第94話 最期は訪れる①
俺はベイドと対峙する。
特に気負わずに歩を進めて話しかけた。
「凄まじいな。まさかここまで強くなっているとは」
「お前を超えるための執念だ」
「はは、さすが愛弟子というべきか」
軽く笑ってみるも、ベイドが表情を変えることはなかった。
充満した殺気は俺の一挙一動を正確に観察している。
僅かな魔力の流れも見逃さないつもりらしい。
ベイドは両手を広げると、死体を指し示しながら発言した。
「お前が解き放った英雄はすべて俺が殺した。この都市にいる残りもすぐに殺す。傭兵団とやらの野望は潰えたのだ。だから潔く死ね」
「断る。まだ死を迎えるべき過去の英雄がいる」
俺はまた一歩踏み出す。
そして真っ直ぐに指を差して告げた。
「お前だよ、ベイド。この先に望む道はない。死に場所を受け入れろ」
「……ふざけるな」
ベイドの顔に怒気が過ぎる。
渦巻く憎悪が魔力と融和し、彼の力を飛躍的に高めていく。
「死に場所だと? それはこちらの台詞だ。お前は役目を終えた。これ以上、世界を乱すな。目的を達したのなら大人しく消えるのが筋というものだ」
ベイドが剣を構えた。
ありふれた型だが故に隙がない。
幾重もの死線を乗り越えた剣術は、絶対的な力へと昇華されている。
満身創痍を窺わせない風格を漂わせている。
ベイドは静かに宣言する。
「――俺は死なない。過去の英雄を殺し尽くしても進み続ける」
最短距離刺突が迫る。
俺は無刃剣で割り込ませて防ごうとする。
互いの武器が衝突し、魔力で形成されたこちらの刃が粉砕された。
微かな拮抗もなかった。
地力があまりにも違いすぎるのだ。
容赦なき刺突が俺の胸を捉えて潜り込んでくる。
(これだけの連戦でまだ衰えないのか……ッ)
呪術に蝕まれた長剣が背中まで貫通した。
後ろに飛び退きながら錬金術を行使し、肉体再生を始める。
全身に拡散された呪術を制御することで血と共に吐き出した。
ベイドは間を置かずに斬りかかってくる。
俺は多重結界で遮り、足裏を経由して地形操作を発動した。
槍状となった地面がベイドを狙うが、跳んで回避される。
ベイドは結界を蹴り砕き、的確な動きで追撃を試みる。
「俺は今の世の中を否定する。英雄を潰す均一化など愚の骨頂だ」
「へえ、奇遇だな。同じ考えだ」
「お前とは違うッ!」
斬撃が大地に亀裂を走らせる。
俺は肉体を縦に割られながら魔力を吸収した。
断面を接合しつつ、血を払って立ち上がる。
ベイドは長剣を下げて怒りを露わにしていた。
「戦争狂いと一緒にするな。英雄とは真に選ばれし統治者……国を背負い育まねばならない。俺は現代を壊して新たな秩序を創り出す」




