表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金術師の傭兵団 ~古強者は死に場所を求めて世界戦争に再臨する~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/106

第77話 秩序を掲げる⑥

 俺は浅い呼吸を繰り返す。

 何度か瞬きした後、感情を込めずに告げた。


「早急に立ち去れ。さもなくば命の保証はできない」


 騎士国団長のベイドから殺意が沸く。

 今にも襲いかかってきそうな剣幕だが、その場から動こうとしない。

 他の騎士も石像のように無反応であった。

 感情的になって仕掛けてくるほど未熟ではないようだ。

 不気味な沈黙こそが彼らの練度を物語っている。


 ユエルは心配そうに俺の顔を見た。


「アッシュ様……」


「大丈夫だ」


 俺はユエルに応じながらも、視線はベイドに固定したまま外さない。

 彼が常軌を逸する実力者であることは知っている。

 ふとした油断が命取りになりかねなかった。


 ベイドは小さく嘆息した。

 彼は俺を見上げた状態で発言する。


「お前はいつもそうだ。理性的に振る舞いながらも、その獰猛な本性を隠し切れない。他人言葉に耳を貸さず、己の欲求のままに殺戮を遂げる。五十年前から何も変わっていないな」


「愚痴を聞いてほしいのなら他をあたれ」


「断る。お前は自らの罪と向き合わねばならない」


 強固な意志を宿す双眸が俺を射抜く。

 何十年という月日を経ても、その風格は微塵も損なわれていない。

 むしろ研鑽されたことで深みを増している。


 俺はベイドを凝視する。

 刹那、かつての姿が重なって見えた。

 遠い記憶のぶり返しを認識して、俺は運命の巡り合わせを想う。


(……いずれ再会するだろうとは思っていたが)


 ベイドは青炎国の出身の人間である。

 王族の隠し子で、最初に出会ったのは五十年以上も前だった。

 孤児の彼が餓死寸前だった時、気まぐれで拾ったのがきっかけであった。


 腹を満たしたベイドは言った。

 力が欲しい、と。

 貪欲な眼差しは、この世のあらゆる不条理を呪っていた。

 濃密な憎悪と執念は、子供とは思えないほどに強烈だった。

 不遇な人生で育まれた劣等感は、ベイドの根底と築く踏み台となっていた。


 俺はベイドを鍛え始めた。

 当時の大戦を利用して、彼の求める力を授けていった。

 ベイドの行く末に興味が湧いて、その後押しをしてみたいと思ったのである。

 優しさや同情ではなく純粋な好奇心だった。


 俺はベイドの親ではなかった。

 そして良き師でもなかった。

 命を擦り潰すような戦場にベイドを引きずり込み、無謀な試みを幾度となく丸投げした。

 生還の保証など無く、死ねばそれまでだという認識で鍛え続けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ