第75話 秩序を掲げる④
帝国軍の侵攻失敗から半年が経過した。
世界規模で見ると、戦争は大きく鈍化している。
どこの国も消耗しており、戦いを継続できなくなっているのだ。
単発的な小競り合いはあれど、なるべく書面上での停戦や講和で済ませようとする風潮が蔓延しつつある。
半端な馴れ合いと臆病な心構えが、状況をつまらないものにしていた。
もっとも、終戦の兆しはない。
どこの国も血眼になって利益を求めているからだ。
これまでの損耗を取り返さなければ、戦争を止められるはずもない。
正確に言うなら、自分達が十分な利益を得られた段階で終わらせて勝ち逃げしたいのである。
停戦や講和もその布石に過ぎなかった。
友好国と手を組み、隙あらば敵対国を叩こうとしている。
同じようなことを全世界の国が企んでいるのだから、終戦など決してありえない。
退屈な展開は一時的だ。
これは嵐の前の静けさと言える。
表面上は大人しいものの、水面下では醜い争いが熾烈に繰り広げられていた。
俺個人としてはさっさと戦争を盛り上げていきたい。
しかし、物事には順序というものがある。
気持ちばかり急いては何も始まらない。
そう自分に言い聞かせることでなんとか堪えていた。
傭兵団もたまに介入しているが、帝国戦ほど派手な動きは取っていない。
加減を誤ると国そのものが滅びかねないからだ。
さすがにそこまでは望んでいない。
戦局を意図しない形で歪める恐れもあり、なるべく影響の出にくい戦場を選んでいる。
そんな折、奇妙な情報が俺の耳に入ってきた。
なんでも各地の戦場で、封印から解放した英雄が次々と殺されているという。
いずれも騎士国の人間が成し遂げているそうだ。
死に場所を探し求める英雄が討たれるのは別に悪くない。
むしろ強敵とぶつかって力が及ばずに命を落とすのは理想とも言えよう。
だが、そのような出来事が連続すると不審に思わざるを得ない。
騎士国は英雄殺しの力を身に付けたのか。
それは果たしてどれほどのものなのか。
戦闘に関する詳しい情報がなく、余計に興味を抱く。
俺は少なからず期待を覚えていた。
死ねずに戦い続ける旧時代の英雄を超える実力者がいるのだ。
気になってしまうのは仕方のないことだろう。
この目で確認しなければならない。
そう考えていた頃、騎士国の旅団が拠点へとやってきた。




