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錬金術師の傭兵団 ~古強者は死に場所を求めて世界戦争に再臨する~  作者: 結城 からく


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第88話 英雄の墓場①

 消えたブラハを見届けた俺は呟く。


「やられたか……」


 まさか"砲王"がやられるとは。

 前線まで出過ぎたのもあるが、ベイドが予想を遥かに超える成長を遂げたのが大きい。


 ブラハの強みは圧倒的な火力だ。

 それをベイドは正面から打ち破ってみせた。

 この結果には文句の付けようもなく、見事な勝利であった。


 次の展開を読んだ俺は念話を使ってシュアに指示を送る。


「防衛を固めろ。敵を侵入させるな」


「命令遂行は、不可能……王族には逆らえない」


 返答を聞いた俺は苦い顔になる。

 ベイドは青炎国の王族の隠し子だ。

 対するシュアは、青炎国の首都に配備された守護ゴーレムである。

 その仕様上、王族は攻撃できないのだ。

 ブラハに仕込まれた防衛能力も万全に発揮できず、迎撃行為は実質的に麻痺している。


「分かった。せめて破壊されないように退避しろ。向こうはお前を容赦なく攻撃してくるぞ」


「助言を承諾……」


 そこで念話は切れる。

 今回は相手が悪すぎるので仕方なかった。

 シュアに頼れないのは残念だが、何か支障があるわけではない。

 防衛に関しては俺の地形操作でも可能である。

 焦ることではない。


 そもそも傭兵団は少数精鋭だ。

 拠点内には守るべき民もおらず、戦術次第では守りを捨ててもいい。

 ベイドはかつてない強敵である。

 多少の損害は度外視しなければすべてを失うことになる。


 ベイドは空から地上に降り立った。

 まだ俺達とは離れた距離だ。

 一気に攻めてこないのはこちらを警戒しているからだろう。

 俺が搦め手を得意とするのを知っているベイドは、慎重になるべきだと考えたらしい。


 実に賢明な判断である。

 勢い任せに突っ込んでくれれば楽だったのだがそうもいかないらしい。


 隣で微笑するミザリアは、感心した様子でベイドを観察する。


「あのブラハを殺るなんて大したものだねえ」


「笑っている場合か」


「もちろん。あたしには関係ない話だよ」


 ミザリアは平然と頷くと、冷め切った目を俺に向けた。

 瞳が訴えるのは軽薄な現実だった。


「ここであんたが負けるのが最も平穏なのさ。分かってるんだろう?」


「…………」


「まあ、絶対に諦めないんだろうがね。ちゃんと手伝うから死ぬ気で頑張りな」


 そう言ってミザリアの姿が薄れて消える。

 一時的に幻影を解除したようだ。

 魂の欠片は俺の中にあるので、必要に応じてまた現れると思われる。


 やり取りを聞いていたユエルは少し気まずそうに進言する。


「私が排除いたしましょうか?」


「まだいい。死に時を求める者に譲るべきだ」


 俺は手のひらを前にかざして、亜空間より結晶を引き出した。

 内部には封印された英雄が眠っている。


 術に綻びを入れてから、俺は結晶を地上へと落とす。

 結晶は大地に激突した。

 時間差で中の人間が起き上がろうとする。


 俺は高鳴る鼓動を聞きながらベイドに宣告した。


「――これは挑戦だ。俺のもとまで辿り着いてみろ」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「あのブラハを殺るなんて大したものだねえ」 死霊術に長けたミザリアがこう言うのだから、本当にブラハは戦死したのだろう。 ……それにしても、あっけない。
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