第二十四話
ルイリが領主館の整備項目を増やす事を決定したのと同じ頃、ヨハンとフランクの階段の掃除の進み具合はおよそ半分という感じになっていた。
ただやはりこちらの階段の掃除でも水汲みの為の小川との往復が大きな負担になっていたのである。
「…あの時はルイリさんの意見を、ただ作業量を増やすだけの意見なのではないかと思っていましたが…これはやはり小川の水を厨房近くまで引っ張ってきた方が良さそうですねぇ…」
当初はルイリの言葉に否定的な考えをしていたヨハンであったが水の入れ替えに何度も小川まで往復している間にルイリの意見に賛成する気持ちが大きくなってきていたのであった。
さらにヨハンのその気持ちに拍車をかけたのがフランクの存在だった。
フランクはヨハンに、
「…この水汲みの為の往復って疲れませんか…?」
と、話し掛けた。
そこから二人の会話が始まったのである。
「…それは疲れるが…だからといってどうしようもないだろう?」
「いえ、そんな事はありません」
「…何か方法があるのか?」
「小川から厨房の近くまでの水路を作りましょう!そうすれば水汲みが今より楽になりますよ!」
ここまで話したフランクにヨハンが頭を抱えながら、
「…………お前もそれを言うのか……」
と、声を絞り出したのであった。
その様子を見たフランクはすぐに、
「私も、という事はルイリさんも水路を作ろうと言っているんですね?」
と、ヨハンに尋ねたのである。
その言葉にヨハンは頭を抱えたまま、
「ああ、そうだよ。ルイリさんも…水路ではなかったが…小川から厨房の近くまで溝を掘ろうって言ってたよ!」
と、吐き捨てるように話したのであった。
このヨハンの様子にフランクは、
「…フランクさんは水路を作るのは反対なんですか?」
と、恐る恐る尋ねたのである。
この質問にヨハンは、
「…ああ、まあな」
と、言葉少なに答えたのである。
この返答にフランクが、
「何故ですか?」
と、こちらも言葉少なにヨハンにその理由を尋ねたのである。
その言葉にヨハンは、
「何故だと!?答えは簡単だ、仕事が増えるからだ!見ろ、このぼろぼろの領主館を!掃除し終わるまで何日かかると思う!?それに私達は三人だぞ!?明らかに人手不足だ!この状況で水路を掘るのは自殺行為だと思わんか!?」
と、一気に捲し立てたのである。
そしてその勢いに圧倒されたフランクが、
「え、ええ、そうですね…」
と、一言だけ返した後、少し落ち着いたヨハンが小さな声でフランクに、
「…まあ、それでも私の考えも少し揺らいでいるんだがな…」
と、話したのであった。
その言葉にフランクが、
「え?揺らいでいる?何故ですか?」
と、聞き返すとヨハンは、
「さっきフランクも言っただろう?小川との往復が辛いと。私も同じ事を思ってな…。そう思っていたところにフランクの言葉だ。大きく揺らいだよ…」
と、答えたのである。
その言葉にフランクは、
「…やっぱり水路を作った方がいいのでは?」
と、返し、ヨハンも、
「三人の意見が一致したか…。となると作るしかないか…」
と、諦めの境地に到達したような言葉を口にしたのであった。




