第95話 最期は訪れる②
高速で振るわれる長剣が俺を切り刻む。
再生する端からこちらの魔術行使を阻害するように追撃を重ねてきた。
俺は刎ね飛ばされた生首を掴んで繋げつつ、ベイドに皮肉を投げる。
「つまり英雄を王にした世界に統一するわけか。今の国々は大反対だろうな」
「関係ない。在るべき形へと正すだけだ」
ベイドは意地になって攻撃を繰り出してくる。
もはや目視は叶わない速度だ。
斬られた後で気付く有様で、並の英雄ならばとっくに殺されているだろう。
俺が生存に秀でた魔術師だからこそ、なんとか耐えられている状態であった。
攻撃の合間を読み、俺は無刃剣を操作する。
刃が枝分かれして拡散した。
回避困難な範囲攻撃に対し、ベイドは防御を選ぶ。
青炎の盾も駆使して的確に弾いていく。
結局、何本かの刃が胴体を掠めたが、直撃には至らなかった。
ベイドは枝分かれした刃を粉砕して突進し、俺の心臓に長剣を突き立てる。
抉られる痛みを覚えながら、俺は平然と自論を述べる。
「英雄が活躍する世の中には賛成だが、それ以外はよく分からないな。お前は理想主義すぎる」
胸から生える長剣を伝うようにしてベイドの魔力を吸収する。
近距離ならば俺の領域だ。
ベイドの戦い方は魔力に依存気味である。
完全な魔術師よりもその傾向は薄いものの、魔力無しで戦うのは厳しいのも事実だった。
急速な脱力感に顔を顰めたベイドは、対抗して俺の魔力を取り込もうとする。
しかし、練度に圧倒的な差があった。
拮抗を経ることなく、引きずられるようにしてベイドの魔力が俺の中に流れてくる。
分が悪いと踏んだベイドは、すぐさま長剣を引き抜いて退避した。
「くっ!?」
「魔力操作で俺に勝てると思ったのか? さすがに考えが甘すぎる」
俺は胸の傷を再生させながら呟く。
ベイドの肌が乾燥して亀裂が走っている。
陶器のような質感は、魔力の枯渇が招いた症状だった。
果敢に戦っているベイドだが、本来なら満身創痍で動けないはずなのだ。
様々な技能による工夫と執念深さで延命しているものの、いつ死んでもおかしくないような状態となっている。
俺は全身の魔力を巡らせて活性化を促した。
白兵戦の優劣を少しでも埋めるための術を施していく。
「こっちは一つの魔術系統に五十年以上を費やしているんだ。お前みたいに多才ではないが、その一点だけは絶対に負けない」
俺は無刃剣を持ち直す。
ベイドは規則的に呼吸により乱れた魔力を整えつつ、精神面も落ち着かせようとしていた。
それでも憎しみの染み付いた眼光は、些かの鎮まりも見せていない。
「まだ全力じゃないだろ? 早く仕掛けてこい」
俺が手招きすると、ベイドが吼えて跳びかかってきた。




