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第62話 名もなき村2

「もうさ、村の事は放っておいて、魔石を探しましょう!」

「それもそうじゃのう。ワシらは魔石さえ見つかれば、それで良いんじゃからのう!」

「それでは、ニコラちゃん師匠。先頭をお願いしてもいいですか?」

「任されて!」


 探求(たんきゅう)羅針盤(らしんばん)を持った勇者を先頭に、聖堂の中に入っていく。


「暗いと思ったら、意外と明るいな!」

「ステンドグラスから差し込む光のお(かげ)のようじゃのう!」

「ただ、探索(たんさく)ができるのは、太陽が空にある間だけのようね!」


 あちこちに色鮮やかなステンドグラスがあり、魔法の国へでもやってきたような気分になる。


「ニコラちゃん、ちょっと待つのじゃ。地下に降りたのでは、暗くて探索(たんさく)などできんのではないか?」


 先頭を行く勇者が、地下へと下る階段を降りようとしていた。


「大丈夫みたいだよ! ここの下は明るいみたい!」

「なんじゃ、この明るさは! どうなっておるんじゃ?」


 階段を降りると、天窓から入った明かりを(かがみ)で反射させた光が辺りを照らしていた。そして、通路の壁には明かりを(とも)すランプのようなものが等間隔にあった。


「これは、計算し尽くされて作られたもののようですね。今は動いていないようですが、壁のランプは太陽の明かりをエネルギーとして光を(とも)す、魔法のランプのようです」


 魔法のランプを見つめながら、鼻息を荒くするリア。魔法のランプの仕組みも凄いが、その仕組みをひと目で見抜いたリアはもっと凄い。


「それにしても、階段や梯子(はしご)を登ったり降りたりと、まるで迷路(めいろ)のような構造(こうぞう)をしているな!」

「ワシなんか、今何処(どこ)におるのかさえわからんぞい!」

「あたしは、どの階にいるのかも把握(はあく)できてないわ!」


 時折、外に出て聖堂同士を交差する階段があったが、複雑(ふくざつ)に絡み合っていたため、高さを把握(はあく)することも難しい状態であった。


「ニコラちゃん師匠。魔石の位置はわかりそうですか?」

「それがね、さっきからかなり近くにあるみたいなんだけど、針がグルグル回って迷ちゃったみたいなんだ!」

「よく考えてみれば、探求(たんきゅう)羅針盤(らしんばん)では平面的にしか魔石を探れないのだな」

「これだけ階層が複雑(ふくざつ)になっておる場所では、魔石の位置を特定する事など難しいのかもしれんのう」


 どうすべきものか考えてみるが、特に良いアイデアも出てこなかった。


「それじゃあさ、今回の探索(たんさく)(あきら)めて、一旦馬車の場所まで戻らない?」

「そうじゃのう。帰りの時間を考えると、そろそろ戻り始めんと太陽が(しず)んで、(やみ)の中身動きがとれんようになってしまうじゃろのう」

「それには心配及びませんよ!」


 リアが(ひたい)に着けているゴーグルを、目の位置に装着(そうちゃく)しながらそう言った。


(わたくし)が、曲がり角や上り下りをする(ごと)に、印をつけておいたのでございます」


 両手を腰に当てながら、意気揚々(いきようよう)とリアは言った。


「なんと、それは助かるのう!」

「だが、旧カダーロ教聖地とはいえ、落書きはいけない事だと思うぞ」

「ジャクリーヌ様は、(みょう)な所だけ真面目(まじめ)なのですね。しかし問題ありません! 1日で蒸発(じょうはつ)してなくなる特別な塗料(とりょう)使っていますし、このゴーグルを通さなければ見ることもできないのですからね」


 リアの付けた印のお(かげ)で、来た時間の半分ほどで馬車まで戻る事ができた。


「馬車に戻ったら夕食だと思っていたが、まだ結構時間があるようだな」


 ジャクリーヌが空を見上げると、太陽は正午と日没の真ん中位にあった。


「よく考えたら、ワシら昼食を食っておらんかったんじゃのう」

「でも、今からガッツリ食べたんじゃ、夕食が入らなくなるわよ」

「それじゃあ、ボクが軽いものでも作ってくるね!」


 勇者が厨房(ちゅうぼう)に向うと、当然のようにリアもついて行った。



「できたよ! どうぞ召し上がれ!」


 勇者とリアは、両手に黄色い棒状のものを持っていた。それを、シモン、イザベル、ジャクリーヌに配る。


「……それでは、手をあわせられんが……いただきます!!」

「いただきます!!」


 シモンの号令(ごうれい)につづき、いただきますの合唱(がっしょう)をしたあと、さっそく、右手に持たれた黄色いものにかぶりつく。


「この甘味とショッパ味、とうもろこしに醤油(しょうゆ)を塗って焼いたものじゃな!」

「メーリングの町の地下街で手に入れた、立派(りっぱ)なとうもろこしがあったから、焼きとうもろこしにしたんだよ!」


 勇者いわく、とうもろこしを皮付きのまま水から()でるのが、ふっくらジューシーに仕上げるポイントらしい。


()げ目の部分が香ばしくて旨いな! 中から(あふ)れる甘い汁と、焼けた醤油(しょうゆ)が合わさって、かぶりつくのをやめられなくなってしまったぞ!」

「バター醤油(しょうゆ)で焼いてるから、しっかりとした満足度もあるでしょ! ボクのいた国では、お祭りの時に歩きながら食べたりしてたんだよ!」


 そう話す勇者は、笑顔で(あふ)れていた。お祭りで焼きとうもろこしを食べるのが、大好きだったのだろう。


「本当に醤油(しょうゆ)というものは素晴らしいものですね。塗って焼くだけで、味はもちろん香ばしい香りで、料理を2段階も3段階も上のものに変えてしまいますね」


 全員、1粒も残さずに綺麗(きれい)に焼きとうもろこしを(たい)らげた。


「はあー、旨かったのう!」


 シモンは口の周りについたバター醤油(しょうゆ)を、旨そうに()めながらそう言った。


「まだ、魔石を探索(たんさく)する時間はあるが、どうする?」

「今、中に(もぐ)ったんじゃ、出てくる前に日が暮れてしまうわよ」


 イザベルの言う通り、先程、中に入って戻ってきた時間では、完全に日が暮れてしまいそうであった。


「あっ、そうだ! あれを使おうよ!」

「ニコラちゃん師匠。あれとはなんでしょうか?」


 勇者は(ふところ)に手を入れ、ゴソゴソとしている。


「これだよ、これ!」


 勇者は、赤、青、緑に輝く、3つの小さな玉を取り出した。


「それはもしや、召喚(しょうかん)の玉じゃな!」

「うん! そうだよ! 忍びゴブリン隊を呼び出そうと思うんだ!」


 それは、ゴブリン部族の森でゴブリン部族王から魔石と共に貰った、3種類のゴブリン部隊を呼べる、召喚(しょうかん)の玉であった。

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