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第41話 王都リットベルガー6

「こっち側の通路は豪華(ごうか)じゃのう!」

厨房(ちゅうぼう)側とはぜんせん違うわね!」


 キョロキョロしながら、王の進む方向について行く、勇者たち。


「そういえば、どうやってリアはさらわれたんだ?」

「はい。(わたくし)未知の香辛料に目を奪われ、いつの間にか、イザベル様たちとはぐれてしまったことに気付いたのでございます。近くを歩いておられた殿方に、お話を伺おうとした所、急に後から袋のようなものを被せられ、連れ去られてしましました」

「なるほどのう! リアが1人になるのを、そやつらはずっと狙っておったんじゃろうな!」

「すまない、リア! ひどい目に合わせてしまって!」


 リアに向かって、頭を下げるジャクリーヌ。


「頭をお上げください、ジャクリーヌ様。無事に助かったことですし……それ以前に、(わたくし)が皆さんとはぐれなければ、このようなことはおこらなかったのですからね」


 ジャクリーヌを気遣うリア。それにより、ジャクリーヌの顔にも少し明さが戻ったようだ。


「お前たちには悪いが、結果的にリアが間違ってさらわれてよかったのだ! 王女1人では、魔術具(まじゅつぐ)加勢(かせい)を呼ぶことはできても、中に引き込むことはできなかっただろうからな!」


 王が話に入ってきた。王の言葉は合理的であったが、勇者たちにとっては、素直に聞き入れられないものであった。


「それとわかっていると思うが、ゲオルゲたちを帰らせた時点で、(わし)は国王ではなく、ただのパウルだからな! 敬語もやめろよ!」


 勇者たちが、微妙(びみょう)な空気になっているのも構わず、話を続けるパウル。


「パウルよ! お主は何故(なぜ)、あの場におったんじゃ?」


 シモンが(たず)ねた事は、全員が抱いていた疑問であった。


「その答えは、この扉の中にある!」


 通路の角を曲がると、豪華(ごうか)な大扉が目の前に現れた。それは、白い扉に金の装飾(そうしょく)がこれでもかとされており、金の扉と言ったほうが正しいかもしれない、そんな扉であった。


「こんな頑丈(がんじょう)そうな扉、鍵がなければ入れそうにないわね!」

「鍵なら(わし)が持っておる! さっきハンスの(ふところ)から、頂いてきたところだ!」


 パウルが手に持つ鍵は、そこら中に細工が(おどこ)され、正面の大扉に見合うほどの豪華(ごうか)さであった。


「パウルよ! 一国の王が盗みなどしおってからに!」

「だからさっきも言っただろ? 今の(わし)は国王ではなく、ただのパウルだ!」


 パウルは、その鍵を使い、扉を開いた。


「ここは、ハンスの部屋だ! お前らも早く入れ!」


 その部屋は、金で細工を(ほどこ)された高級な家具や、高級な革を使ったソファやカーペット、さらには絵や(つぼ)などの美術品がセンスよく置かれていた。


「これはすごいわね! ザ・金持ちの部屋という言葉がしっくりくるわ!」

「ハンスは、こんなところに住んでいたのか。ワタシはこんなギラギラした部屋では、落ち着いて眠ることもできそうにないぞ!」


 なんやかんや言いつつ、部屋を見回す。


「お前たち、気付いたか? この部屋には窓がないんだ!」

「たしかにパウルの言う通りじゃのう! しかしそれが、どうしたというんじゃ?」

「……あっ!」


 ジャクリーヌはなにかを話そうとして、途中でやめてしまったようだ。


「ジャクリーヌ、お前も話すべきだと思っているのだな。10年前の出来事(できごと)を……」

「国王……いや、パウル。この先に進むには、10年前の出来事(できごと)を知っておかなければならない! ワタシはそう思う」


 ジャクリーヌはパウルの目をしっかりと見ながらそう言った。


「やはりそうか……では、お前たちに昔話をするとしよう! 10年前のな……」


 パウルはゆっくりと話しをはじめた。


「10年前、ある事件が起こる前、商業二大巨頭(きょとう)はハルトマン兄弟のものだった。弟のハンスが『星三(ほしみっ)つ』を、兄のラルスが『ホテルラルス』を経営していた」

「『ホテルラルス』は今の『ザ・パウル=ハインツ王都』のことだ。あの頃のワタシは、近衛(このえ)騎士団でもなく、ただの一兵卒(いっぺいそつ)だった」


 そのときの出来事(できごと)を思い出しているのか、ジャクリーヌは、目を細めている。


「ハルトマン兄弟は大商人であったが、皆に優しく、家族思いで(えら)ぶることなどなかった。(わし)はそんな2人を気に入り、月に1度、城に(まね)いては食事会を開いていた。いつの間にか王女もその会に加わるようになり、ラルスと仲良くなっていた」

「王女様はラルスの事が大のお気に入りでな、パウルが嫉妬(しっと)しているという(うわさ)が、城の中で広まっていた(くらい)だったんだ」


 パウルもジャクリーヌも、楽しそうに思い出話をしている。それほど良い思い出なのだろう。


(わし)嫉妬(しっと)などしておらんぞ! 少し(わし)にも甘えてほしいと思っていただけだ!」


 パウルの口から本音がポロリと飛び出した。


「事件の3ヶ月前、食事会にハンスが参加しないようになった。丁度(ちょうど)仕事が忙しかったのだろうと思っていたが、次の月もその次の月も、ハンスは来なかった」


 パウルの顔が急に曇り始めた。


「ラルスに(たず)ねてみると、3ヶ月ほど前に腹違いの弟だと名乗るものがやってきたらしい。その男は、『星三(ほしみっ)つ』に住み着くようになり、次第(しだい)にハンスの様子が可怪(おか)しくなっていったと言うのだ」

「もしかして、その男はワシらが突き出したヤツかのう?」

「……ああ」


 パウルはシモンの質問に、少し間をおいてから答えた。


「ヤツはマルクス・ハルトマンと名乗っているらしいが、それが本当の名なのか、その素性(すじょう)すらもわかっていない。(わし)はハルトマン兄弟に商売を奪われたものの一族だと考えている」

「ワタシたち兵士もヤツの素性(すじょう)を追ったのだが、なにもでてこなかったんだ」


 パウルとジャクリーヌが(うつむ)きながらそう言った。


「そして事件が起きた。突然、兄のラルスが姿を消したのだ。事件、事故、誘拐(ゆうかい)、様々な可能性を想定し捜査したが、ラルスは見つからなかったが、ただ1つだけ情報があった。しかしそれは、表に出すことができない情報であったため、(わし)1人しか知り得ないものだった」

「パウルお付きの妖精パウが、おつかいの帰りに『星三(ほしみっ)つ』にハンスと一緒に入るラルスを見ていた。しかし、妖精パウの存在は極秘であったため、パウルは情報が出すことができなかったというわけだ」


 ジャクリーヌはその事を、王女から作戦を伝えられたときに聞いていたのだった。


 実は事件の直後、パウルが周りの者になにも告げず、『星三(ほしみっ)つ』に向かおうとしたことがあった。それを止めたただ1人がジャクリーヌであったのだ。その後パウルの名により、ジャクリーヌは近衛(このえ)騎士団へ配属されたのだった。


「兄ラルスが姿を消して1(つき)がたった頃、『ホテルラルス』の運営権を弟ハンスの移そうとする動きがあった。しかし、1人に権力が集中することを恐れた王都の貴族たちが、(わし)に国営のホテルとして買い取るべきだと進言してきた。(わし)はそれを聞き入れ、『ホテルラルス』は『ザ・パウル=ハインツ王都』となったのだ」

「それに恨みを抱いていたハンスが、今回の事件を起こしたということじゃのう!」


 事件の全貌(ぜんぼう)がわかり、勇者たちは(うなず)いている。


「しかしパウルよ。証拠(しょうこ)(つか)んでハンスを捕らえたんじゃ。この事件はもう解決したのではないのかのう?」

「いや、あと1つ残っている。それはこの部屋の何処(どこ)かに隠されている」


 パウルがそう言うと、勇者たちは部屋に散らばり、全ての物を調べ始めた。


「こういう部屋の(かく)し場所っていえば、絵の裏とかじゃない?」

「ワシは(つぼ)の下が(あや)しいと思うぞい!」

(わたくし)は引き出しの後にボタンが(かく)されていると思います」

「壁の何処(どこ)かを触れれば、扉が現れるとかではないか?」


 各々(おのおの)が名探偵となって、様々な場所を調べる。


「みんな違うよ! 王道は本棚だよ!」


 勇者はそう言いながら、1冊の本を奥に押し込んだ。


 ガコン! 本棚が横に動き出し、その後の壁に扉が現れた。

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