第39話 王都リットベルガー4
「いかん! バレてしもうた!」
「大丈夫ですよ! そこに並んでいる料理は、全部お下げしたものですから!」
「なんだと! ニコラちゃん! ナイフとフォークを!」
勇者は、懐から4人分のナイフとフォークを取り出し、全員に配った。一体、勇者の懐には、どれだけのものが入っているのだろうか?
「やはり、高級な料理はつまむのではなく、ナイフとフォークで食べるものだな! あとは、長年の夢の1つを叶えられれば完璧だな!」
「あの、『ちょっと料理長呼んでくれ! 一言、礼がしたい!』ってやつよね!」
「ねえ! 折角だから、コースの順に食べようよ!」
「それでしたら、この順番になりますよ!」
その女性は、白と黒で構成されたメイド服を着ており、胸元のリボンが可愛らしく、黄色っぽい茶髪をツインテールにしていた。
やはり、配膳係だったらしく、コースの順番に料理を並び替えた。
「今日は、オーナーが特別なお客様をお招きして、貸し切りなんです。だけど、2人とも全く料理に手をつけないんですよ。『星三つ』最高級のフルコースなのに、もったいないったらありゃしない!」
「最高級だと! どおりで旨いはずだ!」
「誰かタッパー持ってない? あとでリアに、食べさせてあげたいんだ!」
最高級のフルコースと聞き、テンションが上がる勇者たち。
「あなたたち! なにをしているのですか! アンナ! あなたの持ち場はここではないでしょう!」
「ヤバい! 支配人のヴェラさんが来たわ!」
配膳係のアンナは、素早く、ジャクリーヌの影に隠れた。
「あら? アンナがいませんね。……それよりあなたたち! 今日は貸し切りで、従業員以外は入店を断っております! すぐに出ていきなさい!」
支配人のヴェラは、黒一色のメイド服に、黒髪ロングから長い耳がピンッと覗く、エルフであった。
「ワシらは、重要な要件があって……」
「おだまりなさい! どんな要件があろうがなかろうが、出ていきなさい!」
支配人のヴェラは、こちらの話を聞く意志が全く無いようだ。
「駄目だわ! このままじゃ、店から追い出されてしまうわ!」
「なにか方法はないものかのう! 助けねばならんというのに!」
「アンナ! 『ちょっと料理長呼んでくれ! 一言、礼がしたい!』」
ジャクリーヌは、何故かこのタイミングで、長年の夢の1つを叶えようとした。
アンナは、その言葉を聞き、何処かに行ってしまった。
「あなたはなにを言っているのですか?」
ジャクリーヌの異様な言動に、理解が追いつかないヴェラ。
「ともかく、あなたたちは出ておゆきなさい! 今すぐに! その後に、合言葉のキーも切ってしまいましょう!」
「合言葉を切られたら、あたしたち、もう二度とここには入れなくなってしまうわ!」
ヴェラに裏口の前まで押しやられる勇者たち。
「おや! シモンさんじゃないですか! わたしを呼んだのは、あなただったのですか?」
「おお! 料理長ではないか! 久しいのう!」
厨房の扉から、料理長が現れた。
「なんですか? 料理長のお知り合いの方なのですか?」
「自家のシイバの村に帰ったとき、ミノタウロスのモモ肉をわけていただいたんだ。君も食べただろう? あのローストビーフ!」
「まあ! それは失礼致しました。私は仕事に戻りますので、皆様はごゆっくりとなさいませ。それでは」
支配人のヴェラは、奥へと去っていった。
ミノタウロスの肉はとても高級品であり、取り扱っているのは一流の商人だけであった。そのためヴェラは、勇者たちを、商人とその護衛だと勘違いしたのであった。
「料理長! お主を呼んだのは、こやつじゃよ!」
「ワタシは、近衛騎士団隊長のジャクリーヌだ! これで、料理長とも顔見知りだな!」
「!? 近衛騎士団! やはり、あの噂は本当だったのですね……」
ジャクリーヌの紹介を聞いて、少し落ち込むような素振りを見せる、料理長。
「料理長は、今起こっていることと、その原因を知っているようじゃな!」
「ワタシが料理長と話す! お前たちはここで待っていてくれ!」
ジャクリーヌはキリッとした顔になり、料理長を連れて、通路の隅へと向かっていった。
勇者の横を通るとき、なにか耳元で告げていたようだった。
しばらくすると、ジャクリーヌは手を上げて、なにかの合図を送った。
すると、勇者の襟巻きからクンだ飛び出し、ジャクリーヌの元に駆けていった。
「一体なにごとなの? 料理長は連れて行くし、クンは走って行っちゃうし」
「大丈夫だよ! すぐにわかるから!」
勇者がそう言うと、クンが戻ってきた。クンはジャクリーヌから伝令を受けたらしく、勇者、シモン、イザベルの順に、耳元で内容を伝えていく。
「料理長、仕事に戻ってくれ! 合図をしたら、頼むぞ!」
「隊長さんたちも、気をつけて」
ジャクリーヌに声をかけ、料理長は厨房へと戻っていった。
「やはりこの下に、王女が囚われているようだ!」
「そうか、料理長も店の様子が可怪しいことに、気づいておったのじゃな!」
「料理長から預かった、地下の部屋に入る鍵だ! じじい、お前に渡しておく!」
ジャクリーヌと料理長は、互いの情報を交換し、ここ『星三つ』でなにか悪事が行われていると断定した。そして、オーナーと料理長しか持っていない、地下の部屋の鍵をジャクリーヌに託したのだった。
「ワタシはトイレに行ってくる! 地下に入ると、長くなるかもしれないからな!」
「それならあたしも!」
ジャクリーヌとイザベルは、トイレに向かっていった。
「なんと緊張感のないヤツラじゃ! ニコラちゃんは大丈夫かのう? 無理をしてはいかんぞ!」
「ボクは大丈夫! クンも大丈夫だって!」
しばらくして、ジャクリーヌとイザベルが戻り、厨房裏のボイラー室に向う。
「ボイラー室から地下に入れば、敵がおるじゃろう! 気をつけるのじゃぞ!」
シモンの言葉に、勇者とイザベルが頷く。ジャクリーヌは、背中に背負っている両手剣を抜き、構えた。
カチャリ、地面に観音開きになっている、地下への扉の鍵をシモンが開いた。
扉の中は、階段になっており、薄暗くなっていた。
カツーン、カツーン、ジャクリーヌと勇者が前方に立ち、階段を降りていく。
階段を降りると、前方に扉があるのが見えた。そこまでの間だけ、灯があったのだ。他に部分は闇に覆われ、全体を把握することはできそうにない。
「ニコラちゃん! 装備をつけておいたほうがいいわ!」
「うん! わかった! ……あっ!」
勇者は、装備をつけるための大きめの硬貨を落としてしまい、灯のない暗闇に転がっていったしまった。
「仕様がないわね! あたしも一緒に探してくるわ!」
「ありがとう!」
勇者とイザベルは、硬貨を探しに、暗闇に入っていった。しばらくすると……
「エンダーン!」
勇者の声とともに、装備をつけた勇者とイザベルが戻ってきた。
「あの扉の向こうに、王女様がおるはずじゃ! 扉の鍵は、ワシが開ける! そしたら、ニコラちゃん、ジャクリーヌ、お主らですぐに救出するのじゃ! よいな!」
シモンの言葉に、勇者とジャクリーヌが頷く。扉の鍵は、地下への扉と同じものだと料理長から聞いていたのだった。
カチャリ、鍵を回し、扉を開くシモン。すると、部屋の奥に、囚われている女性の人影が見えた。そこに、他の人影がないのを確認し、勇者とジャクリーヌが一気に距離を詰め、助けに向った。しかし……
「ハズレだ!」
勇者とジャクリーヌが近づくと、その人影は消え去り、両側に隠れていた敵が飛び出した。
2人は消えた人影に気を取られていたのか、その敵に気づかずに、斬られて倒れてしまった。
「これはいかん!」
シモンとイザベルは急いで部屋に入り、2人を助けるため、杖を構える。
「おっとそこまでだ!」
勇者たちを斬った右側の男がそう言うと、部屋の扉がバタンと閉じた。
「あたしたち、閉じ込められたようね……」
「そのようじゃのう!」
シモンとイザベルに絶望感が漂う。
「その通りだ! そして、王女は扉の外にいる。まずは、武器を捨ててもらおうか。さもなくば、王女を殺す!」
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