第59話 メーリングの町2
「ワシら、罠にでもハメられとるんじゃないかのう?」
「大丈夫よ、おじいちゃん。下の方は明るいみたいだから」
シモンは王都の『星三つ』での一件を思い出し、警戒しているようだった。
勇者たちは階段を降りていく。少しづつ、人で賑わうような声が聞こえてくる。
「わあー! 人がいっぱいいるね!」
「これは商店街のようですね。それも、かなりの広さのようですよ」
降りてきた場所は、丁度、商店街の角だったらしく、正面と右側に店の列が伸びていた。
「お客さん、そこから降りてきたと言うことは、町の外から来た人だね。ここで買い溜めしておかないと、物資を調達できる場所はほとんどないよ!」
正面の果物屋の店主が、元気な声で話しかけてきた。白いハンチングハットをかぶり、赤いエプロンには、大きくリンゴの絵が筆で勢いよく描かれていた。
「店主よ、今の話を詳しく聞かせてもらってもよいか?」
果物屋の店主のよると、リュクス神聖国でまともに物資が手に入るのは、ここメーリングの町と、国の北の果てにあるジンドルフの村だけらしい。ジンドルフの村は、この町から海岸沿いを伝って北上した所にあり、この国で安全が保証される場所は、その2つの町と村と、それを繋ぐ道だけであるとの事だった。
「その地域が安全なのも、全てボゼッティ家が目を光らせているお陰なんだよ。この町が大きくなったのはボゼッティ家というより、ロレンツォ様のお陰だね! 知ってるかい? この町は、10年前までは小さな漁村だったんだよ!」
リュクス神聖国は、東部と西部で大きく状況が違っていた。西部は先程の地域以外も、比較的安全であり野営も問題なく行えるが、東部はそうではなかった。特に、この町から東に進んだ先の、国の東の果てにある首都リュクサンブール付近では、事ある毎に戦闘が行われ、常に危険な状態であった。そのため、首都に暮らしていたほとんどの住人が、難民となってこの地に流れ着き、それに手を差し伸べたロレンツォにより、メーリングの町が生まれたのであった。
「ロレンツォはすごいヤツじゃのう! まさか、こんな大きな町を1つ作ってしまうのじゃからな!」
「世界有数の大商人と呼ばれるのも頷けるな!」
ロレンツォがすごい人物であるということを、再認識する勇者たち。
「ただ1つだけ不思議な事がありまして、私共が難民として流れ着いたときには、すでに、この町が出来上がっていたのです!」
ロレンツォは、そうなる事を見越していたのだろうか? それとも、たまたま作っていたものを生かしただけなのだろうか? どちらにしても、先を見通す目はかなりのものであろう。
「店主様にお伺いしたいのですが、この商店街は、どの位の広さなのでしょうか?」
リアが見渡す限り、通路の終わりの部分が見えない程の広さはあった。
「町の大きさと、同じだけの広さがあります。といっても、全てが店舗ということではなく、倉庫や工場も入っているのですよ」
「なるほどです。もう1つ伺いたいのですが、町の皆様もこのパスを利用して、ここの出入りをされているのでしょうか? よろしければ、仕組みを聞かせて頂きたいと思いまして」
リアの知識欲に火が点いてしまったようだ。
「申し訳ありませんが、私はその手の事には疎くて……この先の8つ目の角にある、パス修理屋の店主さんに聞いてもらえますか?」
「そうですか。それでは、皆様参りましょう!」
リアは鼻息を荒くしている。一刻も早く、パス修理屋の店主から話を聞きたいのだろう。
「ねえねえ、おじさん。この町の東側には、なにがあるの?」
リアが出発しようとした所で、勇者が5つの魔石の3つ目があるであろう場所の情報を尋ねた。店主の答えに、全員が注目する。
「……いえ、町の東側にはなにもありませんよ。それでは、私は店番に戻りますので。それでは……」
今までの雰囲気とは明らかに異なり、店主の様子が可怪しいことは全員が気付いた。一体、どういう事であろうか?
パス修理屋に向う間にも、買い物客や店の人に町の東側について尋ねたが、全ての人がなにもないと答えた。しかも、果物屋の店主が答えたように、妙な間があったりと不可解な点が多かった。
「これは、町の東側になにかがあるのは間違いないようじゃのう!」
「しかもそれは、秘密にしなければならないもののようね」
しばらく進むと、8つ目の角に到着した。
「ねえ! パス修理屋さん、あそこじゃない?」
勇者が指差す先を見ると、「パス修理承り〼」と書かれたのぼり旗が、4本立ててある店があった。
「あれ? お店の中、真っ暗でなにも見えないよ!」
「どういう事かのう? とりあえず、中に入ってみると……痛っ! なんじゃこれは?」
シモンが店の中に入ろうとすると、見えない壁にぶつかってしまった。
「この壁、魔力の反応は無さそうじゃな」
シモンは、壁にぶつけた鼻を擦りながらそう言った。
「でも、どうやってお店に入ればいいのかしらね?」
「やはり、このパスなのでしょうか?」
パスを持ったリアが、恐る恐る壁がある場所に近づいていく。すると……
「いらっしゃい。パス修理屋にようこそ来なさった」
真っ暗で見えなかった店内が急に明るくなり、カウンター越しに魔法使いっぽい紫色のローブを纏った、これまた白髪白髭の魔法使いっぽいおじいさんが出迎えてくれた。
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