第87話 空を落とす⑦
ゴーレム軍はあえなく撃墜されていく。
熱線による反撃もあまり効果がない。
ベイドは機動力で潜り抜けるか、青炎を纏わせた剣で一刀両断してみせた。
青炎は攻防一体の術となり、ベイドの力の基軸となっている。
その出力は高性能なゴーレムを凌駕し、蹂躙という結果を生み出す。
無数の魂が報復の機会を掴み取った瞬間であった。
間もなくベイドはゴーレム軍を突破する。
彼は片手を頭上に向けて青炎を放つ。
青炎は変形して広がり、空間の穴を塞ぐようにして定着した。
あれではゴーレムが出入りするのは不可能だ。
青炎の蓋を破壊する必要があり、除去には相当な時間を要するだろう。
増援を呼び出せなくなったブラハは端末を捨てる。
これ以上、遠隔操作で戦うのは厳しいと判断したようだ。
ブラハの着る防護服の背中から、格納されていた数本のゴーレムの腕が飛び出す。
腕はそれぞれ先端が武器となっており、剣、槍、斧、弓や小型の砲といったものがベイドを狙っている。
防護服の表面には何重もの防御魔術が構築されていた。
衝撃反射や魔力吸収の効果も含まれており、完全に白兵戦用の装備なのが分かる。
ブラハは得意とする戦法からベイドの領分へと切り替えたようだ。
獰猛な笑みは、殺し合いの緊迫感を物語っている。
彼は窮地すらも楽しんでいた。
跳び上がったベイドは、ブラハと同じ高度に着地する。
二人は無言で睨み合う。
高まる魔力が大気に影響し、曇り空から雨が降り始めた。
ほどなくして雷が迸って轟音が響き渡る。
ひときわ大きな雷鳴が炸裂した瞬間、ブラハとベイドが動き出した。
一直線に突き進んで衝突する。
両者を中心に衝撃波が発生して空気を震わせる。
俺は目を凝らして激突の結果を確かめる。
――ブラハが胸部を貫かれていた。
堅牢な防御魔術はただの刺突に穿たれている。
不備があったのではない。
ベイドの一撃が強すぎたのだ。
防具服の背面から伸びた腕は、いずれも青炎で融けている。
攻撃を仕掛ける寸前、ベイドに焼かれて無力化されたのだろう。
紙一重でベイドの動きが速かったのだ。
やはり近接戦闘における練度の差が明白となった。
ベイドはゆっくりと剣を引き抜く。
吐血するブラハは真っ逆さまに落下する。
彼は自らの砲撃によって作られた大地の穴に消えていった。




