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錬金術師の傭兵団 ~古強者は死に場所を求めて世界戦争に再臨する~  作者: 結城 からく


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第58話 殻を破るとき⑧

 総合的な優劣で言えば、二刀流の男に軍配が上がるだろう。

 魔導器の有無もあるだろうが、それ以上に経験の差が大きい。

 現代でここまで卓越した実力者がいるとは驚きである。

 彼らの所属する騎士国の特質と言えよう。


(このままだとミハエルは敗北する。正念場だな)


 戦いを分析していると、国王が謁見の間を出ようとしていることに気付く。

 俺は室内を結界で囲って外から隔離した。

 これで誰も自由に出入りできない。

 何らかの抜け道や転移魔術を使おうと無意味だ。


 俺は国王に告げる。


「おい。動くなよ。まだ戦いは終わっていない」


「くっ……」


「護衛に丸投げして勝ち誇っておきながら、形勢が悪くなれば見捨てるのか。お前も相応の実力者なら情けない真似をするな」


 俺の言葉に国王が怒気を滲ませる。

 しかし、反論してくることはなかった。

 卑怯な行為をしている自覚はあるのだろう。


 結界の破壊が不可能だと悟ったらしく、国王は静かに玉座へと戻る。

 どこか不満気だがこちらの言い分に従うようだ。

 俺は国王に宣言する。


「安心しろ。俺達はこれ以上の干渉を行わない。片を付けるのはミハエルだ」


 この間にもミハエルと二刀流の男の対決は過熱していく。

 破壊の嵐が謁見の間を破砕し、窓ガラスを粉々に消し飛ばした。

 乱れる魔力は暴風となって俺達の肌を撫でる。

 軽率に近付くことを躊躇う惨状であった。


 両者の間から何かが飛ぶ。

 床を転がったのは人間の左腕だった。

 どうやらそれはミハエルのものらしく、彼は隻腕で呪槍を操っている。

 一瞬の隙を突かれて切断されたようだ。


(限界だな。ここからどうする?)


 俺はミハエルの表情に注目する。

 片腕を失い、二刀流による連撃に見舞われながらも彼の目はまだ死んでいなかった。

 窮地の中で何かを掴もうとしている。

 禍々しい魔力が脈動し、刻一刻と活発になっていく。

 生死の狭間を見極めつつ、己の天井を突き破るために足掻いていた。


 今のままでは無理だ。

 しかし、その先へ進めれば分からない。

 未知の領域へと至ること。

 それがミハエルに許された逆転の一手であった。


 二刀流の男は手を緩めずに追い詰めていく。

 何か嫌な予感でもするのか、表情に僅かな陰りが見え隠れする。

 向こうも常人から逸した傑物だ。

 死にかけのミハエルが仄めかす可能性を警戒しているのであろう。


 刹那、ミハエルが叫ぶ。

 彼の胸部が膨らみ、心臓と一体化した呪槍が皮膚を破って飛び出した。

 無数の触手となって蠢くと、先端が槍の形状になって硬化して男へと殺到する。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 相変わらず状況を思い浮かべただけで痛くなりそうな死闘……! [一言] 続きも楽しみにしています!
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