第三十四話
ルイリは謎の訪問者達の一人、グレイへの尋問を続けていった。
ちなみにヨハンはグレイの発言をノートに書き留める書記の役割を与えられている。
「それでは次の質問を行います。あなた達は何なの?近くに住んでる村人って言うのは嘘だろうし」
「……」
「…あんまり話さないと怒るわよ?」
「……盗賊」
「盗賊か。他の五人も同じね?」
「……」
「…さっきあんまり話さないと怒るって言ったわよね?」
「……あいつらも盗賊だよ」
「という事は盗賊団かな?ねぇグレイ、その考えであってるかしら?」
「……」
「…グレイ?」
「……」
「………ふぅ」
ここまでの尋問に協力的とは言えない態度をし続けるグレイに軽くキレたルイリは一つ溜め息を吐くとグレイにゆっくりと話し掛け始めたのである。
「ねぇグレイ?さっき私、あまり話さないと怒るって言ったわよね?」
「……」
「そうやって話さないつもりなら痛いのとか熱いのとかやるわよ?」
「……」
「…まあいいや。ところで話は変わるけど私魔法使えるのよね」
「……」
「使える魔法は二種類。一つは身体強化系魔法。そしてもう一つが治癒系魔法なの」
「……」
「治癒系魔法って便利よぉ?術者の力にもよるけど、私のはどんな怪我でも痕を残さずきれいに治せるの」
「……」
「何の話してるんだって思ってる?それじゃ本題に入るけど、どんな怪我でも痕を残さずきれいに治せる、という事はグレイにどれだけ酷い拷問をしても、私が治癒魔法を使えばその痕跡が一切残らないのよね」
「……え?」
「しかも怪我をすぐに回復させる事が出来るから連続で次から次に拷問を変えていけるのよね」
「…え?え?」
「…ねぇグレイ?最初はどんな拷問がいい?痛いのがいい?それとも熱いのがいい?それとも…そうだな、死ぬほど冷たいのがいい?どれでも好きなの選ばせてあげる。さぁ、どれがいい?」
「…ちょ、ちょっと待て、さっきお前、痛いのとか、熱いのとかは、嫌いだって、言っただろ…?」
口調は穏やかだがとても不穏な言葉を口にするルイリに少し震えながらそのように指摘したグレイ。
そのグレイの指摘にルイリは、
「やだなあグレイ。私は嫌いだって言っただけで、やらないとは一言も言ってないわよ?何か勘違いしてた?」
と、答えて、さらに続けて、
「それじゃグレイ、話してくれないみたいだから拷問始めよっか?最初はグレイが受けてみたい拷問から始めてあげる。グレイはどんな拷問を受けてみたい?痛いの?熱いの?冷たいの?どれでも好きなのからやってあげる」
と、満面の笑顔でグレイに話し掛けたのである。
そのルイリの笑顔は、顔は笑っているし目も笑っている。
しかしルイリの奥のナニかだけは1ミリたりとも笑っていない、そんな笑顔であった。
「…こ、こた…」
「…ん?どした、グレイ?」
「こ、こた、こた、こた、こた……」
「ええ?どうしたのよグレイ?」
「こ、答える!答えるからやめてくれ!!」
ルイリの言動に、この女に逆らってはいけない、と、本能で察して震えながら尋問に答えると叫んだグレイ。
そんなグレイにルイリは、
「そっか、そっか。それはありがたい。それじゃ改めて尋問を始めよっか」
と、話して、続けてグレイにこう言ったのである。
「あ、そうそう、もう一つ勘違いしてる事があるかもしれないから言っておくと、私が痛いのとか熱いのとかが嫌いな理由って別にその光景が酷いとか残虐だからとかじゃないからね?」
「…え?」
「私が痛いのとか熱いのとかが嫌いな理由は、それをやったら私も疲れるじゃない?だから嫌なのよ。別に拷問するのが嫌いだから、とかじゃないからね?」
「……は、はい…」
…ルイリのこの言葉に、グレイはルイリに対する恐怖の念を一段階深く心に刻み込まれたのであった。




