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第65話 名もなき村5

「魔法のランプが点いたという事は、村の人々に信仰(しんこう)心が戻ったということじゃな!」

「そのようですね。魔石のある扉の部屋に行ってみましょう!」


 部屋に向かっている間にも、魔法のランプが次々と光を放ちだしていた。


「きっと、さっきの女から村中に教えが広まっているのだろうな!」


 扉の前につく頃には、夜になっても問題ないほどの明かりに(おお)われていた。


「扉も光っているわね! あらっ? (ふち)の文字まで光ってて、欠けていた部分も全部読めそうじゃない?」

「えーとですねえ……『建物の機能は、信仰(しんこう)の心により満ち(あふ)れた希望によってのみ動き出す』と書かれています」


 ゴゴゴゴ、リアがその言葉を(はっ)すると、扉が大きな音を立てながら開き出した。その言葉は扉を開く合言葉だったようだ。部屋の中は(やみ)(おお)われており、中の様子は全く見えなかった。


「よし! この中に魔石があるはずだ! みんな行くぞ!」


 ジャクリーヌを先頭に、(わな)警戒(けいかい)しながら部屋の中に入っていく。


「なんだこれは?」


 部屋に入ると、取り(かこ)むように視線のような光がこちらを見ていた。


「ビックリさせやがって。(よろい)の像ではないか!」

「それにしても、なんじゃこの数は!」


 部屋はかなり広い扇形(おうぎがた)になっており、中心を取り(かこ)むように剣や(やり)などの武器を持った(よろい)の像が目を光らせていた。


「はっ! (わたくし)、思い出しました。カダーロ教聖地は、初代勇者様とともに戦った戦士の末裔(まつえい)の方によって作られたので御座います」

「つまり、この村の人々はその戦士の子孫(しそん)という事じゃな!」

「まあそれを考えれば、これだけの武器や防具があるのも理解できるな」


 (よろい)に見つめられながら、部屋の中央へと進んでいく。


「ニコラちゃん師匠。探求(たんきゅう)羅針盤(らしんばん)はどうですか?」

「うん! そこの台座にあるのが魔石みたいだよ!」


 勇者が手に持つ探求(たんきゅう)羅針盤(らしんばん)の針は、魔石を指し示し、激しく震えていた。

 台座の前に立ち、魔石に手を伸ばす勇者。


「これで、5つの魔石の3つ目だね!」


 勇者たちは3つ目の魔石を手に入れた。勇者は全員に見えるように、魔石を高く(かか)げていた。


「それにしても、今回は無理じゃと思っておったわい!」

「まさか、ニコラちゃんの演劇が(かぎ)となるとはな!」


 冗談(じょうだん)めかして話しているが、勇者が起こす奇跡の力を感じ取り、鳥肌が立っているようだ。


「本当の所ナレーションを読みながら、なにやってるんだろうあたし? って思っていたわ!」

「ワシもじゃよ! じゃが、演じるというのも面白いものじゃったのう!」

「ワタシなんか、楽しくてクセになりそうだったぞ!」

「それでしたら、王都に劇団を作られては? 王国華撃(かげき)団というのはどうでしょう?」

「それは洒落(しゃれ)ていていいな!」

『わっはっは!』



 聖堂から出ると、馬車の周りに人が集まっていた。


「なんと! こんなに人がおったのじゃな!」

「でも何故(なぜ)だ? さっきまでボロボロの服を着ていたのだがな」


 人々は(はな)やかなドレスや装飾品(そうしょくひん)を身に付け、辺りには色とりどりの提灯(ちょうちん)が吊り下げられていた。


「皆様、戻られたのですね。私はサラ、この地で団長をしている者です。あなた方のお(かげ)で、我々は光を取り戻すことができました。その御礼(おれい)にと、(うたげ)の準備をしておりました」

「それよりお主、見事なドレスを着ておるが、それはどうしたんじゃ?」


 サラは、演劇場で見かけたときとは違い、見事な刺繍(ししゅう)(ほどこ)された布で身体を包み込み、肩から下げるようにして着ていた。


「我々に活力が(みなぎ)るとともに宝物庫が開きまして、この(うたげ)に備えてこの地に伝わる伝統衣装に着替えました。それより、我らが御神体(ごしんたい)の黒猫様はいずこに?」

「ぼくはここだよ!」


 クンが勇者の(えり)巻きから顔を出しながらそう言った。


「黒猫様だ!」

「黒猫様がいらっしゃった!」


 クンはいつの間にか祈りを(ささ)げる人々に(かこ)まれ、豪華(ごうか)神輿(みこし)に載せられて、(うたげ)会場の(おく)の王様が座るような席に連れられていった。その席の前には、クンの好きそうな魚料理で埋め尽くされていた。


「皆様もこちらの席へどうぞ」


 勇者たちはサラの案内に続き、クンが座る席から3段ほど低くなった隣の席に座った。


「旨そうな料理ばかりだな。しかし、肉が無いのはなぜなんだ?」

「ジャクリーヌ様。カダーロ教徒の方は、一切肉をお食べにならないのですよ」

「お主、そんな事も知らんのか? じゃから、脳筋(のうきん)などと呼ばれておるんじゃ!」

「誰が脳筋(のうきん)だ! くそじじい!」


 いつもの調子で喧嘩(けんか)を始める2人。しかしこれも、魔石が見つかったからこそできる事だと思うと、微笑ましく見えてしまう。


「ねえ、サラさんたちはお肉食べないの?」


 上の席からクンがサラに話しかけた。首輪は青色に光っており、勇者の言葉のようだ。


「我々に神は存在せず、黒猫様を御神体(ごしんたい)とさせて頂いておりますので、肉を禁止する必要はなくなりました。しかし、肉自体がここにありませんもので……」

「それでは、(わたくし)たちで肉料理を準備いたしましょう」


 リアは勇者とともに立ち上がると、クンも勇者の肩に飛び乗り、馬車に向かって駆けていった。

 しばらくすると、中央にある舞台の方から拍手が聞こえたかと思うと、不思議(ふしぎ)音色(ねいろ)がなり始めた。それに合わせて、周りの人々も(おど)りだす。


「ほう、これまた幻想(げんそう)的な音色(ねいろ)じゃのう!」

「やはりあの、ギターと太鼓のような楽器もこの地に伝わるものなのか?」


 持ち手の異様に長いギターのようなものを女性が、指や手の腹を使って叩く小さめの太鼓のようなものを男性が(かな)でていた。

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