第三十話
館内に戻ったルイリは一刻も早くヨハンとフランクに合流するべく一直線に厨房の外に向かったのである。
そうして厨房の外に着いたルイリはすぐに水路掘りをしているヨハンとフランクの元に駆け寄って行き、
「ヨハンさん、フランクさん、多分ですけど視線の主達が来ました」
と、言って二人に話し掛け、その言葉を聞いたヨハンとフランクは作業の手を止めて、
「来ましたか…」
「それで何者ですか?」
と、ルイリに尋ねたのである。
その質問にルイリは、
「まだわからない。今のところは村人を代表して来たって言ってるけどそれが嘘かもしれないしね」
と、答えたのである。
そしてその答えに続けて、
「だから私も自分が領主だとは答えなかった。向こうが私をメイドだと勘違いしてきたからそうだと答えたんだよね」
と、言って向こうはこちらを騙そうとしているのかもしれないが自分達も向こうを騙そうとしている、という今現在の状況を伝えたのである。
この説明にヨハンが、
「仮に敵対勢力だった場合、すでに騙し合いが始まっている、という事ですか…」
と、話して表情を歪めたのである。
これにフランクが、
「ですがまだ敵対勢力だと決まったわけではないんでしょう?落ち込むのはまだ早いのでは?」
と、ヨハンに声を掛けたのだが、その言葉にルイリは、
「…確かに敵対勢力だとは決まってないけど絶対に油断はしない方がいいと思う。味方だと決まったわけでもないからね」
と、話してヨハン、フランクの二人に油断はするな、と釘を刺したのである。
そしてルイリは続けて、
「…それじゃあ行こうか?向こうには領主を連れてくるって言ったから、ヨハンさん、領主役をお願いします。フランクさんは従者役でお願いします」
と、言ってヨハン、フランクそれぞれに演じてもらいたい役割を伝えたのであった。
これに二人共、
「「わかりました」」
と、言ってすぐに了解した為、三人はひとまず厨房に戻ってそれぞれが必要な最低限の装備を整える事にしたのである。
「私は弓を背中に隠し持って矢筒と矢束を…草で隠せるように足元に巻き付けるかな?」
「私は…とりあえず剣を腰に下げるだけにしておきますか。それと私は後は身なりですか?領主役ですし」
「身なりはそのままでよくない?ぼろ屋敷の領主なんだし」
「…そうですね」
「…私が剣を持つとか久しぶりですね。いつ以来でしょうか?」
「実戦感覚は鈍ってないよね?フランクさん」
「…一応それなりに訓練はしています。一応ですが」
「ふふ、よろしい。まあ戦う事になっても二人は戦えなくなった相手を捕まえるぐらいの事になるとは思うけどね」
「まあそうでしょうね」
「…そうなる事を祈ってます」
「よし、行くよ、二人共」
「「はい」」
こうして準備を終えたルイリ達は謎の訪問者達が待つ階段前広場に向かうのだった。




