第三十一話
「お待たせしました。私が領主のヨハンです」
準備を終えて広場に向かい、謎の訪問者六人に厨房で決めた役割通りに偽の自己紹介を行ったヨハン。
そしてその後ろに控えるフランクとルイリ。
そんな三人をチラチラと見ながら訪問者の一人がヨハンの自己紹介に応じて、
「あなた様が新しい領主様ですか。我々は近くの村の代表として新しい領主様にご挨拶に参りました。よろしくお願いします」
と、うやうやしく頭を下げたのである。
そんな訪問者にヨハンは、
「これはどうもご丁寧に…。他の村の人達にもよろしくお伝えください」
と、比較的当たり障りのない挨拶を返したのであった。
するとヨハンに挨拶をした訪問者が、
「…あ、領主様、あの…ですね…その…」
と、言いながらヨハンに近付いてきたのであった。
それに対してヨハンからも訪問者に近付きながら、
「…?なんでしょうか?」
と、言いながら訪問者に近付いていったのである。
そしてヨハンと訪問者が十分に近付いたところで訪問者が、
「お近づきの印にこちらを…」
と、言って懐に手を入れるとそこからナイフを取り出してヨハンに掴み掛かったのである。
「「あっ、ヨハンさん!?」」
その瞬間、同時に声を上げたルイリとフランクが助けに入る時間も無い、まさに一瞬でヨハンが訪問者に羽交い締めにされ、そして訪問者が、
「二人共動くな!!動いたら領主の命はねぇぞ!!」
と、ヨハンを人質にしてルイリとフランクに叫んだのである。
そうして訪問者の一人がヨハンを人質に取った直後、残り五人の訪問者達もそれぞれにナイフを取り出して武装、戦闘態勢に入ったのである。
そんな中、人質にされたヨハンが訪問者達に、
「あなた達は何者です?それに目的は?」
と、尋ねたのである。
そして訪問者達がその質問に答えようとした隙にルイリは小声で、
「ヴィクトリア、おいで」
と、言ってヴィクトリアを自身の近くに呼び寄せたのである。
その一方で訪問者達はヨハンの質問に、
「俺達が何者か、なんてのはどうだっていいだろう?それより目的の方だがな、金だよ金。着任直後で支度金がたんまりあるんだろ?領主様を殺されたくなかったら支度金を全部俺達に渡してもらおうか?」
と、答えたのであった。
その答えを聞いたルイリは、
(目的は金、か…。わりとありきたりの答えだったな…。でもそうなるとこいつらは盗賊か…?)
と、考えながらゆっくりとしゃがんでいったのである。
その動きはゆっくりだった事に加えて、ルイリの前に立っていたヴィクトリアが障害物になって訪問者達には見えなかったのであった。
そうして訪問者達に気付かれる事なくしゃがんだルイリは足元に巻き付けていた矢筒から矢を五本取り出すと一言、
「ヨハン!!」
と、大声で叫んだのであった。
その直後、ルイリのこの声に反応してヨハンが動いたのである。




