第十九話
「さて、掘り始めたのはいいのですがどこまで掘りますか?」
川底を掘り始めたヨハンがルイリにそう尋ねると同じく川底を掘っているルイリは、
「そうねえ、とりあえず水汲みに使う桶が全部沈められるぐらいには掘りたいかな」
と、自身の希望を伝えると同時に自身の希望通りの深さに少しでも早く到達される為にヨハンと共にどんどん掘っていったのである。
こうして川底を掘り続けた二人は約一時間後にルイリが希望した深さに到達したかどうかを確かめる為に、一度厨房に戻って桶を持ってくると早速深くなった小川で水を汲んでみたのである。
「…良さそうですね」
「ええ、この深さなら水汲みも簡単に出来るでしょう」
どれだけ深くなったかを確かめる為の水汲みで合格点を出したルイリとヨハンは、
「さてヨハンさん、このまま作業を続けますか?それともこの辺りで昼食にしますか?」
「…昼食でお願いします…」
「ふふっ、わかりました」
と、会話してそこで一度作業を止めて昼食にする事になったのである。
そしてルイリとヨハンが草刈り、川底掘りを行っていたのと同じ頃、フランクは朝食後の予定通りに馬用厩舎の掃除を行っていた。
「ほう、これは中々に広くて立派な厩舎ですね。それに馬の飼育に必要な道具は一式揃っていますし。…まあほとんどがぼろぼろで掃除と修理が必須なんですが…」
厩舎内に入って中の様子を見て、長い間放置されていたであろう飼育道具を見て、そのような感想を口にしたフランクは早速馬用厩舎の掃除に取り掛かったのである。
だが厩舎の掃除を開始してから三十分が経過した辺りで、
「……むぅ、ただ見るのと実際に掃除するのでは大違いですねぇ…。触っただけで壊れるほどぼろぼろになっている箇所が複数あって、これは…。…仕方ありませんね、方針変更。とりあえず使える箇所のパーツを一旦全部集めてヴィクトリアが使う馬房だけを直して他はそのままにして、その後厩舎全体の掃除、という順番で作業をしましょう」
と、長々と話してそれからの作業方針を変更したのであった。
そうしてヴィクトリア用の馬房を直して同時に掃除も終わらせたフランクはすぐにヴィクトリアを連れてきて、
「ほら、これからここがお前の部屋だぞ?」
と、言ってヴィクトリアを馬房の中に入れたのである。
そうして馬房に入ったヴィクトリアもこの馬房が気に入ったようで馬房に入ってしばらくすると基本的におとなしくしながらフランクが掃除する様子をのんびり眺めるようになったのだった。
こうしてヴィクトリアを馬房に入れて一安心したフランクはそのまま厩舎全体の掃除を続け、掃除を終えて昼食にしようと厨房に向かったところでルイリ、ヨハンの二人と合流したのであった。
「あ、ルイリさん、ヨハンさん」
「ああ、フランクさん。フランクさんも昼食ですか?」
「はい。ルイリさんとヨハンさんもですか?」
「ああ、ついさっき作業が一段落してな」
「そうでしたか。こっちもとりあえず一段落しましたよ」
「そっか、それじゃあ一緒に食べる?」
「はい、ご一緒させていただきます」
「了解」
こうしてルイリ、ヨハン、フランクの三人はそのまま三人で昼食を食べたのであった。




