第62話 まだ見えぬ高み③
刃影国の惨敗は、各国に様々な議論をもたらした。
術の属性に偏りはあれど、最新の魔導器が通用しないのは衝撃的な出来事だったらしい。
少数精鋭で他国の首都に乗り込んで暴れるなど、数を絶対的な正義とする現代の戦争においてありえないのだ。
各国には魔導器に依存しない実力者も存在するが、五十年前の大戦時の英雄に比べれば劣るのが実情である。
俺達と同じことをできるかと問われれば、大半が首を振るだろう。
理由は明白で、魔術師が激減しているのだ。
才能を押さえ付ける風潮に加えて、魔導器の発展が従来の鍛練を否定している。
手軽に力を手にすることができるようになったことで、ただでさえ少なかった魔術師が皆無となったのであった。
ましてや英雄と呼べるほどの存在ともなれば、世界中を見渡しても二十人といないかもしれない。
これは努力の弊害と言えよう。
とにかく現代戦力は、遺物である旧英雄の術者に弱いのだ。
さらに厄介なのが"砲王"ブラハである。
一部の国は彼の対策も備えておかねばならない。
樹海と隣接する領土は常に脅威に晒されており、いきなり侵略されたとしてもおかしくなかった。
ブラハは魔術師ではないが、ある意味では魔術師よりも大きな災厄となる男だ。
現在も無尽蔵にゴーレムを筆頭とした兵器を量産し、己の発想と開発欲に従って過剰な軍隊を整えている。
ブラハが本腰を入れれば、一夜にして国が滅びかねない。
彼に正面から挑める者はごく少数だ。
俺が封印している英雄の中でも限られてくる。
一部の勢力からは魔王と呼ばれているのも納得の話であった。
そういった状況なので、各国の上層部は非常に頭を悩ませている。
俺達の対処に集中したい一方で、敵対国に弱みを見せたくない。
どちらに意識を傾けても問題が噴出する始末だ。
同情できる立場ではないものの、彼らの気苦労には慰めを送りたくなる。
もっとも、誰がどのような対応を取ろうとも構わない。
俺達は必要な戦場に出向くだけだ。
傭兵団の目的は不動であり、それはすべて戦争に集約されている。
封印解除を待つ英雄はまだ何人も控えている。
少しでも早く彼らを死なせる責務がある。
そのためにも現代の国々には頑張ってもらわねば。
現段階で悲鳴を上げる程度では困るのだ。
傭兵団の脅威となる一手を期待している。




