表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/122

第39話 王都リットベルガー4

「いかん! バレてしもうた!」

「大丈夫ですよ! そこに並んでいる料理は、全部お下げしたものですから!」

「なんだと! ニコラちゃん! ナイフとフォークを!」


 勇者は、(ふところ)から4人分のナイフとフォークを取り出し、全員に配った。一体、勇者の(ふところ)には、どれだけのものが入っているのだろうか?


「やはり、高級な料理はつまむのではなく、ナイフとフォークで食べるものだな! あとは、長年の夢の1つを(かな)えられれば完璧(かんぺき)だな!」

「あの、『ちょっと料理長呼んでくれ! 一言、(れい)がしたい!』ってやつよね!」

「ねえ! 折角(せっかく)だから、コースの順に食べようよ!」

「それでしたら、この順番になりますよ!」


 その女性は、白と黒で構成されたメイド服を着ており、胸元のリボンが可愛らしく、黄色っぽい茶髪をツインテールにしていた。

 やはり、配膳(はいぜん)係だったらしく、コースの順番に料理を並び替えた。


「今日は、オーナーが特別なお客様をお(まね)きして、貸し切りなんです。だけど、2人とも全く料理に手をつけないんですよ。『星三(ほしみっ)つ』最高級のフルコースなのに、もったいないったらありゃしない!」

「最高級だと! どおりで旨いはずだ!」

「誰かタッパー持ってない? あとでリアに、食べさせてあげたいんだ!」


 最高級のフルコースと聞き、テンションが上がる勇者たち。


「あなたたち! なにをしているのですか! アンナ! あなたの持ち場はここではないでしょう!」

「ヤバい! 支配人のヴェラさんが来たわ!」


 配膳(はいぜん)係のアンナは、素早く、ジャクリーヌの影に(かく)れた。


「あら? アンナがいませんね。……それよりあなたたち! 今日は貸し切りで、従業員以外は入店を(ことわ)っております! すぐに出ていきなさい!」


 支配人のヴェラは、黒一色のメイド服に、黒髪ロングから長い耳がピンッと(のぞ)く、エルフであった。


「ワシらは、重要な要件があって……」

「おだまりなさい! どんな要件があろうがなかろうが、出ていきなさい!」


 支配人のヴェラは、こちらの話を聞く意志(いし)が全く無いようだ。


駄目(だめ)だわ! このままじゃ、店から追い出されてしまうわ!」

「なにか方法はないものかのう! 助けねばならんというのに!」

「アンナ! 『ちょっと料理長呼んでくれ! 一言、(れい)がしたい!』」


 ジャクリーヌは、何故(なぜ)かこのタイミングで、長年の夢の1つを(かな)えようとした。

 アンナは、その言葉を聞き、何処(どこ)かに行ってしまった。


「あなたはなにを言っているのですか?」


 ジャクリーヌの異様な言動に、理解が追いつかないヴェラ。


「ともかく、あなたたちは出ておゆきなさい! 今すぐに! その後に、合言葉のキーも切ってしまいましょう!」

「合言葉を切られたら、あたしたち、もう二度とここには入れなくなってしまうわ!」


 ヴェラに裏口の前まで押しやられる勇者たち。


「おや! シモンさんじゃないですか! わたしを呼んだのは、あなただったのですか?」

「おお! 料理長ではないか! 久しいのう!」


 厨房(ちゅうぼう)の扉から、料理長が現れた。


「なんですか? 料理長のお知り合いの方なのですか?」

「自家のシイバの村に帰ったとき、ミノタウロスのモモ肉をわけていただいたんだ。(きみ)も食べただろう? あのローストビーフ!」

「まあ! それは失礼致しました。私は仕事に戻りますので、皆様はごゆっくりとなさいませ。それでは」


 支配人のヴェラは、奥へと去っていった。

 ミノタウロスの肉はとても高級品であり、取り(あつか)っているのは一流の商人だけであった。そのためヴェラは、勇者たちを、商人とその護衛(ごえい)だと勘違(かんちが)いしたのであった。


「料理長! お主を呼んだのは、こやつじゃよ!」

「ワタシは、近衛(このえ)騎士団隊長のジャクリーヌだ! これで、料理長とも顔見知りだな!」

「!? 近衛(このえ)騎士団! やはり、あの(うわさ)は本当だったのですね……」


 ジャクリーヌの紹介を聞いて、少し落ち込むような素振(そぶ)りを見せる、料理長。


「料理長は、今起こっていることと、その原因(げんいん)を知っているようじゃな!」

「ワタシが料理長と話す! お前たちはここで待っていてくれ!」


 ジャクリーヌはキリッとした顔になり、料理長を連れて、通路の(すみ)へと向かっていった。

 勇者の横を通るとき、なにか耳元で告げていたようだった。


 しばらくすると、ジャクリーヌは手を上げて、なにかの合図(あいず)を送った。


 すると、勇者の襟巻(えりま)きからクンだ飛び出し、ジャクリーヌの元に駆けていった。


「一体なにごとなの? 料理長は連れて行くし、クンは走って行っちゃうし」

「大丈夫だよ! すぐにわかるから!」


 勇者がそう言うと、クンが戻ってきた。クンはジャクリーヌから伝令を受けたらしく、勇者、シモン、イザベルの順に、耳元で内容を伝えていく。


「料理長、仕事に戻ってくれ! 合図(あいず)をしたら、頼むぞ!」

「隊長さんたちも、気をつけて」


 ジャクリーヌに声をかけ、料理長は厨房(ちゅうぼう)へと戻っていった。


「やはりこの下に、王女が(とら)われているようだ!」

「そうか、料理長も店の様子が可怪(おか)しいことに、気づいておったのじゃな!」

「料理長から(あず)かった、地下の部屋に入る鍵だ! じじい、お前に渡しておく!」


 ジャクリーヌと料理長は、互いの情報を交換し、ここ『星三(ほしみっ)つ』でなにか悪事が行われていると断定(だんてい)した。そして、オーナーと料理長しか持っていない、地下の部屋の鍵をジャクリーヌに(たく)したのだった。


「ワタシはトイレに行ってくる! 地下に入ると、長くなるかもしれないからな!」

「それならあたしも!」


 ジャクリーヌとイザベルは、トイレに向かっていった。


「なんと緊張感のないヤツラじゃ! ニコラちゃんは大丈夫かのう? 無理をしてはいかんぞ!」

「ボクは大丈夫! クンも大丈夫だって!」


 しばらくして、ジャクリーヌとイザベルが戻り、厨房(ちゅうぼう)裏のボイラー室に向う。


「ボイラー室から地下に入れば、敵がおるじゃろう! 気をつけるのじゃぞ!」


 シモンの言葉に、勇者とイザベルが(うなず)く。ジャクリーヌは、背中に背負っている両手剣を抜き、構えた。


 カチャリ、地面に観音(かんのん)開きになっている、地下への扉の鍵をシモンが開いた。

 扉の中は、階段になっており、薄暗くなっていた。


 カツーン、カツーン、ジャクリーヌと勇者が前方に立ち、階段を降りていく。


 階段を降りると、前方に扉があるのが見えた。そこまでの間だけ、(あかり)があったのだ。他に部分は(やみ)(おお)われ、全体を把握(はあく)することはできそうにない。


「ニコラちゃん! 装備をつけておいたほうがいいわ!」

「うん! わかった! ……あっ!」


 勇者は、装備をつけるための大きめの硬貨(こうか)を落としてしまい、(あかり)のない暗闇(くらやみ)に転がっていったしまった。


「仕様がないわね! あたしも一緒に探してくるわ!」

「ありがとう!」


 勇者とイザベルは、硬貨(こうか)を探しに、暗闇(くらやみ)に入っていった。しばらくすると……


「エンダーン!」


 勇者の声とともに、装備をつけた勇者とイザベルが戻ってきた。


「あの扉の向こうに、王女様がおるはずじゃ! 扉の鍵は、ワシが開ける! そしたら、ニコラちゃん、ジャクリーヌ、お主らですぐに救出(きゅうしゅつ)するのじゃ! よいな!」


 シモンの言葉に、勇者とジャクリーヌが(うなず)く。扉の鍵は、地下への扉と同じものだと料理長から聞いていたのだった。


 カチャリ、鍵を回し、扉を開くシモン。すると、部屋の奥に、(とら)われている女性の人影が見えた。そこに、他の人影がないのを確認し、勇者とジャクリーヌが一気に距離を()め、助けに向った。しかし……


「ハズレだ!」


 勇者とジャクリーヌが近づくと、その人影は消え去り、両側に隠れていた敵が飛び出した。

 2人は消えた人影に気を取られていたのか、その敵に気づかずに、()られて倒れてしまった。


「これはいかん!」


 シモンとイザベルは急いで部屋に入り、2人を助けるため、杖を(かま)える。


「おっとそこまでだ!」


 勇者たちを斬った右側の男がそう言うと、部屋の扉がバタンと閉じた。


「あたしたち、閉じ込められたようね……」

「そのようじゃのう!」


 シモンとイザベルに絶望(ぜつぼう)感が(ただよ)う。


「その通りだ! そして、王女は扉の外にいる。まずは、武器を捨ててもらおうか。さもなくば、王女を殺す!」

お読みいただきありがとうございます!

続きが気になる、面白い!と思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!

このページの下にある、

【☆☆☆☆☆】をタップすれば、ポイント評価出来ます!

ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=818740172&size=135  ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ