第80話 空を落とす②
騎士国は頭上を見て騒然とした。
さすがの彼らも驚愕している。
降り注ぐゴーレムを前に平常心を保てるほどではなかったようだ。
ゴーレムは木材と金属が主材料で、人型だけでなく馬車型や動物を模した形状も混ざっている。
多種多様な形をしたそれらの兵器が、落下しながら熱線を放つ。
騎士軍は上部の結界で受け止めた。
しかし、部分的に破損しており、完璧に防げたわけではない。
ゴーレムが次々と容赦なく熱線を撃つため、胴体を焼き切られて悲鳴を上げる者もいた。
それでも騎士軍が努めて冷静に防御魔術を維持している。
一方的な攻撃を済ませたゴーレムは、結界の上に続々と着地した。
圧倒的な重量がかかり、結界が軋む。
その下にいる騎士達はぎょっとして慌てて退避し始めた。
しかし結界の外に逃れた途端、熱線の餌食となる。
空中では飛行型のゴーレムが巡回し、たまに爆撃による追撃を行っていた。
逃げ場などなく、騎士軍は結界に守られながら耐えるしかなかった。
彼らは門の破壊を続けるも、明らかに作業速度が鈍化している。
既に侵入どころではないのだ。
俺は騎士軍の損害を観察しながら頷く。
(悪くないな)
空間を裂いてこじ開けた穴は、遠く離れた樹海と繋がっている。
そこからゴーレムが溢れてきているのだ。
乱発される熱線と爆撃は尋常でない威力を秘めている。
軌道がずれると拠点内にも被害が出そうだが、紙一重で無傷だった。
上手く調整されているらしい。
騎士軍はなんとか反撃を試みている。
結界の上に乗るゴーレムに損傷を与えようとするも、あまり効果的なことはできていないようだ。
状況的に存分の力を発揮できないのもあるが、とにかくゴーレムの装甲が頑丈なのだ。
生半可な攻撃では傷付かない設計で、多重の防御魔術が展開されている。
騎士軍の張る結界よりも遥かに強固だろう。
俺はゴーレムの装甲を凝視してその構造を解析する。
現代では実現不可能な技術が用いられていた。
向こう百年は困難に違いない。
安定した兵器利用など夢のまた夢だった。
もっとも、それを成し遂げられる例外的な人物を知っている。
豪快な笑い声が間もなく空から聞こえてきた。
「がっはっはっは! こいつはまた面白い戦場だのう。血が滾ってくるわい。感謝するぞォ!」
飛行機能を持つ防護服を着て滑空するのは"砲王"ブラハだ。
相変わらず大笑いを響かせている。
彼は手元の端末でゴーレム達を操作し、騎士軍の動きを的確に妨害していた。
ブラハには事前に話を付けていた。
騎士国が侵略してきた際には呼び出す旨を伝えており、その承諾も貰っている。
絶好の戦いができることを喜んだブラハは入念に準備を進めていた。
だから不意の参戦にも動じず、破滅的な奇襲を敢行できたのであった。




