第十六話
「「ルイリさん、どこに置けば良いとかありますか?」」
「いえ、今日はとりあえずもう全部運び込みましょう」
「「わかりました!」」
荷物の運び込みを開始し、ヨハンとフランクの二人がルイリの指示に従って荷物の運び込みを始めたのであった。
「よいしょ、よいしょ…」
「ほっほっほっ…」
「えっほ、えっほ…」
それぞれがそれぞれに異なる声を上げながら次から次に荷物を厨房に運び込み続け、作業開始から一時間程で全ての食料の運び込みを終わらせ、続けて500万エラの現金の運び込み作業を開始したのである。
「…こんなに大量の現金を運ぶとか初めての経験ですね…」
「私も初めてだよ。おかげで手が震える…」
「おーい、早く持ってってー。後ろがつかえてるんだからー」
ヨハンとフランクが未体験の現金輸送に動揺する中、一人だけ普通に作業しているルイリが二人に容赦のない注文を出した。
その注文にフランクが、
「ええ…ルイリさんはこの現金を見てもなんとも思わないんですか…?」
と、言ってルイリに尋ねたのであるがルイリは、
「この程度で動揺してたら戦争なんか出来んわ」
と、一言で片付けてしまったのであった。
その言葉にヨハンが、
「いや、戦争経験者でもそれとこれとは違う気がしますが?」
と、落ち着いてツッコミを入れたのである。
これにルイリは、
「え?そう?ヨハンさんも?」
と、ヨハンに尋ねたのである。
それにヨハンが、
「さっき手が震えるって言ったばっかりですよ…」
と、ルイリに言い返し、続けてフランクが、
「やっぱりルイリさんがおかしいだけなのでは…?」
と、今度はフランクがルイリに容赦の無い一言を浴びせたのであった。
これにルイリは、
「あー、ひどーい!じゃあもういい、ここから私語禁止!全員黙って作業する事!良いわね!?」
と、話してこれからの現金輸送作業中は話をするなと指示したのである。
これにヨハンとフランクは、
「「しまった、やりすぎた」」
と、思ったのであったが時すでに遅しであった為、その後は無言での作業となり、ペースが上がったのか下がったのかは不明であるが現金輸送の作業は50分程度で終わったのであった。
そうしてヨハンとフランクの二人にとっては昼食以来の、ルイリにとっては丸一日以上ぶりの食事の時間が始まったのである。
「あ、この干し芋美味しい」
「こっちのソーセージもいけますよ」
「ああ、これはいいワインだ…」
それぞれが自分の好みの品を手に取っては胃袋に納めていき、また次の品を手に取っては、
「わ、こっちのベーコンも最高」
「おお、この塩漬けの魚、名前はわからないんですけどこれも絶品ですな」
「お、このチーズはワインに良く合いますね」
と、次々に品評していったのである。
そんな中ルイリが、
「あ、そうだ」
と、言って立ち上がると厨房から外に続く扉に歩いていくと扉を開けて外に出ていき、
「よーしよし、ごめんねヴィクトリア、ほったらかしにしてて。さぁ、中に入ろうね?」
と、言いながらヴィクトリアを連れて厨房に戻ってきたのであった。
「え?ヴィクトリアもここに入れておくんですか?」
ルイリの行動に驚いたフランクがルイリにそう尋ね、それにルイリが、
「だって厩舎の掃除が出来てないんだもの。それなら今日一日ぐらいはここに入れておいても大丈夫でしょ?」
と、フランクに聞き返したのである。
そしてルイリのその言葉にヨハンもフランクに、
「…大丈夫なものなのか?」
と、尋ね、それにフランクが、
「…まあ…一日ぐらいなら大丈夫だと思います…。掃除が大変でしょうけど…」
と、答えた為にルイリが、
「だって。良かったね、ヴィクトリア」
と、言ってヴィクトリアの鼻先にキスをして首筋を撫でると再び外に出ていき、少し時間の後戻ってきたルイリは大量の草を抱えていてその草を厨房の一角にまとめると、
「はい、もう一杯食べたかもしれないけどご飯だよ?」
と、言ってヴィクトリアにも食事を与えたのであった。
こうして三人と一頭はそれぞれが思い思いに飲み食いを行い、誰がお開きと言うでも無いままに終わりとなって全員がこの場で眠りについたのである。