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第100話 原住民の島

「それでは最初の転送を行いましょう。実は副船長さんにお願いして、小舟で先に上陸していただきました」


 リアが指差す窓の外を見ると、島の浜辺(はまべ)からこちらに向かって手を振る副船長の様子が確認できた。手で丸の形を作っており、転送の準備はすでに済ませてあるようだった。


「最初の転送は、もちろん開発者である(わたくし)が……」

「いや! その役割、あたいに任せてもらおうか!」


 船長席で話を聞いていたアンホルトが、いきなり立ち上がりそう言った。


「一番最初っていうものは、船長がやるものだと海賊の間では相場が決まっているのさ!」


 アンホルトは床にあぐらをかいてドカッと座った。


「それじゃあ、ボクも!」

「それなら、ワシも!」

「ワタシも負けていられないな!」

「とりあえず、あたしも!」


 勇者たちもあぐらをかいて、アンホルトの周りに次々と座る。


「困りましたね。これではこちらに残ってボタンを押してもらう方がいませんね」

「その役目、わたしが(うけたまわ)りましょう。どうせ、荷物を運ぶ指示を出さなくてはいけませんからね」


 ロレンツォはそう言って、リアからペンダントを受け取った。リアもあぐらをかいて、勇者たちに加わる。


「では皆さん、いきますよ!」


 カチリ、ペンダントのボタンをロレンツォが押した。


 すると、赤い石から光が放たれた。光に包まれて視界が失われ、(まぶ)しさに耐えながら全員が目を閉じた。ゆっくりと目を開けると、船長室の景色(けしき)から島の景色(けしき)に変わっていることに気付いた。


「成功です! 無事に転送されました!」


 リアが喜びの声を上げ、勇者たちは無事に転送されたことを祝って、リアを胴上げした。



「よし! これで旅の準備完了じゃな!」


 勇者たちはヴェルドーネ号から転送で送られてきた馬車とルディを(つな)ぎ、次の目的地である火の精霊の(ほこら)へ向かう準備を整えた。


「ここで、アンホルトたち海賊とロレンツォともお別れだな!」

「3日間の船旅だったけど、長い間旅してきた仲間のような気がするわ!」

「ボクもとっても楽しかった!」


 勇者たちはそう言って、沖に停泊中のヴェルドーネ号を感慨(かんがい)深そうに見つめている。

 浜辺(はまべ)では、物資(ぶっし)の積み下ろしがまだ行われており、(せわ)しなく働く海賊たちにロレンツォが指示を出していた。


「おや? 皆さん、そろそろ行かれるのですか?」


 勇者たちを見つけたロレンツォがこちらに近づいてきた。


「そうじゃ! ワシらの目的は火の精霊の(ほこら)じゃからのう!」

「わたしは皆さんの冒険の成功を祈りながら、ここに港町を建設しておきます」

「港町の建設だと? ロレンツォ、さすがに他国の土地にそんなものを勝手につくるのは良くないのではないか?」

「それが問題ないのですよ。実はですね……」


 ロレンツォによると、原住民の島はもともと外部の人間の侵入(しんにゅう)は許されていないらしい。しかし、アンホルトたち海賊は、船が転覆(てんぷく)し海で遭難(そうなん)していた原住民の島の集落の族長の家族を救い、命の恩人として島の人々から特別な存在として迎えられていた。そして、島の一角(いっかく)(あた)えられており、その土地を自由に開拓(かいたく)することが許されているとのことだった。


「その一角(いっかく)というのがこの辺りを指すのですよ。大きな船が入港できる港を作り、中継地点としてつかえる町にするつもりです」

「港はわかるが、中継地点とはどういうことじゃ?」

「皆さんが魔王を倒した後に、世界相手に商売するためのですよ」


 ロレンツォは全く躊躇(ちゅうちょ)することもなくそう言い切った。勇者たちの事を余程信頼しているのだろう。その後、ロレンツォは手を振りながら仕事に戻っていった。


「ワシらの旅は、色んな人の思いを背負っておるのじゃな!」

「ああ! 絶対にやり()げなければな!」


 シモンとジャクリーヌの言葉に、勇者たちは顔を見合わせ大きく(うなず)いた。


「あんたら、火の精霊の(ほこら)に向かうんだったな! それなら、そこの集落に寄っていったらいい! あたいが族長に話をつけてやるからさ!」


 馬車に乗り込もうとしていると、アンホルトがやってきて声をかけた。


「それは助かるのう! 御者(ぎょしゃ)の席に乗って道案内をお願いするぞい!」


 再び、馬車に乗り込もうとしていると、近くで荷下ろしをしていた副船長がこちらに近づいてきた。


「お前たちとの船旅も楽しかったな。またどこかで会えることを願っているぜ!」


 副船長は大声で挨拶(あいさつ)すると、手を振りながら荷下ろしの作業に戻っていった。


 アンホルトの案内で馬車は進み、勇者たちは美しい島の風景に(かこ)まれていった。樹木が(しげ)り、花々が咲き(ほこ)っており、山々がそびえ立っている様子が見えた。山々の頂上には白い雲がかかっており、時折轟音(ごうおん)と共に噴煙(ふんえん)が上がり、火の精霊の存在を感じさせる壮大な光景が広がっていた。



「さあ、見えてきたよ! あれが原住民の島の集落さ!」


 アンホルトの声を聞き、馬車の窓から集落の様子を(なが)める。


「あら! とっても可愛(かわい)らしい家がたくさんあるわね!」

「畑作や畜産も盛んなようじゃのう!」


 集落の家は切った竹を()み込んだような壁に、ココナッツの葉でできた屋根でつくられていた。それほど大きなものではなく、小さなものがいくつも集まるように建っていた。周りには沢山の作物が育てられ、放し飼いの動物や(かこ)いに入れられた牛や豚などを見ることができた。

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