第37話 王都リットベルガー2
リアだと思って連れてきた人物は、王女エバ=マリアであった。
「ただいま!」
「お主ら、どうしたんじゃ? 店の前で突っ立って?」
勇者とシモンが探索から帰ってきた。
「皆の者、声を小さくなさい! 店主よ、私とこの者たちを、すぐに店の中に案内しなさい!」
王女は、目線を前に向けたまま、発した言葉とは違い、笑顔を作って、真後ろにいるゲルベルガにギリギリ聞こえる音量でそう言った。
「さあ、ジャクリ……隊長たちも中に入ってくれ!」
ゲルベルガはぎこちない笑顔をつくりながら、王女と勇者たちを店の中に招き入れた。
「これで、安全は確保できたわね。ゲオルゲ! 話をしてあげなさい!」
店の中に全員が入ると王女はそう言った。店の中は魔術具を使って、盗聴防止の魔法がかけてあったのだ。
「ちょっと待つのじゃ! こやつはゲルベルガではないのか? 一体、なにがどうなっておるんじゃ?」
「ちんぷんかんぷん!」
イザベルとジャクリーヌも、ポカンとした顔をしているが、勇者とシモンは現状が全くわからず、ただ戸惑っている。
「まず、俺がゲルベルガに変装して、店の対応をしていたことを詫びよう。すまなかったな」
「だから様子が可怪しかったのだな!」
「ゲオルゲさん! 茶の入れ方位、覚えておいたほうがいいわよ!」
「それは、面目ない」
とりあえず、謎の1つは解けた。
「そしてこちらは、王女エバ=マリア様だ。お前たちが言っていた、リアなる者ではない」
「ねえ、どうしてここに王女様がいるの?」
勇者が尋ねる。隣のシモンも首をかしげ、同じ疑問を感じているようだ。
「それはね、あたしたちが買い物中にリアとはぐれて、見つけたと思ったら、王女様だったのよ!」
「そして、そのままここへ連れてきてしまった。というわけなんだ。と言っても、王女様だとわかったのは、今さっきなのだがな!」
「それなら、本物のリアはどこにいるの?」
勇者の言葉に、全員がハッとする。
「いかん! 急いでリアを探さねば!」
「4人で手分けすれば、見つけられるはずよ! ゲオルゲさんも手伝ってくれない?」
店の出口に向かって走る、勇者たち。
「皆の者! 止まりなさい!」
王女の一喝で、勇者たちは立ち止まった。
「ゲオルゲ。作戦の詳細をこの者たちに伝えなさい。もちろん、あの事は抜きでね」
「ははあ! それでは……」
王女が変装して街に出ていたり、ゲオルゲが、甘味処の店主に変装していたのは、とある作戦のためらしい。城の中に潜む、間者を動かしている者が、王女をさらうという情報を掴み、囮として、王女が自ら動いていたということだった。
「それでは王女様は、わざとさらわれるようなまねをしておられたということですか?」
「その通り。間者を動かしているものの正体を掴むには、今しかない。このために、10年もの間、こんな目立つ首飾りを付けて、街に出続けていたのですからね」
王女は、10年前から週に1度、視察という名目で街に変装し出歩いていた。そのときは必ず、魔石のついた首飾りを身に着け、それが王女であるという目印になるように、まわりに印象付けていたのだった。
「王女様が首謀者の正体を掴んだ後、ある魔術具をつかい我ら応援を呼んでいただき、一網打尽にするという作戦だったのだ」
「しかし、その作戦は無理のようだ。私たちが店の中に入ってから、敵の見張りとおぼしき者たち全てが、いなくなってしまった」
「つまり、リアなるものが王女様の代わりにさらわれてしまった、ということだな」
ゲオルゲの言葉を聞き、勇者たちの顔が真っ青になる。
「駄目じゃ! ワシらには、リアが何処に連れ去られたかわからぬ!」
「敵の拠点は、王都の地下水路の何処か、というところまでは掴んでいる。しかし、あまりに広く入り組んでいるため、王女様が囮となり、場所を特定する手筈だったのだ。しかも、地下水路は魔力を遮断し、魔法による通信は行うことができない。そのため、特殊な魔術具をわざわざ準備していたのだ」
「そんな場所から、リアを探し出すなんて、無理だわ!」
リアの探索を誰もが諦めた、そのとき……
「ねえ! 王女様の首飾りの魔石、リアのとそっくりだね!」
勇者が突然話しだした。
「たしかにそっくりじゃが、今はそんな話をしとる場合じゃ……!? そうじゃ!」
シモンがなにかに気付いたようだ。
「王女様、その首飾りは、王族に代々伝わる魔石をつかったもので、間違いないじゃろか?」
「ええ、その通りですが、なにか?」
シモンの言葉に、王女は疑問を抱いたまま答えたようだ。
「王女様は、イザベルたちに連れてこられる前に、首飾りを1度、落としたのではないかのう?」
「ええ、たしかに、急に飛び出してきた女にぶつかり、首飾りを落としてしまいましたが」
「ニコラちゃん! 探求の羅針盤じゃ!」
「オッケー!」
勇者は、懐から探求の羅針盤取り出し、蓋の中を見た。
「北を指して、物凄く震えてるよ!」
「これで、リアを救えるぞい!」
ハイタッチをして喜ぶ、勇者とシモン。
「シモン! どういうことか説明せよ!」
「それでは、順を追って説明するかのう!」
勇者とシモンは、探求の羅針盤をつかい、王都内にある5つの魔石の探索をしていた。しかし、針はあっちこっちに動き、位置の特定ができなかったため、一度、ゲルベルガの店に戻ってきた。
「おそらく、王女様がぶつかった人物は、リアじゃ! そのときに首飾りが入れ替わってしもたのじゃろな!」
「何故、王女様の首飾りが入れ替わったものだとわかるのだ? シモンじい?」
「それは、魔力じゃよ! リアの首飾りには、魔石の抜け殻がつけられておった。そう、魔力を持たぬただの抜け殻がのう」
イザベルが王女の首飾りに両手をかざして調べた。
「たしかに、その魔石からは、魔力を感じ取れないわねえ!」
イザベルの話を聞き、シモンは自分の考えが正しいと確信を得たような、そんな顔で大きく頷いた。
「針が動き続けておったのは、リアがさらわれ、何処かに運ばれている最中だったのじゃろうな! 容姿がそっくりな人物が、目印となる首飾りをつけておったんじゃ。間違うなという方が、難しいじゃろうな!」
「しかも、本物の5つの魔石の首飾りだしね!」
勇者が補足を付け加える。
「ちょっと待つがよい。私のつけていた首飾りが、5つの魔石の1つであると何故わかるのだ?」
「それは、探求の羅針盤が位置を示しているからじゃよ! 魔力の遮断されている、地下水路にあるものを指し示しておるんじゃ。5つの魔石は、通常の魔力とは異なるものを発しておるのじゃろう。そうでなければ、世界に散らばるたった5つの石など、見つけ出すことなどできんからのう!」
さっそく、リア救出作戦の会議に移行する。
「ゲオルゲは王女様を城までお連れした後、ワタシたちと敵陣に乗り込むぞ!」
「私の事は考えずとも良い。ジャクリーヌほどではないが、それなりに強いのでな」
そう言って、腕まくりをし力こぶを作る王女。力こぶはかなりでかい。
「王女様は、俺とエミーから剣と魔法の鍛錬を受けているからな。幼い頃から密かにだが……誰にも話してはならんぞ!」
そう言って、人差し指を口に当てる、ゲオルゲ。ごつい顔に、可愛らしい動作というギャップが、意外とマッチしている。
「いや、私とゲオルゲは、一旦城へ戻る。お前たちに、発信の魔術具を渡しておくので、敵の正体を突き止め次第、使うが良い。ジャクリーヌよ、こちらに来るが良い。魔術具の使い方を説明しておく」
ジャクリーヌは、王女から魔術具の説明以外のことも聞いているようだが、詳細を聞き取ることはできそうにない。
「シモンじい、お前たちは、この店の裏口から出て、少し先にある水路から、地下水路に侵入してくれ。俺と王女様は、少し時間をおいてから城に戻る」
「それじゃあ、リア救出作戦はじめるとするか!」
王女から魔術具を渡された、ジャクリーヌを先頭に店の裏口へと向う。
「しっかりやれよ!」
「どうぞ、ご武運を!」
ゲオルゲと王女に見送られ、勇者たちは地下水路へと向かっていった。
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