表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金術師の傭兵団 ~古強者は死に場所を求めて世界戦争に再臨する~  作者: 結城 からく


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/106

第59話 殻を破るとき⑨

 ミハエルの胸から生えた大量の呪槍は、意思を持ったかのように突き伸びる。


 一本目は男の剣に切断された。

 二本目は弾かれて軌道をずらされる。

 三本目は素早い動きで回避された。

 四本目と五本目と六本目は飛び退きながら防御された。

 七本目から二十本目が迫ると、男は全力で逃げ回る。


 そこから先はただの蹂躙だった。

 無制限に伸びる触手の槍は男を追尾し、どこまでも容赦なく襲いかかっていく。


 気だるげだった男の顔にも次第に焦りが生まれ始めた。

 優勢だった戦いが亀裂が走り、命の危機に晒されている。

 暴走した呪槍は際限なく強くなっており、じきに対処し切れなくなると理解したのだ。


 男は身体強化で加速し、床を蹴って跳んで壁を駆ける。

 立体的な動きで呪槍の濁流を躱しながら進み、無防備に佇むミハエルに仕掛けた。


(妥当な判断だな。この状況ではそれしかない)


 無限に枝分かれする呪槍で捌き続けるのは困難だ。

 発生源のミハエルを叩くのは至極当然だろう。


 男の斬撃は呪槍の間を縫うように抜けて、ミハエルの首と肩を切り裂く。

 ところがミハエルは怯まない。

 ゆっくりと首を回して男を注視する。

 その視線に従って触手状の呪槍が捩れて飛び交う。


 男はどうにか防御しながら再び距離を取る。

 その全身には細かな傷ができていた。

 至近距離での猛撃の前では、さすがに無傷ではいられなかったのだ。

 傷はどす黒く変色し、流れ出す血液は泡立つ。


 男は息切れしていた。

 肉体的な消耗に加えて、精神的な負担は計り知れない。


 そこに呪槍の連打が降り注ぐ。

 床や柱を木端微塵に破壊しながら男を狙う。

 勢いは増す一方だ。


 この異常な状態が馴染んできたのか、本体のミハエルも動き出していた。

 苦痛に顔を歪めつつ、男の隙を窺っている。


 俺は小声で呟く。


「殻を破ったか……」


 呪槍の暴走は、極限状態での偶発的な現象である。

 ミハエルの高すぎる適性が招いたものだ。

 しかし、彼はそれを早くも支配しつつあった。

 半自動で暴れ狂う呪槍を陽動にして、さらなる一撃を虎視眈々と企んでいる。


 やがて男の動きが止まった。

 片膝と太腿を呪槍が貫いている。

 穂先が床に刺さり、男の脚を完全に固定していた。


 男の背後に気配が出現する。

 息を吐きながら構えを取るのはミハエルだった。


 男は振り向きざまに剣を振るうも、それより早く呪槍が男の胸部を抉る。

 木の根のように分裂して体外へと拡散し、臓器と血飛沫を雨のように降らせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ