第79話 空を落とす①
老騎士となったベイドからはかつての面影が窺える。
その眼差しなどは若者だった頃と変わらない。
彼がどのような人生を歩んで来たのか具体的には知らないが、王としての風格を湛えている。
騎士国の頂点に立つ者として、堂々と俺の前に君臨しているのだった。
ベイドは淡々とした口調で目的を述べる。
「私はかつての師を止めにきた。それが弟子の責務だと考えている」
「余計なお世話と言っていいか」
「黙れ、今の時代を邪魔するな。お前達は過去に取り残された英雄だ。どこにも居場所はない」
ベイドの言葉は辛辣だった。
隣にいるミザリアが不敵に笑う。
「奇遇だね。あたしは団長さんと同じ意見だよ」
「そうか」
彼女と再会して戦った時、似たようなことを言われた気がする。
俺はその主張を否定するつもりはない。
死に損なった俺達に居場所はなく、平和な時勢に耐えられなかった。
だからこうして居場所を作ろうとしている。
拒まれながらも懸命にこじ開けているのである。
真っ当な指摘を受けても動揺はない。
それくらいは自覚した上で計画を進めているのだ。
俺はベイドを見下ろして告げる。
「何も語ることはない。止めたくば実力行使でやってみろ」
「……やはり聞く耳を持たないか」
「当然だ。覚悟を持ってこの場に立っている。簡単に説き伏せられると思うな」
俺は全身を魔力を漲らせていく。
老いた肉体が青年期まで逆行し始めた。
拳を握り、胸を張って語る。
「互いに軽くない責任を負う身だ。譲り切れない部分があるのは仕方あるまい。その上で我を通したいのならば力を示すしかない。お前には何度となく教えたはずだ」
秩序は暴力が定める。
言葉だけの訴えなど意味がない。
戦場を知る者なら理解していることだ。
故にベイドは何も言い返せず、これ以上の問答が無駄であると悟った。
彼は静かに命令を下す。
「――突撃だ。狂った遺物を叩き潰せ」
微動だにしなかった騎士達が一斉に動き出した。
魔導器の武器を持つ彼らは門の破壊に取りかかる。
同時に全方位への防御魔術を展開し、こちらの攻撃を遮ることができるようにしている。
都市内へと侵入し、一気に叩くつもりなのだろう。
単純だが堅実な手法だ。
魔導器の質も高い。
あえて機能を絞り込むことで、性能の底上げを図っているようである。
その光景を眺めながら俺は呟く。
「狂った遺物、か」
実に的確な表現である。
それが俺達への評価なのだろう。
どこまでいっても遺物に過ぎないのだ。
ならば遺物らしく振る舞おうではないか。
そのための仕込みは済んでいる。
俺は上空に空間の裂け目を作り、強引に押し開いて固定する。
すると、穴から大量のゴーレムが降ってきた。




