表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/122

第34話 ノルトハイム平原5

「それでは、本日最後の部屋に移りますね」


 にこやかだったリアの顔が、フッと少し真面目(まじめ)なものへと変わった。


「皆様、これから部屋に入りますが、ここをご覧くださいませ」


 リアは、ボタンやツマミの並ぶパネルを、手のひらで示した。


「見ての通り、ツマミで6つの部屋を切り替え、それそれのボタンで、扉を出現させることができます。そして、ボタンの上のスイッチ。これが非常に重要なものとなります」


 6つのボタンの上に並ぶ、6つのスイッチは、1つだけ上を向いていた。


「このスイッチは必ず、下に向けてからボタンを押すようにしてください。皆様、よろしいですね」


 4人と1匹は、リアの(みょう)威圧感(いあつかん)に押され、無言で(うなず)く。


「でしたら、ご案内しますね」


 いつもの優しいリアに戻った。

 スイッチを下に向けてからボタンが押す。そして、扉が開かれる。


「これは! あたしが昨日見た、青白い不思議(ふしぎ)な部屋じゃない!」

「あそこに、ボクの装備があるよ!」


 部屋の奥には、勇者の装備が置いてあった。それに、近づいていく。


「ニコラちゃん師匠、探求(たんきゅう)羅針盤(らしんばん)をつかっていただいてよろしいですか?」

「うん! わかった!」


 勇者は(ふところ)から探求(たんきゅう)羅針盤(らしんばん)をだし、(ふた)の出っ張りを押した。


「あれ? (よろい)を指さずに、クルクル回ってるよ!」

「どういうことじゃ? 探求(たんきゅう)羅針盤(らしんばん)可怪(おか)しくなったのかのう?」


 リアに(するど)視線(しせん)が集中する。


「違いますよ! 魔石の定着(ていちゃく)が、無事に完了したのです!」


 リアは、魔石のついた胸当てを(かか)げていた。


「リアよ! どういうことじゃ? 魔石を定着(ていちゃく)させるには、6ヶ月かかると言っておったではないか! たった一晩で定着(ていちゃく)することなど、あるわけなかろうて!」

「もしくは、リアが(うそ)を言っていた、ということではないのか?」

「ジャクリーヌ! リアはそんな(うそ)、言わないよ!」


 勇者は、ジャクリーヌの目をじっと見ながらそう言った。


「話の流れから、つい口に出てしまっただけだ。リア、(いや)な思いをさせたのなら、申し訳ない」


 リアに向かって、頭を下げるジャクリーヌ。


「いいえ、なにも問題ありませんよ。一晩で、6ヶ月経過(けいか)するなんて、実際には起こり得ないようなことですからね」

「ちょっと待って! リア! 今、あなたが言ったことが、実際に起こったということなの?」


 イザベルは、目をパチクリとさせながらそう言った。


「はい。先程(さきほど)探求(たんきゅう)羅針盤(らしんばん)の針がクルクル回っていたのが、なによりの証拠(しょうこ)なのです」


 針が回っていたのは、空間魔法を応用(おうよう)してつくられた部屋であったため、外の魔石を探知(たんち)することはできても、位置の特定(とくてい)ができていなかったためらしい。


「さすが、鍛冶師の村じゃ! 一晩で6ヶ月経過(けいか)とはのう!」

「いいえ、元は一晩で1ヶ月経過(けいか)だったのですが、(わたくし)改良(かいりょう)して、6ヶ月経過(けいか)にいたしました」


 村での馬車の製作(せいさく)に、1ヶ月(たずさ)わって以来、リアは時の経過(けいか)を早める研究をしていたらしい。あるとき、鉱石(こうせき)が時の経過(けいか)に大きく関わっていることに気づき、キレイな石集めに、より力を入れるようになったということだった。


「ワシはもう、リアがなにをやっても驚かんことにするわい!」

「あたしもそうするわ! 毎回、驚きの次元(じげん)が高すぎて、寿命(じゅみょう)(ちぢ)まってしまいそうだしね!」

「リアだから仕方(しかた)がない! そういうことだな!」


 リアの父、ヴァイスが言った『(はか)り知れない才能』という言葉の意味を、心の奥底から感じる、シモン、イザベル、ジャクリーヌ。


「リアは凄すぎるんだね! (えら)(えら)い!」


 勇者は、リアの頭をなでなでした。


「ニコラちゃん師匠。皆様の前で、お恥ずかしい」


 そう言いつつ、リアはとても(うれ)しそうだ。


「それでは皆様、パネルを見ながら、全体の説明をいたしますね」

「エンダーン!」


 勇者は装備を仕舞(しま)い、みんなにつづいて部屋を出る。


「パネルのボタンは、左から、冷蔵(れいぞう)冷凍(れいとう)・乾燥・熟成(じゅくせい)・鍛冶・生活、となっております」


 ボタンの下には、いつの間にか、部屋の名前が()られた金属プレートがはめられていた。


「リア、なんで熟成(じゅくせい)なんだ? 魔石の定着(ていちゃく)のための部屋なのだから、定着(ていちゃく)でよいのではないか?」

「ジャクリーヌ様、それには意味があるのでございます。昨晩、夕食の準備をしておりましたときに、ニコラちゃん師匠が、ミソとショウユの話をなさいました。それらをつくるとき、様々な材料も必要であるが、最も必要なのが、熟成(じゅくせい)期間だと申されました。ですのでその部屋は、熟成(じゅくせい)用の部屋であり、魔石の定着(ていちゃく)はおまけにすぎないのでございます」

「なるほどな! それならば納得(なっとく)だな!」

「ジャクリーヌ。そこは突っ込むところじゃないの?」


 めずらしく、勇者が突っ込み役にでる。


「ニコラちゃん、なにを言っているんだ! ミソとショウユがあれば、ニコラちゃんの母国(ぼこく)の料理が食べられるのだろう? これ以上に大事なことなど、他にあるものか! な! じじい!」

「もちろんそうじゃ! のう! イザベル!」

「そのついでに、魔王を倒す感じかしらね!」


 きっと冗談(じょうだん)で言っているのだろう。しかし、本気に見えなくもない。


「次は、ボタンの上のスイッチについて、説明いたしますね」

「話の流れからすると、時間経過(けいか)のスイッチじゃないかしら?」

「イザベル様、その通りです。必ず、熟成(じゅくせい)の部屋に入られる際は、()()()()()()()()()()()にしてくださいね」


 スイッチの部分を強調して、リアは話した。


「他の部屋のスイッチは、どうなっておるんじゃ? 間違って冷蔵(れいぞう)の部屋のスイッチを入れてしまったら、食材が全部駄目(だめ)になってしまうのかの?」


 シモンは、全てのスイッチが、同じものであるかどうかを確認しているようだ。


「はい。まず、鍛冶と生活の部屋は、この機能を使う必要がないので、スイッチ自体が動きません。冷蔵(れいぞう)冷凍(れいとう)、そして、乾燥の部屋は、スイッチを入れると、時の流れが半分になります」

「時の流れが半分じゃと! それはすごいのう!」

「つまり、これまでの2倍の期間、保存できるということね!」


 シモンとイザベルが、ハイタッチをして喜ぶ。


「やはりこれも、リアが手を加えたのか?」

「いえ、時間の加速に関しては、可能でしたが、減速に関しては、元々の半減以上の方法を、見つけ出すことができませんでした」


 リアは、とても(くや)しそうに話した。

お読みいただきありがとうございます!

続きが気になる、面白い!と思っていただけましたら、ブックマークや評価をぜひお願いします!

このページの下にある、

【☆☆☆☆☆】をタップすれば、ポイント評価出来ます!

ぜひよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=818740172&size=135  ツギクルバナー
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ