このえ)騎士団長である自分が仲間としているため、手を出してしまうと国際問題に発展する可能性があり武器を持つことはできないとの事であった。


「先のことも考える必要もあるけど、まずアレが何者かを確認しないとね!」

「それでは、警戒しながら普段どおりで行くぞ!」


 できるだけ相手を刺激しないようにするため、イザベルを先頭にして境界(きょうかい)線の地点に向う。すると、こちらに気付いた1人の男が、護衛(ごえい)も付けずに近づいてきた。


「皆様、メーリングの町におられた旅人の方ですよね?」

「たしかにそうだけど、あなたたちは?」


 いつでも馬車に向かって駆け出せるように、警戒(けいかい)したままイザベルは言葉を返した。


「我々はロレンツォ様の名より、リュクサンブールへの物資を運んできた部隊の者です。私はこの部隊長のリッツォ、宜しく皆様!」


 リッツォは、羽織(はお)っているマントを止めてある、右肩の大きなボタンを親指で指し示しながらそう言った。


「その紋章(もんしょう)は、ボゼッティ家のものね!」


 それを確認すると、勇者たちは警戒(けいかい)を解いた。馬車や護衛(ごえい)の兵士たちの(よろい)を見てみると、ボゼッティ家の家紋(かもん)があちこちにあり、リッツォたちは味方である事がハッキリとわかったためだった。


「リッツォよ。お主たちは、いつからここにおるんじゃ?」

「昨日の夕暮れの頃に到着して、ここで野営をしておりました。もう物資を受取る部隊が来るべき時刻は過ぎておりまして、どうすべきかとロレンツォ様の指示を待っていた所なのです」


 部隊員たちの様子は、伸びをしたりあくびをする者が見受けられ、かなりの時間待たされているようであった。


「それにしても、お月様大きいね!」


 勇者は、リッツォが遠くを見る仕草をしたのに釣られて空を見上げた。そこには昼間だというのに、大きなまん丸の月が少し赤みがかった白い色をして出ていた。


「そうか? ワタシは月の満ち欠けは気になることはあるが、大きさは気にした事がないからなあ」

「あれ? なにか白いのが飛んでくるよ!」


 空を見ていた勇者が、西の空から飛んでくるものを見つけた。


「おおっ! 指示が届いたようです!」


 リッツォは口笛を鳴らした後、右手を(なな)め上に突き出した。すると、白い(はと)がリッツォが突き出した腕に止まった。


「よしよし、お疲れ様!」


 リッツォは右手に握っていた穀物(こくもつ)(えさ)(はと)に与えながら、左手で(はと)に足につけられた(つつ)の中にある紙のようなものを取り出した。


「ふむふむ、そういう事か……みんな、引き上げるぞ! 今回の引き渡しは中止だ!」


 部隊員たちはその声を聞くと、野営の片付けを始め、町に戻る準備に取り掛かった。


「皆さんも、西に引き返した方がいいですよ」

「どういう事じゃ? ワシらは東に、おそらくリュクサンブールに向かわねばならんのじゃが」

「詳しく話すことはできませんが、リュクサンブールを中心に広範囲で戦闘が始まる、もしくは始まっているようなのです」


 リッツォは手を()えて、部隊員たちには聞こえないように話した。


「そうだ! おじいちゃん、サラさんたちの話を聞いておかなくちゃ!」

「そうじゃったのう! してリッツォよ、朝方にここを重装備の騎士団が通らんかったかのう?」

「なんと皆様、極秘作戦をご存知だったのですね! その騎士団をきっかけに首都への総攻撃が行われるのです!」

「やはり、そうじゃったのか!」


 極秘作戦など知らなかったが、情報を引き出すためにシモンは話を合わせることにしたようだ。


「ただ1つだけ不思議(ふしぎ)な事がありまして……騎士団の部隊の一部が、北に向かったのです。そちらには、デラクア山脈とチュウソの穴しかないというのに……」


 リッツォは部隊を引き連れて西へと戻っていき、勇者たちは手を振りながら見送った。そして、入れ替わるように待機(たいき)していたリアが馬車でやってきた。

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